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ホフステード・モデル : 異文化の衝突を紐解く

元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。前回までホフステード6次元異文化モデルのそれぞれの指標についてお伝えしました。今日は、職場で起きる異文化の衝突を、ホフステードのモデルを用いて紐解きます。

いくつか実際のケースを挙げますが、今、その国と仕事をしているかどうかにとらわれず、考え方を学ぶと思って読み進めてください。

ケース1

状況

日本と中国でプロジェクトを進めることになりました。進行スケジュールは一度決まりましたが、不具合があるとわかり日本サイドは細かく見直すことを提案しました。中国サイドは、すでに人手なども確保してしまっているので、とりあえずスタートして途中で調整していけば良いという考えです。双方が引かないのでプロジェクトは、スタート前から暗礁に乗り上げてしまいました。

解説

このケースは、MAS(男性性)とUAI(不確実性回避)が関係します。MASは、何が国民を動機づけるかを測る指標で、MASの数字が高いと「いわゆる社会的成功を得たい」気持ちが強いことになります。UAIは、石橋を叩きたい度合いを測る指標で、スコアが高いと石橋を叩きまくりたいことになります。

日本がMAS95、UAI65なのに対して、中国はMAS66、UAI30です。日本は、完璧を目指し失敗を恐れて、慎重に慎重に進めたいわけですが、中国はとりあえず始めたい、完璧を目指すつもりは最初からないという文化背景です。衝突して当然とも言えるスコア同士なので、何をどこまでお互いに譲るのかを決めるしか折合う方法は無いと言えます。

ケース2

状況

アメリカの東海岸に本社がある会社が続いた後で、アジア・パシフィックの仕事をしました。韓国・香港・シンガポール・マレーシアに出張することになり、深く考えずに来たからルートを決めて予定を組んだところ、マレーシア法人に出向くのが金曜日になってしまいました。アジアと仕事をしたことがなかった私は、金曜日はイスラム教徒にとって重要な日だということに気がついておらず、ミーティング中なのにお祈りに行ってしまう同僚を唖然としながら見送っていました。どうして「金曜日は仕事にならないかもしれないから、他の曜日にしてもらえないか?」と聞いてくれなかったのだろうと、怒り気味でした。

解説

マレーシアのPDI(権力格差)の数字は100なのです。マレーシア法人がレポートしているアジア・パシフィック本部から行った私は、彼らから見ると絶対的に上位の組織に属しているので、物申すことは文化的にできなかったのです。それまでPDI40のアメリカ企業に勤めていた習慣で、問題があればフランクに相手が言ってくれるだろうと思いこんだ私は、ひとえに経験が足りなかったと思います。「このようなスケジュールを考えているけれど、祭日とか宗教上の理由で問題がないかどうか教えて欲しい」と各国に聞くべきでした。

ケース3

状況

世人塾の卒業生がエジプト勤務を終えて帰国しました。話を聞いているとエジプト人は、長いプロジェクトを完成予定日から逆算するということができないようです。とりあえず目先の3ヶ月くらいに何をやるのかを決める。そしてその3ヶ月ですら途中で頓挫することもあるそうで、日本から行ったエンジニアは胃がキリキリする思いを恒常的にしているとのことでした。

解説

彼女の話を聞きながら、エジプトのLTO(長期志向)のスコアが知りたくてたまらず、帰宅してすぐスコアを調べました。LTO7、日本のLTOは88で、この差は大きいです。長期的プランニングが得意な日本人が、ほぼできない方々と仕事をしないといけないわけですから、覚悟が必要です。最初からスケジュールを前倒しに組む、途中で頻繁に進行をチェックするを繰り返しても、予定通りには出来上がらないかもしれません。粘り強さが問われるでしょう。

以上、3つの短いケースを紐解いてみました。知らなければ、ただイライラするだけであろう異文化の衝突も、「こんなに数字が違うんでは、ぶつからない方がおかしい」と冷静に割り切ることができると楽になります。異文化の軋轢が起きている場面では感情的にならないで、客観的に解決しようというポジティブな姿勢を保つことが重要です。

鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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