Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材の鈴木美加子です。本日のテーマは年齢を聞いてもいいかどうかです。
めでたく外資に転職しても、日本の文化を引きずりすぎるとうまく適応できなかったり、ここぞという時にポカをしてしまうかもしれません。今日は、年齢を聞くことについて海外はどうなのかをお伝えします。
日本は一括採用でスタートしますし、敬語がある国なので自分の立ち位置を把握する必要もあり、つい相手が何歳なのか気になりますよね。初対面で年齢を聞いたり、便利な干支を聞いたりします。「何年入社」・「入社何年め」・「同期」という表記もよく見かけます。
外資は中途採用が多数派なので、自分より後に採用された人が必ず自分より若いとは限らず同期意識もないので、相手の年齢を聞く習慣は徐々に薄れます。私が最初の会社に入社した時、まだ定期的な新卒採用をしておらず、私と同じ日に入社したのは経営企画部の部長でした。彼と私が同期だと言うのはどう考えても無理があり、私の中にはいまだに「同期」という感覚がありません。
また違う会社では、部下が私より15歳年上だったこともあります。正直、最初は少し意識しましたが、他部署から異動した方で人事の知識があまり無いとわかった時点で、彼の年齢のことは気にしなくなりました。外資は成果主義なので、知識・経験値・スキルが高い人が年齢に関係なく上に立つのが自然だからです。
このように年齢を気にしないことに外資でだいぶ慣れていたはずでしたが、オーストラリアに住んだ時にガツンとやられました。ある時、親友のオーストラリア人に年齢を聞いたところ、はぐらかされてました。しばらくたって性懲りも無くもう一度聴いたら、”Age is just a number.”(年齢は単なる数字よ)と結構強く言われて答えてもらえませんでした。彼女が年齢を明かさない理由は、「人は年齢に対して無意識に偏見を持っていて、○○才なのに大したことないとか勝手に決めつけるでしょ。それが嫌なのよ。」だそうです。あんなに親しくても年齢を聞かないものなのですね。彼女の年齢は今もわかりません。
そう言えば以前、著名なTVの司会者がNY在住のダンサーの女性に、年齢を聞いていてびっくりしたことがあります。英語圏は年齢を、特に女性に聞かないのが常識です。しかも彼女の職業はダンサーで、体力の限界と途中から闘うことになるわけで、わざわざ自分から年齢は言いたくないだろうなと気の毒に思いました。最初の質問ではハグらかしていましたが、しつこく2回目に聞かれた時にはTVに映っているからでしょうが、年齢を渋々(苦)口にしていました。
欧米で年齢を聞くのはタブーとして、アジアはどうなのでしょうか? ビジネスパートナーに気軽に聞いても大丈夫なのでしょうか。気になるところです。
朝活のスピーカーでシンガポールに住んでいるTさんによると、ビジネス公用語が英語であるシンガポールは上下を気にするニーズがなく、イコール相手の年齢を聞く習慣もないそうです。私の中でアジア人はなんとなく年齢をもっと気軽に聞くように思っていましたが、国によるのかもしれません。
「上下を気にしないと言っても、高齢者への尊敬の念はもちろんあります。電車の中で自分が座っていて、ご高齢とお見受けする方が自分の前に立ったら即座に立って譲ります」とTさんに言われ、私ったら「ご高齢ってシンガポールでは何歳くらいを指しますか」と聞いてしまいました。
「ミッキーさん、その発想が既に年齢にとらわれてますよ。」とTさん。確かにと吹き出しました。立っているお姿を見て、席をお譲りしたいと思ったら年齢にこだわらず立てばいいのですよね。シンガポールでは、席を譲られたら自分を高齢者と思うかどうかに関係なく、有り難く座らせてもらうそうです。60代で座るのはカッコ悪いとか、他人の目を気にすることがないのは気楽ですね。
どうやら、年齢を気にしすぎるのは日本人の習わしのようです。日本人同士の時は許容してもらえるかもしれませんが、ひとたび仕事相手が外国人になったらむやみに年齢を聞かない方が無難です。いづれ距離が縮まれば、向こうから言ってくれることもあるでしょうし、その頃には相手が何歳か、こちらも気にならなくなっているかもしれません。
つくづく育った文化の影響は大きいです。外資で育ち、年齢を気にしないのが当たり前の企業文化で育ったのに、ところどころで子供の頃から影響を受けている日本文化の癖が出てしまいます。グローバルスタンダードの常識が無いと思われないように、外国人、特に英語圏の方々と接する機会があったら、年齢を聞きたい気持ちをグッと抑えることにしましょう。自戒も込めて。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。