Global Career Guide
元・外資系人事部長、現・グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
ホフステードの異文化6次元モデルにPDI(Power Distance Index) という軸があります。社会に権力の格差が存在することを、その構成メンバーである国民がどのくらい許容できるかという指標です。
気がつくと、私はPDIのスコアが低い、つまり権力格差が比較的無い国とばかり付き合ってきました。職場で関わることが多かった国、アメリカ40, イギリス35, ドイツ35などです。18か月住んだオーストラリアのスコアは36。上司と部下、先生と生徒のような関係に、格差が無いのが私の好みであることに大きく影響していると思っています。
ほとんどのセミナーの冒頭で、「鈴木美加子ことミッキーです」と名乗っており、主宰するグローバル人材塾・世人塾で「先生と呼ぶこと禁止令」を出しているのもそのせいかもしれません。原体験は、25歳の時に初めて出張したNYでの出来事です。セミナーに参加させてもらったのですが、講師はコロンビア大学の博士号をお持ちの女性で、当然Dr. Johnstonと呼ぶのだろうなと思っていたら、周囲のアメリカ人は全員が”Cathy”とファーストネームで呼んでいたのです。今でも忘れられないカルチャーショックです。PDIのスコアが40のアメリカでは、ドクターと丁寧に呼ぶことの方が不自然だというわけです。
それから勤めた企業は、ずっと欧米資本の外資だったので、PDIという面では格差がないこと、上司と部下の間でも比べればカジュアル、「先生」と崇めたてまつらない文化の中で生きてきたことになります。
ご参考までに、日本のPDIのスコアは54です。想像よりスコアが低いと思われた方は、日本は確かに「権力がある人」を立てる国ではあるけれど、根回しが下から上に上がり、上からの一方的なトップダウンではないことを思い出してください。
最近、アジアの方とお仕事をする機会が増えました。なんといっても今はアジアの時代なので素晴らしいチャンスとポジティブに捉えていますが、このPDIに関しては面喰らうことが多いです。どちらが良い悪いではなく、欧米人とのやりとりが多かった私は、気をつけないと火傷を負うと思っています。
アジアの国の幾つかのPDIを取り上げてみます。中国80、フィリピン94、ベトナム70などとなります。
フィリピンのセブ島に出張した時のことです。ビジネスホテルに泊まっていた私は、いつもと同じように気軽にスタッフに声をかけました。楽しくおしゃべりしていたのですが、白人の方がはいってらして、その途端、スタッフの様子が変わりました。ビシッとしたというか、立ち上がった人もいるほどで、気を遣っている感じでした。入ってきたのはホテルのオーナーです。PDIが非常に高いフィリピンではスタッフと全然違うレベルということでしょう。この上下の感覚は日本人より強いようで、最後まで完全には理解できませんでした。オーナーとマネジメントの仕方について話した時、「フィリピン人は働き者ではないから、時々顔を見せてちゃんとチェックしているよ」と示す必要があると話していました。
セブ島で英語学校の校長をしているオーストラリア出身の方が、学校のスタッフに直接指示を出したら、管理職のマネージャーに「どうして私を飛ばして、直接声をかけるんですか。私の立場はどうなるんですか。スタッフはどうして社長が直接声をかけるんだろうってビビってますよ」と怒られたそうです。私の知り合いはフレンドリーなオーストラリアの感覚で、声をかけただけなのだと思いますが、「郷に入っては郷に従え」なのです。階級の序列を守らないと、PDIのスコアが高い国ではうまく仕事ができないという典型的な例です。
世界は広く、グローバルと言っても欧米流だけではありません。皆さんがメインでコンタクトされている国はどこでしょうか? その国の文化の大きな特徴を理解されていますでしょうか? 新しい国と取引/やり取りを始める時は、まずそこから調べると軋轢少なく仕事できると思います。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。