Global Career Guide
日系企業から外資系企業に転職すると、働き方や価値観の違いに戸惑うことが少なくありません。同じ外資系企業でも、日本法人の設立から長い“日本的外資”と、本国の文化が色濃く反映された“外資らしい外資”では、そのギャップも大きく異なります。
どちらが優れている、という話ではありません。ただ、違いを理解しておくことで、新しい環境に早く適応し、成果を出すまでのスピードを早めることができます。
今回は、外資系での働き方に大きく影響する5つの要素と、その乗り越え方をご紹介します。
同じ業種で比べると、外資系企業のほうが仕事のスピードが速い傾向にあります。このスピードに対応するためには、「完璧主義を手放す」ことが非常に大切です。
日本の職場では、100点を目指して丁寧に仕上げることが評価されることもありますが、外資系では「まずは70点でもいいから出す」ことの方が価値がある場合も多いのです。
たとえば、上司への報告に使うExcel資料では、数字さえ正しければ、細かいレイアウトに時間をかけるのは“時間の無駄”と見なされることもあります。求められているのは「正確さ」と「スピード」。まず提出して、その後に必要があれば修正する、という姿勢が歓迎されます。
外資系企業では、多くの場合「成果」に基づいて評価されます。
残業時間の長さや努力の過程は、評価の対象にならないことが一般的です。逆に、短時間で結果を出している社員は、働いていないように見えても高く評価される場合があります。
転職後は、まず年度の初めに上司と一緒に目標設定を行うことが一般的です。「何を、どこまでやるか」を明確にして、そのゴールに向かって着実に進む姿勢が求められます。成果主義を理解していないと、自分では頑張っているつもりでも「結果が出ていない=仕事ができない人」と誤解されてしまうことがあるので注意が必要です。
英語で行われる会議では、「発言すること」が参加の証として重視されます。
「上司が近くにいるから控えよう」「自分はまだジュニアだから発言しない方がいい」と考えるのは逆効果。黙っていると「意見がない」「関心がない」と見なされてしまう可能性があります。
とはいえ、英語で積極的に話すのは簡単なことではありません。最初は、会議の最後に一つ質問をするだけでも十分です。また、誰かの発言に対して「I agree with that.(私も賛成です)」と一言添えるだけでも、「存在感を示す」ことにつながります。少しずつ発言のハードルを下げながら、発言する習慣をつけていくことが大切です。
外資系では、上司との関係は比較的フラットで、命令口調や圧力をかけるようなやり取りは少ない傾向があります。お互いに転職する可能性があるため、過剰に深い人間関係にはならず、さっぱりとした距離感が一般的です。
とはいえ、信頼関係を築くためには「見える仕事」を意識することが重要です。特にリモートワークが増えた今、上司は部下の仕事ぶりを把握しにくくなっています。だからこそ、最初のうちは自分からこまめに進捗報告をすることで信頼を得ましょう。信頼されるようになると、自由裁量の範囲も広がります。
ただし、評価・昇給・昇進のほとんどは直属の上司に決定権があります。だからこそ、適度な距離感を保ちつつも、信頼を得る努力は欠かせません
英語圏の上司がよく使うフレーズに、
“Please give me a heads-up as early as possible.”
というものがあります。
これは、「問題が起こりそうな時は、なるべく早く教えてね」という意味です。
「自分で解決しないとまずい」と抱え込んでしまい、結果的に問題が大きくなってしまうのは最も避けたいシナリオです。早く相談してもらえれば、上司やチームとして対処できるという考え方が根底にあります。
彼らは、失敗も成長の一部ととらえており、2回や3回のミスでクビになるようなことはまずありません。相談することは“弱さ”ではなく、“責任感”と見なされるという価値観の違いを、ぜひ理解しておきましょう。
外資系の働き方の本質は、「自分の判断で動くこと」にあります。
誰かが見ていてくれるのを待つのではなく、自分自身で仕事の進め方をマネジメントする力が求められます。もちろん、必要な場面では適切な自己アピールも重要です。
すでに外資系で働いている方も、これから挑戦を考えている方も、今回ご紹介したポイントを参考に、自分の働き方を見直すきっかけになれば幸いです。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。