Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。今回のテーマはキャリアの棚卸しについてです。転職サイトを利用する際、まずは履歴書の登録作業を億劫に感じる方も多いと思いますが、キャリアアップの第一歩となる重要なアクションになります。転職サイトへの登録前に、なぜキャリアの棚卸しをする必要があるのかと具体的に棚卸しを行う方法について説明します。
1. 自己分析を行いマッチ度が高い転職先を探す
転職を考えるにあたって、一番先に必要になるのが履歴書です。転職エージェントや求人サイトに登録した途端に、「履歴書を送ってください」と言われます。よりアピール度の高い履歴書を作成するために、キャリアの棚卸しは重要です。
そのほかにも候補者がスキル・経験値・パーソナリティ・コミュニケーションのスタイルに合った転職先を探すためにも、これまでのキャリアと自分の強みをしっかり棚卸しする必要があります。
2. 可能性を広げる
昨今は社会の変化が激しいため、自分にとってはスキルや経験と思えないことが、実は違う会社では役に立つ経験になることもあります。特に人手不足の分野は、少しでも関係する経験を持つ候補者は有難い存在です。狭い視野に捉われず、これまでのキャリアを振り返り棚卸ししましょう。
3. 長期的視野でキャリアを考える
人間は忙しいと目先のことにとらわれて、長期的に物事を考えられなくなる傾向にあります。多忙な中で転職活動を始める場合は、キャリアの棚卸しをすることで長期的な視点を持つことができます。変化が激しい時代においては、とりあえず目先の3年位が何とかなればと言う短期的思考は、例えばAIの進化との競争で自分が行くべき道を見誤ることになりかねません。
4. 目標設定
キャリアの棚卸しは、目標を明確にするためにも重要です。自分がどのようなキャリアパスを辿りたいのか、どのような成長や挑戦を求めているのかを整理することで、転職先の条件や求めるポジションを具体化することができます。
次にキャリアの棚卸しを具体的に行う方法をいくつか紹介しますが、まずは「強み」を正しく理解することから始めることをお勧めします。自分の「強み」をしっかり把握してこそ、キャリアの棚卸しも客観的にできるようになるからです。
強みと弱みを表にして書き出すことで、強みを確認することができます。可視化するためには熟考するので、出てきた強みは思い込みではなく正しいことが多いです。可能であれば、出来上がった強みと弱みのリストを、自分のことをよく知る家族や友人に見てもらい、抜け漏れがないかアドバイスをもらうことをお勧めします。自分のことを客観的に見ることは難しいですし、本人が強みと認識していないこともあり、大事な強みが漏れる場合もあるからです。
強みの棚卸しが終わったら、キャリアの棚卸しに取りかかります。4つ全てを行うことができない場合は、出来ることから始めてください。
1. 経歴を振り返る
過去の職歴やプロジェクトを振り返ります。重要な業績や成果、貢献度などを整理し、どのような経験を積んできたのかを明確にします。また、達成感や成長を感じた瞬間、困難に直面して克服した経験なども書き出してください。
2. スキルの洗い出し
自分が持つスキルや特技を洗い出します。コミュニケーション能力、リーダーシップスキル、プログラミングの知識など幅広い分野について考えてみます。また、専門的なスキルや資格、外国語力なども含めてリストアップしましょう。
3. 興味関心の確認
自分が興味を持っている業界や職種、テーマなどをまずは自由に考えてみます。どのような分野に情熱を持ち、成長を望んでいるのかを明確にしたところで、転職を考えたい業界・職種とマッチしているかどうか確認してください。
4. フィードバックの収集
自分のことをよく知る家族・友人・同僚に「私の強みを教えてください。1番の強みだと思う資質が活かされて、うまくいったと言える状況を、具体的に書き出してください」とお願いする方法があります。依頼された人間にとっては少し時間と労力が必要になるリクエストなので、何のために必要なのかを伝えたほうが協力してもらえそうです。できれば8人以上に依頼を出して共通する項目、つまりは自分にとっての最大の強みを再確認してください。生涯を通じて自分をサポートしてくれる大事な強みであることを、認識することは大きく役に立ちます。
強みとキャリアの棚卸しを客観的に行うことで、よりパワフルな履歴書を作成し自信を持って面接に臨みましょう。短期的視野に陥ることなく、変化の激しい時代の将来も見据えることを忘れずにキャリア形成を行ってください。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。