Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
今日は、日本人に多いプロセス重視が外国人からどう見えるのかについてお話ししたいと思います。
週末、異文化に関する資格を取得するために研修に参加しました。ホフステードの6次元異文化モデルを、皆さんご存じでしょうか? 文化の違いを6つの切り口から紐解くのですが、ビジネスの現場に大きな影響を与える切り口に、「不確実性の回避」があります。何も確立されていなくて先が見えていなくてもまずはアクションを取り、前に進みながら調整していくのか、曖昧さ不確定なことに違和感を感じ失敗を避けたい気持ちが強いのかという、切り口です。
日本はご想像通り後者で、不確実性を避けたい度合いがかなり高い国です。もちろん個人差はあるので、日本人でもリスクを取れる方はいらっしゃいます。あくまで平均点を見たときのお話です。
かなり前に電車の中で、インド人と隣り合わせになったことがあります。観光客ではなさそうと思いながら話しかけたら、日本に赴任して3か月とのことでした。「日本とインドの違いは?って聞かれたら、なんて答えますか」と聞いてみました。
最初は、「英語が通じないこと」なんて、お茶目な回答でしたが、真面目に答えてくれた時の彼のお返事が印象的でした。「日本ではプロセスが非常に重要な気がする。A地点からF地点に行くには、A→B→C→D→E→F の順番を踏まないといけないんだよね。インドでは、とにかくF地点まで行けばいいんだから、最短と効率を考える。A→B→Fでも、A→D→B→Fでもなんでもいいんだ。」
当時来日してまだ3か月だというのに、よく見てるなと感心したと同時に、それだけ突出して日本はプロセス重視の文化なのかなぁと思いました。
週末の研修にはアメリカ人が参加されていたのですが、面白いストーリーをシェアしてくれました。
ある研修に参加していた時のことです。たまたまアメリカ人が2人参加していて、一人は在日25年以上のバイリンガル・アメリカ人、もう一人はアメリカに住んでいるアメリカ人という組み合わせでした。二人は違うテーブルに座っていました。
研修の途中で、10分間でテーブルごとに4問の質問に答えるというお題が出ました。彼以外、全員が日本人のテーブルで、彼は途中からちょっとイライラしたことがあったそうです。それは、1問めを延々と議論していて答えが出ず、時計を見たらもう5分経っていてこれでは全部終わらない状況だったことです。結果を出すこと重視でプロセスは関係ないアメリカ人は、「1問めをスキップして、取りあえず2問めをやりませんか? もう5分経ってるんでこのままだとタイムアウトになっちゃいます。1問めには後で戻りましょう。」と提案し、「それは良いアイディアだ」になったそうです。
休憩の時にたまたまアメリカからこの研修のために来日していたアメリカ人のテーブルにいた日本人とおしゃべりになり、別のテーブルにいたアメリカ人の彼女が、自分と全く同じ行動を取ったことがわかった時は、「あぁやっぱり僕は今でもアメリカ人なんだな」と思ったそうです。
四半世紀以上日本に住んでいて、日本の方がアメリカより長くなった彼だけど、コアな価値観の部分は教育を受けたアメリカの影響を受けていて、そんなに簡単には変わらないという事実、興味深いですね。
「不確実性回避が高い」ことが悪いという意味ではないので、誤解しないでください。曖昧さを排除するために「構造・規制」を必要とするところが、走りながら考えるタイプの人にはストレスになり、一緒にプロジェクトをするときに進み方が遅く思えてイライラする可能性があるということです。相手に文化の差を説明できるとベストです。
みなさんの個人的な「不確実性回避度」は、どんな感じでしょう? 高いだろうなと思う方は、外国人との仕事では相手はストレスに感じるかもしれないと、頭に置いておくだけでもだいぶ違うと思います。日本流が唯一無二と押しつけないことは大切です。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。