Global Career Guide
今回はIT企業でプロジェクト・マネジャーをしている34歳の男性のキャリア相談です。栗林さん(仮名)は、今の仕事に向いていると思っていましたが幸福感を感じられない瞬間が多く、本当にこの道で良いのか分からなくなったそうです。自分にとっての強みと適職を改めて棚卸ししたいというのがご相談内容です。
栗林さんの強みは、細かいことが得意な「青」と結果重視の「赤」です。プロジェクト・マネジメントは、大枠で見てこの2つの資質から成り立つ職業なので適職のはずです。さらに細かいデータで確認していきましょう。
栗林さんは、データ重視・規律重視・結果重視のスコアが高いので、プロジェクト・マネジメントは適職です。たくさんの人と関わる仕事なので、内向的スコアが高いことは少し不利ですが、外向的スコアがゼロでは無いので、仕事で必要な時には外向性を発揮できるでしょう。
強みでないのは、ビジョン重視と直感重視です。大きな絵を見ること、創造性、変化を起こす力、直感で行動すること、柔軟性は得意分野ではありません。どれもプロジェクト・マネジメントには直接必要ない資質なので、ご自分の強みを活かして仕事を続ければ良いはずなのですが、ここで問題が発生してしまいました。
スペックが決まっているプロジェクトをきちっと回すことが得意な栗林さんに、上司がプロジェクト自体を起案することを求めるようになったのです。上司は明らかにビジョン重視で企画立案も得意なタイプのようです。優秀な部下である栗林さんの、さらなる成長を願い良かれと思って企画力が身につくように、導こうとしてくれているようなのですが、自分の不得意エリアで勝負しないといけなくなった栗林さんは、ストレスを溜めるようになりました。
仕事のために不得意エリアを何とかストレッチして補うためには、それなりにベースがあることが成功の鍵です。企画力を支える資質の一つ「創造力」を見ると、栗林さんのスコアは5%です。100人並んだら後ろから5番め、95人がAさんより創造性において優れているわけなので、勝負するのは厳しいです。
栗林さんの現職は著名な米系IT企業で、簡単に捨ててしまうのは惜しいです。もう少し前にお目にかかれていたら、転職しないで上司と話し合うことを提案したと思います。「企画立案」を、栗林さんの仕事から外してもらう相談ができれば良かったと思います。
ただ、私がお目にかかった時点ですでに、苦手なことをするようになって1年半が経っていました。期待にそうレベルで提案ができないことが引き金になって、モチベーションが下がり、プロジェクトマネジメントの仕事自体、自分に合っていないのではと感じるまでになってしまいました。
そして、肝心な点は心が組織から一度離れてしまった人材を、とりあえず引き留めてみてもいずれ転職することになるということです。気持ちを切り替えて、栗林さんの転職をサポートすることにしました。
適職に就いている人材の転職が決まったら、あとは向いている企業がどんなタイプかを考えることになります。Aさんの細かいデータを見ると、「慎重」「物事に控えめ」「思慮深い」のスコアが全て90%以上、安定志向であることがわかります。この変革の時代にどの企業に何が起こるかわからないと言いながら、企業サイズは大きい方が、成長段階は成長期か安定期にある方が、Aさんに向いています。業界・企業が持つスピードについては、現在、IT企業に在籍されているので早くても大丈夫です。
全く違う場を経験してみたいとのことで、ベンチャー企業に心惹かれるようでしたが、ベンチャー企業では柔軟性と決断力を活かした機動力が求められるので、転職先候補から外すことをアドバイスしました。
適職に就いているのに、環境の変化や人間関係で転職を考えるようになるケースがあることは残念です。転職を決める前に、辞めたい理由を分析してみましょう。本当に転職すべきなのか、現職で仕事の中身を見直したり、異動することで解決できるのかを冷静に見極められると、無為に転職回数を多くしないですみます。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。