Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバルキャリアカウンセラーの鈴木美加子です。本日はITエンジニアをしているけれど違和感があり、このままのキャリアで良いのかどうか迷われている方のご相談を紹介します。
*この記事はご本人の了承の元に書かれています。
相談者は36歳の男性・吉田さん(仮名)で、ITエンジニアをしています。IT業界は時代の花形で給与も良いし、新卒から14年キャリアを同じ日系企業で磨いてきましたが、「この仕事が好き」「この仕事が天職」とは感じられないそうです。そもそも年齢的にキャリアの方向性を変えることは無理なのではと思い込まれていて、その点も知りたいとのことでした。エンジニアの方は一般的にはデータと論理性を求めたいタイプの方が多いので、本日は通常より多くのデータを用いて解説します。
今回は、「吉田さんが天職に就いていれば営業職かなと思ってお目にかかったら、技術者だとわかった」というケースです。
まずざっくりですが、吉田さんのマンダラから強み(スコアが高い)のは、結果重視と外交的だとわかります。他の色との組み合わせによりますが、営業、社長業に向いています。
スコアが最も低いのは、堅実の青です。青のスコアが高ければ、慎重、誠実、根拠重視が特徴で、IT,、法務、経理、事務などが適職です。データ、数字、真実を元に判断したいタイプで、漠然としたことが苦手です。しかし、吉田さんの青のスコアが低いということは、データや数字に興味がないということになります。
さらにエンジニアが天職でない裏づけですが、ある人材のトップ5・ボトム5の資質は何かを見ることができる下記の図で、吉田さんの最も優れた資質は、社交的・メンタルにタフ・論理的・信頼性がある・協力的の5つです。最も得意でない資質5つは、根拠重視・慎重・物事に控えめ・親密・順応性がある、です。
ITエンジニアの苦手エリア5つに根拠重視(データ・数字・事実を重んじたい)が入っているわけなので、毎日、開発やプログラミングを行うのは苦痛なのではと聞いてみました。「新卒からこの仕事をしているので、仕事とはこんなものかと思い込んでいる部分はあるかもしれませんが、この仕事を楽しいと思ったことは無いです」とのことでした。
さらに適性について決定的なのは、24のクオリティの結果です。根拠重視の「内在の自分」のスコア1%、「日常の自分」8%、「行き過ぎた時の自分」23%です。
まず3つのペルソナの話をしますと、ルミナスパークでは、人は複雑なので状況によって見せる自分の顔が変わる可能性があると考えます。
「内在の自分」: 本来の素の自分のことを指し、親しい家族や友人に見せる顔であり、生まれ持った資質と解釈できます。
「日常の自分」: 社会人であれば職場で見せている顔にあたります。
「行き過ぎた時の自分」: 仕事の量が多い、時間がないなどストレス下に置かれた時の顔です。
%はノーミングされており、100人が並んだ時、自分がどこにいるかを指します。根拠重視の「内在する自分」のスコアが1%だということは、100人並んだ時に自分が一番後ろにいて、99人の人が自分と比較すると、より根拠重視だということになります。仕事で必要なので職場では8%までストレッチしていますが、明らかに吉田さんの強みではなく、エンジニアで成功されている方は根拠重視のスコアが非常に高いのが普通なので、このままエンジニアを続けることを元人事としては勧められないというのが結論でした。
それでは、この先をどうしたら良いかですが、お悩みは2点ありました。まずは36歳でそもそも転職できるかどうか。そして転職する場合はどの領域に移ったら良いかです。
転職と年齢に関しては、この方はITエンジニアという高度な技術職に就かれているので、一般論は必ずしも該当せず、本人に転職の意志があれば転職できると判断できます。
次に、キャリアの方向性ですが、セールスエンジニアを提案しました。セールスエンジニアは、技術的バックグラウンドのある方が、クライアントと直に接して商談を行い、購入後のフォローもするのが仕事です。自分自身が設計やプログラミングを行わないので、これまで築いた技術力を生かした上で、会社の営業戦略を支えることができます。
吉田さんの本来の資質を生かせるのは営業です。結果重視(赤)のスコアが高いので、自分の業績が数値化できる・目に見える形になるとモチベーションが上がります。メンタルにタフであることが、最も強い資質5の中に入っているので、最初の頃、なかなか売れなかったとしても簡単に心が折れたりしないはずです。前出のデータから外交的も強みなので、クライアントと直接コミュニケーションを取ることも得意なはずです。
14年間のキャリアを捨てるのは勿体ないので、さらに生かせるキャリアはないかというアプローチから出たセールスエンジニア職ですが、私のお勧めは今すぐ転職しないことでした。社内異動させてもらえないかを会社に相談して、3年くらいセールスエンジニアとしての経験をしてから転職した方が、自分の市場価値が現在より高くなります。外部で全く経験の無い分野に挑戦すると履歴書に書けることが無いので、転職エージェント・転職サイト・企業の面接官に対して説得力がありません。
吉田さんは、これまでのキャリアが無駄にならない方向転換が可能とわかって安堵され、社内異動を実現させるために誰に相談するのが賢明かを真剣に考えて、少し時間がかかってもセールスエンジニアに転向すると決意されました。「目的意識」のスコアが高い方なので、きっとやり抜かれるはずです。
25年間外資系の人事で、本当にたくさんの社員の方を目にしてきましたが、社会的に成功されていて、なおかつ自分の仕事を楽しいと言える方は、「強み」を使って仕事をされているストレスの少ない方だと断言できます。みなさんが、持って生まれた強みを活かし、キャリアアップされるよう心からお祈りしています。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
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「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。