Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日は、日本人がプロセスに細かすぎることがテーマです。
先日、電車で隣り合わせた方となんとなくおしゃべりを始めました。 彼は、バンガローから駐在しているIT企業のVPで、日本滞在歴2ヶ月だそうです。 日本の前はアメリカに駐在していたとか。 赴任直後の外国人に日本がどう見えるのか、興味津々で聞いてみました。 「インドと日本」一番違う文化の差は何かしら? 彼の答えは、”Japan is extremely process-driven. (日本は極度にプロセス重視だね)” でした。
”When you need to reach destination F, you need to reach B, C, D, E and F in a pre-determined order in Japan. As long as you reach F, how to get there is totally up to individuals in India.” (F地点に到達しないといけない場合、日本では、まずBその次にC、D、Eと行ってFに行く必要がある。インドでは、Fに到達さえすればその途中経過はどうでもいいんだよ。)
2ヶ月でよく気がついたなぁってびっくりしながら、昔の失敗談を思い出していました。 アジア・パシフィックの仕事をしていた若かりし時、エリアにHRIS(人事データ管理システム)を導入することになりました。 ベンダーさんの本拠地はインドにあり、導入するのまずは5カ国でした。言語の壁を越え、時間感覚の壁を越え、緻密さに対する感性の違いを越えのプロジェクトです。
まずは、東京にある本社に入れてそれからAPACに導入した方がいいのではと、本社に提案しましたが、聞き入れられず仕方なく5カ国に同時に導入することになりました。もうこの時点でかなり危険な香りがします(笑)そもそも、システム導入はうまくいかないことの方が多いのが経験値です。 その上、ベンダーさんの拠点はインドにあり、時間にルーズだとわかっている国が2カ国参加しているプロジェクトなので、「しっかりコントロールしないと、期日通りに絶対導入できない」 と強く思ってしまいました。
それで、エリアのHRIS担当で東京本社の社員に、きちんとしたロードマップを作ってもらい、がっちりコントロールしてもらうことにしたのですが…
失敗!
途中で、中国の担当が切れてしまいました。「Our goal is to bring in the new HRIS by June 30. We are tied up with too many small steps and due dates. This is too much.” (僕たちのゴールは、6/30までに新しいHRISを導入することだろう。細かい作業のステップと締め切りが多すぎて、うんざり)
当時、海外在住経験がなかった私は、日本ほど時間厳守の国はほぼ存在しないと実感できていませんでした。 「そんなこと言ったって、ほっといたら期限通りに進まないよね」を飲み込みとりあえずは相手の話を聞きましたが、結局、それまでのやり方を変えることなく進めました。すったもんだの末に、6/30までに導入はできましたが、我ながら異文化を無視した下手なプロジェクト・マネジメントをしたものだと、振り返って当時のメンバーに申し訳なく思います。
彼らにとってもストレスの高いプロジェクトだったに違いありません。
先進国の中でたぶん一番大雑把な国、オーストラリアに住み、本来はルミナの青(細かい点に気がつく)がなくかなり大雑把なミッキーは、帰国後見方が変わりました。日本企業の担当者とお仕事をしていて、「細かい…」と感じることもあり、この感覚があのときの中国人の感覚なのかもしれないと思ったりもします。 国境をまたぐプロジェクトは楽しいですが、「時間」「精度」など価値観の違いを背負った人同士の仕事になるので、気をつけないとお互いにストレが高くなります。知らない間に「きちきちしすぎる日本人」 になっていて、他の国のメンバーを疲弊させていないかチェックも必要です。
今すぐボーダーレスのプロジェクトに関わる予定のない方も、将来、外国人と仕事をすることになったら、文化に優劣はなく価値観に正しい・間違っているはないので、母国のやり方を相手に押し付けないようにくれぐれも気をつけてください。 「なぜ、その方法でやりたいのか」を英語で説明できることも重要なので、英語力を向上をさせる努力も続けてください。いつか必ず報われる日が来ます。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。