Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、外資系企業と日本企業で意思決定がどのようにされるのか、その違いについてです。
外資系企業の意思決定方法は、トップダウンです。部下の意見を全く聞かないわけではありませんが、基本的に上位の職にいる人間が、方向性を決め、やるべきことを決定し、下位の職位にいる部下に実行を求めます。前提は、外資系では専門性が問われるため、上司は経験・スキルにおいて部下より必ず勝っていることです。人格の良さだけやリーダーシップだけで正しい判断が行えるわけはないというのも、根底にある考え方です。
意思決定が1人もしくは直属の部下など少人数で行われるので、決定にかかる時間が短く、早く実行に取りかかれるのが長所です。短所は、長が周囲の意見を全く聞かない場合、ワンマンな運営になる可能性があることです。
リーダーシップにも時代の流行りがあり、ぐいぐい牽引するリーダーシップがもてはやされた時代は、一方的なトップダウンで上司から部下に伝達がされると言う意思決定も多くありました。しかし、エンパワメントという言葉に象徴されるように、周囲を巻き込み勇気づけ、人が本来持っている素晴らしい力を引き出すことに長けたリーダーに脚光が浴びるようになり、欧米系の外資でも周囲の意見を聞くということがより行われるようになりました。
一方、日本企業の意思決定方法は、ボトムアップです。日本企業では会社の都合で社内異動が起こり、経営陣が必ずしもその部署の専門家でないことが多いので、実際の現場や仕事の内容がわかっておらず、意思決定がしにくい、もしくは1人で意思決定するのは非常に危険という現実があります。正しい判断をするには現場を理解している部下達の意見が鍵を握ることになります。
ホフステードの異文化6次元モデルで、日本の「権力格差 (社会の中に権力が不平等に分布している状態を受け入れる程度)」スコアは1-100のモノサシで54です。もっとスコアが高いように感じるかもしれませんが、このスコアを立証するのがボトムアップの意思決定です。上から一方的に指示されるわけではないのが肝心な点です。
ある会社にセールス訪問した時のことです。人事担当の執行役員にお目にかかることができました。5分ぐらいお話した後で、「この方、研修分野はあまりお得意では無いかもしれない」と思いました。それから10分ぐらいして、「この方そもそも人事のバックグラウンドをお持ちなのだろうか?」と疑問に感じました。人事のことをあまり良くご存じないようにお見受けしたからです。
打ち合わせの最後にお互いに打ち解け、先方が「実は先月異動になったばかりで、その前はカスタマーサポートの責任者だったんです」と打ち明けてくださいました。なるほどと腑に落ちると同時に、外資出身の私は卒倒するほど驚きました。人事の経験がない方が人事部門のトップに就かれて、部下達がよくついていくなとも大変失礼ながら思ってしまいました。
外資ではポジションが上の者は、スキル・経験値が部下より高くて当たり前なので、その部署での実務経験が全くない方が、部署のトップに就任する事は100%近くありません。またもし就任したとしても、半年以内に部下達に追い出されてしまうこともあります。知識・スキル・経験が無い人材は、部下の尊敬を得ることができない企業文化です。
日本企業に慣れた方が、外資系に転職をすると戸惑う事が多いと思いますが、その1つがこの意思決定方法の違いです。どちらが良い悪いではなく、企業文化が違うのでやり方が異なります。まずはどういう企業文化なのか、どういうタイプの上司なのかを注意深く観察して、上司に意見したい時はタイミングと話し方をよく見極めることをお勧めします。どこに行っても気さくで周囲からの意見を歓迎してくれる上司が必ずおられる一方で、ワンマンタイプで助言を良しとしない方もおられるのが現実です。
外資系でキャリアアップしたい方は専門性を高めることが何よりの早道です。ジェネラリストは外資系で昇進するのが難しいですし、転職活動をする際に労働市場で高い値がつきません。「あなたはどの分野の専門家ですか?」と聞かれて即答できますか? もし即答できなければ、そのためのキャリアを築く努力をしてください。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。