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外国人向けプレゼン資料作成のポイント

外資系企業に転職すると、外国人向けにプレゼン資料を作成する機会が増えます。海外出張先で聴衆がほとんど全員外国人ということも考えられます。日本と海外では、好まれるプレゼン・スタイルに違いがあることを理解しておくと便利です。本日は、外国人向けプレゼン資料作成の具体的なポイントを紹介します。基本的なプレゼン資料の作り方は省略して、注意したい項目にだけ焦点を当てています。

1. 結論を先に伝える  

日本では「起承転結」の構成が好まれますが、外国人の多くは「結論→理由→詳細」というスタイルを求めます。これを「ボトムライン・アップフロント(Bottom Line Up Front, BLUF)」と言います。結論を先に伝えることで、相手が内容を素早く理解しやすくなり、その後の説明を集中して聞いてもらえるのです。例えば、「2025年までに売上を20%増加させるために、A案を採用すべきです」と冒頭で明確に伝え、次にその理由や詳細を補足するようにします。

2. 文字は少なめで視覚的にわかりやすく 

英語でのプレゼンスライドの肝は、ビジュアル画像でわかりやすく文章をサポートできているかです。フランスのIT企業に20年勤める友人によると、フランス人のパワポはビジュアル命。フォントの種類から大きさ、背景の透過率など内容よりもビジュアルに美しいかが最優先だそうです。

フランス人は特別かもしれませんが、一般的に外国人は長々とした文章を読みことを好みません。スライド1枚に文章がびっしり詰まっていると、集中力を失ってしまいます。以下のポイントを意識しましょう:

・一つのスライドに一つのメッセージを載せるくらいで丁度良い
・ 箇条書きを使って情報を整理する  
・フォントサイズは少なくとも20ポイント以上にする  

また、文字を減らすだけでなく、グラフや図表などのビジュアルエイド(文章の内容をわかりやすくするための図やイラスト、写真など)を効果的に使うことで、相手が直感的に内容を理解できるようになります。

3. ビジュアルエイドはシンプルに 

スライドに多くの図や画像を詰め込むと、かえってメッセージがぼやけてしまいます。
住んでいるマンションで3社の修繕会社のプレゼンがありました。とにかく写真が多くて目がチラチラするし、何についてのスライドなのかがぼやけてしまいます。以下の点を意識しましょう:  

・配色は3色程度に抑える 
・グラフやチャートは簡潔で見やすくする(例:3Dグラフは避け、シンプルな棒グラフや折れ線グラフを使う)  
・不必要なアニメーションは避ける(内容より演出が目立つことを防ぐため) 

さらに、文化の違いも考慮する必要があります。例えば、緩い感じの人物像を日本では使うことがありますが、欧米のビジネスプレゼンはビジネスライクな画像を使います。エンターテインメント業界など一部のビジネスを除き、ビジネス色のつよい画像を選んだ方が無難です。

またある映像制作会社がハリウッドでのプレゼンに、日本では有名な女優さんの写真を載せたところ先方では全く知名度がなく、期待した効果を得られなかったという話も聞きました。商談相手に刺さりそうなビジュアルはどんなものかを考える努力も必要です。

4. 通貨表記は相手の立場で考える 

資料中に通貨を示す場合、対象者がどの通貨で物事を考えているかを考えましょう。例えば、アメリカ人のクライアントには「¥1,000,000」と日本円で記載するのではなく、「$6,500(1ドル=154円換算)」のように表記すると、相手は金額を直感的に理解できます。また、為替レートを明記することで透明性が増し、妙に細かい参加者から計算がおかしいと突っ込まれることがありません。

5. 時差を意識する 

スケジュールを提示する際、相手のタイムゾーンに合わせた記載が必要です。「東京時間 12月13日の10:00 a.m.」とだけ記載すると、相手が混乱する可能性があります。必ず相手側の時間を併記し、「東京時間 6:00p.m.(ロンドン 9:00a.m )」と記載できたら理想です。ヨーロッパは 18:00 など24時間制の時間表記ではなく、a.m./p.m.で使い分ける 12時間制の方が多いので、18:00 と書かれてもピンとこない人もいます。

6. 提出前にネイティブの視点で確認を 

最後に、資料を完成させたら、可能であればネイティブスピーカーに確認してもらいたいです。私たちが気づかない文化の違いや表現のニュアンスを指摘してくれることがあります。特に重要なプレゼンでは、ネイティブスピーカーのレビューは必須です。

英語のチェックだけでなく、ビジュアルが適当かどうかも見てくれます。例えば、グローバルを表したくて地球の写真を置いたところ、「国旗が並んでいる写真の方が華やかでグローバル感が出るんじゃない?」とカナダ人の同僚がアドバイスしてくれたことがあり有り難かったです。

外国人向けのプレゼン資料は、単に英語に翻訳するだけでは不十分です。文化や思考の違いを理解し、相手が快適に情報を受け取れる工夫を施すことが成功への鍵です。これらのポイントを意識して、外資系でのプレゼンを成功させましょう。

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鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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