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ホフステード異文化モデル – 男性性 vs 女性性

元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日は、ホフステードの異文化モデルの切り口から「MAS(Masculinity=男性性) vs Femininity(女性性)」をご紹介します。


男女差に敏感な現代において、少し誤解されそうな切り口ですが、「モチベーションになるものは何かを問う」軸と思っていただければと思います。いわゆる性差とは違います。


国民に「成功するとは何を意味しますか?」と問いかけた時に、MAS度が高い国では、「肩書き、地位、年収、大きな家、高い車」など他者より秀でることが上がり、人々は働くために生きる傾向にあります。MAS度が低い国では「生活の質、小さくゆっくり美しいこと」などが上がり、人々は生きるために働く傾向にあります。


日本の数値は、1から100でどのくらいの数字だと思いますか? 高い方に入るだろうことは、想像できるだろうと思います。過労死する人がいて、残業が多いことで知られている国ですからね。日本のスコアは95で、現在のホフステードのデータで日本より高い国はありません。世界一、MAS度が高い国であるというわけです。これを自覚しておくことは非常に大切です。そうしないと、外国人と仕事をするときに、日本流を押しつけたり期待値が高過ぎたりで大変なことになります。


例えば、会社員時代、アメリカ、イギリス、ドイツと仕事をすることが多かったです。それぞれのMASのスコアは、アメリカが62、イギリスが66、ドイツが66です。世界の中で見れば、決して低い数字ではありませんが、比較すると日本よりだいぶスコアが下がることになります。


外資系とは言え現地法人は日本人が多いので、17:30にピッタリ退社している人はいませんでした。これが、海外の同僚はピッタリ退社で急ぎのメールの返信が来なかったなんてことはしょっちゅう起きていました。彼らが怠惰なのかというとそうではないのです。「仕事のためにすべてを犠牲にして、仕事が残っていたら終わるまで帰らない」というような価値観では無いわけです。ファミリーの方が大事だったら、仕事は仕事、プライベートはプライベートとしっかり切り分けしているわけです。 休暇は当然の権利なので2週間でも3週間でも取ります。「全く仕事しないんだから」は、その国の価値観を理解しないコメントになります。


アジアの時代である昨今、アジア各国のスコアも見てみましょう。シンガポール 48, マレーシア50, 中国66, 台湾45, インド56、ベトナム40といったところです。目覚ましい経済発展を遂げた中国を除くと、そんなに数字は高くないことがわかります。アジア人と仕事をしていて、「スピードが遅い、納期を守らない、やる気を感じない」などと思ったことはありませんか? 私はあります。アジア・パシフィックの仕事をしていた時、頼んだことの締め切りをインドがいつも守らないことに悩まされていましたし、リマインドしないと出てこないと決まっている国もあって、本当に辟易していた時期もありました。振り返ると、日本の価値観を押しつけていたんだなと思います。


MAS度がもっと低いのは、北欧の国々です。フィンランド26, デンマーク16, オランダ14, ノルウェー8などです。社会保障制度が発達した国々なので、過労死するまで働く必要がないという現実もあると思いますが、ワークシェアリングをしたり、家族のために早く帰宅したり、ゆったりした「生活の質」を求めて暮らしている人が非常に多い国々と言えます。


日本でもようやく「働き方改革」が叫ばれるようになりました。時代とともに少しづつ変わっていくかもしれません。根っこのところに、「対立思考、成功者を賞賛する傾向にある、大きく速いのが良いこと」と思いやすい国民性であることを認識して、外国人と仕事をするときには、相手の国のMAS度を意識して押しつけにならないように工夫して協業するのがコツでしょう。具体的には、急に仕事を振らないようにする、時間外に相手が働くことを期待しない、などです。ホフステード異文化モデルを知り、グローバル人材として活躍する上でぜひ生かしてください。

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鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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