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多様性の力を生かせますか?

元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。

多様性という言葉からどんなことを思い浮かべますか? 日本の企業ですとジェンダー、つまり「男性・女性」を思い浮かべる方も多いかもしれません。外資系にお勤めで外国人に囲まれて仕事をされているなら、人種の多様性を思い浮かべるかもしれません。

単一民族国家に近い国で生まれ育ち仕事をしていると、「自分と異なる」ことへの許容力が落ちてしまいがちです。例えば宗教。日本人は特定の神を信じるというよりは、全てのものに神は宿るという考え方のことが多いので、敬虔な信徒のニーズに気がつかないことが多いです。

2015年フィリピンに出張した際、ローマ法皇のマニラ訪問とタイミングが重なりました。フィリピンは90%以上がカトリック信者の国なので、ローマ法皇は絶対なる存在です。法皇の飛行機が空港を使用する前後6時間、他の飛行機は一切は離陸も着陸もできませんでした。また事前に、空港から市内、全ての信号機を止めてパレードの予行演習をしたのには、本当に驚きました。法皇の身の安全が何ものにも優先する文化を、目の前で目撃したからです。

ただ私には、29才の時に正統派ユダヤ人が出張で来日した際、彼らの食べ物のことで苦労したカルチャーショック体験があったので「なるほど、そうなのかぁ」くらいで済みました。

宗教の多様性を体験したことがないと、例えば次のような状況で正しい判断を下すことが難しくなります。

「あなたは日本で行われる国際会議をコーディネートすることになりました。日本人以外の参加者は、アメリカ、イスラエル、韓国、中国、台湾、香港、シンガポール、マレーシアから来日します。日程の候補は、2017年2月2日(木)と2月3日(金)が出されていますが、これでよいでしょうか?」

答えは、この日程は変更する必要があるです。

まず、2017年2月2日は、来年の春節(Chinese New Year)の最後の日にあたります。日本に置き換えれば、1月3日にアメリカ出張に来てくれと言われているようなものです。まだだいぶ先で他の日にすることが可能な状況で、わざわざ選ぶべき日にちではありません。

また、2月3日の金曜日ですが、金曜日はイスラム教徒にとって集団礼拝が望まれる大切な日であることを覚えておきましょう。イスラエルから来日する参加者が正統派ユダヤ教徒だとすると、金曜日の日没から土曜日の日没は彼らにとっての安息日です。帰国するにあたり、飛行機に乗ったら日付変更線を越えてこの時間帯にぶつかるようであれば、その飛行機には乗れないことになります。

つまり、金曜日をわざわざ選ぶ必要はないということです。

このグループにとって2017年2月2日から3日の国際会議は、不都合が多すぎ、日程は変更したほうがよいという結論になります。遠くから時差を抱えて日本入りする参加者や全員の移動時間を考えても、週末に移動を済ませてもらい、月曜日と火曜日の組み合わせで行うのが効率良いと言えますね。

宗教はタブーの話題と思われがちですが、それは特定の宗教の理念について「正しい・間違っている」という議論をしないという意味です。全く触れないでいると彼らの宗教上のニーズを聞き出すことができないので、気楽に聞けるようになりたいものです。

この記事ではここまで宗教について書いてきましたが、多様性には他に、性別・年齢・人種・LBGTなど様々あります。多様な人間が集まるからこそ、革新的なアイディアが生まれます。多様性は受け入れるものではなく、生かすべき力だという考えが、世界では主流になってきました。

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鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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