Global Career Guide
今日は、挨拶のやり方に見る文化の違いをテーマにします。
地元の友人にフランス企業が長い女性がいます。私の勤務先はほとんどがアメリカ企業だったので、2人で企業文化や国による習慣の違いを交換するのは興味深いです。
アメリカでは初めて人に会う時、握手をすることが多いです。以前NY出張が決まった時、アメリカ人の上司がやり方を教えてくれました。
「ミッキー、握手はできる? 俺をNY本社の同僚だと思って握手してみて」と言われ、私なりの握手をしたら「そういうのをdead fishって言うんだよ。もっと力を入れなさい」と言われました。
アサーティブをよしとするアメリカの事、「フニャッと力がない握手は自信の無さの現れとされる、初対面の時は特に気をつけないといけないよ」と教えてくれました。相手と喧嘩をするわけではないので力を込めすぎるのは威嚇するようでダメだ、と5回位練習してやっとOKが出ました。力加減を教えてもらえた事はありがたかったです。
少し脱線しますが、さすがアメリカ人。”By the way, this is not sexual harassment.” (セクハラじゃないよ)と添えられたのには笑ってしまいました。こんなに一生懸命教えてくれているのに、セクハラだと思うはずはありません。アメリカは訴訟の国で当時からセクハラに過敏でした。
さて、アメリカ人相手の場合は別れ際も握手のことが多いですが、親しくなった人とはハグします。このハグこそ最初の頃は気恥ずかしく、なかなかうまくできませんでした。今では習慣になり、特に親しい人とハグしないのは違和感があるほどです。ハグの良いところは握手より相手に親しさを伝えることができる点です。
これも上司から教えてもらったのですが、初対面の人にはハグしないのが無難です。相手が他人とどのくらい距離を保ちたい人なのかわからないからです。イスラム教など宗教の制約がある国では男女間で決してハグせず、周りの様子を見て同じように行動するのが鉄則です。上司自身が若くて未経験だった頃、出張でイスラム圏に赴き全く悪気なく女性にハグしてしまい、トラブルになりそうだったことがあるそうです。郷に入っては郷に従えを、身をもって経験したと教えてくれました。
フランス人の挨拶はお互いの頬をつけ合うビズ (Bisou) 。フランス人はアジア人女性が慣れていないと知っているので、アジア人にはしないから無理に真似しなくて良いそうです。
私の友人はブラジルからの帰国子女で、子供の時に現地で親からビズのやり方を礼儀として教えてもらっています。パリのオフィスでも、アジア人ではありますが彼女だけは例外扱いをされビズで挨拶が定番だとか。
フランスでビズを真似したい人は、以下がお勧めだそうです。
・まずは周囲を良く観察する
・誰かが自分にビズしてくれたら返す。自分からイニシエトしない
・慣れてきてもビズして良い相手なのかわからないときは、 “Do we do la bise?” と聞く ・親しさを示すくらいのカジュアルな感じにする
新しい他国の習慣を取り入れる時の鉄則のようでもあります。まずは周囲を良く見てその国での習慣を知り、無難そうな状況で真似してみる、わからなかったら聞くことの繰り返しで、握手・ハグ・ビズなど日本には無い習慣を身につけられると思います。
ビズに関しては時々不届きな人がいて、隙あらばキスしてやろうとするそうです。彼女は百戦錬磨、相手との距離が15センチ位になったら相手の顔の角度でわかるので、自分の顔をぐっと横向きにして回避するとか。異文化スキルにも色々あるのねと大笑いになりました。
彼女との別れ際、ハプニングが。強くハグしようとしたアメリカンの私と、当然ビズすると思ったラテン系の彼女。お互いの勢いが空振りして、彼女の顎の辺りに私の顔面が激突しかけました。習慣は怖いです。まさか別れ際に、相手の頬が出てくるとは夢にも思いませんでした。
振り返ると、最初のアメリカ人上司には色々なことを教えてもらいました。転ばぬ先の杖ではありませんが、知らずに失敗する前に様々なアドバイスをもらえたこと、本当にラッキーで感謝しています。部下たちにNY流を伝えようとしてくれた背景には、彼自身が日本での駐在員で文化の違いに戸惑うことが多かったこともあるでしょう。
「わからない」と伝えるのが苦手なのが、私を含め日本人の特徴ですが、異文化にまつわる質問はその国の人に聞いた方が、はるかに効率的で間違いがありません。次に疑問が沸いたら、上司・同僚・友人に聞いてみましょう。AIに聞くときは得た情報を誰かに正しいかどうか聞いた方が無難です。基本的な挨拶の仕方やジェスチャーの違いを理解して、上手に使い分けできるようになりたいものです。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。