Global Career Guide
元・外資系人事部長、10,000人を面接した鈴木美加子です。ホリデーシーズンを迎え転職市場が動かなくなるこの時期、考えるヒントになればと転職相談の実例をご紹介します。
※この記事はご本人の了承の元に書かれています。
ご相談者は、38歳の女性です。現在、公務員をされていますが、3年おきの異動の時期が4月に巡ってくる前に、社労士として独立すべきか、転職すべきか、とりあえずどこに配属になるか見てから行動を起こすか悩んでおられます。
彼女のルミナ(アセスメントツール「Lumina」を使用)は、比較的バランスが良い、気をつけないと「器用貧乏」になるタイプです。大体のことはこなせるので、属する組織の方でも使い勝手のいい人材ということになり、本人がしっかりしていないと、あれもこれもできるジェネラリストながらどの分野のスペシャリストでもない人材になり、後々、困ることになります。ご本人も、ひどく頷かれていたので、思い当たる節はあるのでしょう。
「人間関係重視」と「結果重視」、「直感重視」と「規律重視」、両立はするけれど、実際に両立している人はそう多くはない、一般的に言う対立軸を見事にお持ちです。
現在、お金を取り立てるお仕事をされていて、実は適職に就かれています。個人と人間関係を短期間で築いて、お金を払ってもらう。つまり、数字で測れるお仕事で「結果重視」の方向きです。実際、成績は常によく、上司からも褒められているそうです。
外資なら、このような人材を配置転換することはありえませんが、4月に間違いなく異動になるとわかっているそうです。周りを見ていると、これまでの職歴の延長線上でない可能性は高く、今より向いていると思える仕事につけると思えないというのが、ご本人の判断です。
ルミナの結果を拝見した時、「独立に特に向いてはいない」とお見受けしました。最終的にはご本人のやる気次第なので、ここで価値観のカードを並べてもらいました。通常の、キャリア・カウンセリングには使いませんが、バランスが取れているルミナの型の場合は、価値観のカードが有効なのです。価値観のカードとは、「独立」「コミュニケーション」「肩書き」などいろいろな単語が描かれているカードです。これらを、「最重要」「重要」「普通」「さほど重量でない」「不要」に並べることにより、現在の価値観の優先順位を表し、表面化していない深層心理を表に出します。
彼女の現在の価値観で、最重要は「専門家」、重要のトップは「学習」、そのあとは、人間関係重視のカードは並びました。「協調性」「コミュニケーション」「他者の支援」など。起業を表す「独立性」と「チャレンジ」は、重要カードの列に入っていますが、順位が下の方です。
ここからわかることは、下記の4点です。
1. 今すぐの起業は、いずれにしても心の準備が整っていないので選択肢に入らない。即、起業したいのであれば、この二つのカードが最初に出てくるはずです。
2. 人を支援したり応援したり、育成したりする仕事、ルミナの緑(人間関係重視)を使った仕事を主軸にすると、満足感が高いと思える 。
3. ただし、NPO/NGOは、結果が目に見えるものでないと最終的に「結果重視」が満たされないので注意が必要 (一度、NPOを手伝われて全く同じ理由で離れたそうです。)
4. 自分のキャリアがジェネラリストにならないように気をつけて、キャリアを形成することが望ましい。
“すぐ起業する”が選択肢から外れたので、あとは、ここで転職するか、4月以降まで様子を見るかの二択となりました。個人的に、転職をお勧めしました。ご本人がすでに転職活動をスタートしていて、人生に「変化」を求めていると感じたこと、ご年齢を考えるとタイミングよしと判断したからです。
最終的にどの道を進まれるかは、彼女の判断になります。カウンセリングが終わって、ご感想をお寄せくださったのでシェアさせていただきます。
「(前略) ルミナを受けさせていただきまして、私自身漠然と持っていた性格や指向性がはっきりと示されていまして、大変驚きましたし、大変納得もいたしました。また、鈴木様の優しく、親身なカウンセリングでかつ的確なアドバイスをいただきまして、今後のキャリアプランを立てていく中で大いに参考になりました。 今回の良い機会を無駄にせず、大いに活かしていきたいと思います。
また、機会がございましたら、ご相談をさせていただいたり、私に合うセミナーなどございましたら、ご案内いただければ幸いでございます。
寒い日が続いております。お体にお気をつけください。
今年の年末年始は長いので、これからのキャリアをよく考えてみたり、ご自分の強みを振り返ってみたり、時間を有効に使えますように。良い年をお迎えください。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。