Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマはアサーティブネスです。
アサーティブネスとは、相手の立場の上下に関係なくリスペクトを持ちながら、自分の意見や主張を上手に伝えることができる力を意味します。人前で自分の意見を言うように教育されない日本人には苦手な人が多いです。
アサーティブネスが足りないと、どうなるか。実例を2つ挙げます。
何年か前に、某大学の博士課程で異文化理解についての授業をしたことがあります。学生さんは100人ぐらいで、うち5人が海外からの留学生でした。
エクササイズをした後に「どんなことを思いついたかシェアしてくれる方いますか」と聞いてみたところ、日本人からは手があがりませんでした。1番乗りは中国人、2番目がベトナム人で3番目が韓国人の学生さんでした。
その場の少数派であるアジア人の彼らが、人前でなんとか話すことができるのに、ここではマジョリティーの日本人が誰も手を上げられない現実はショックでした。英語のレベルは皆さんほとんど変わりがなかったので、語学力は理由になりません。国の教育方について珍しく真剣に考え込んでしまった出来事でした。
そういう私も24歳の時、初めてニューヨークに出張した時に大失敗しています。アメリカの東海岸にあるNYは非常に早口なのですが、事前に知りませんでした。会議に参加したものの、ほとんど聞き取れず、しかもすごい勢いで討論しているのを見て怖じ気づき、一言も発することができませんでした。
英語圏の会議では発言することに意義があり、ただ座っている人は参加していないことになるので、最後の方は透明人間のような扱いをされるようになってしまいました。 誰も私とアイコンタクトを交そうとしないし、私の両脇の2人が私越しに話し合う際、私が存在しないかのような勢いで話していました。
日本でアメリカ人と毎日仕事をしていた私は、a) 駐在員の英語はネイティブレベルのスピードではなく遅いこと b) アサーティブネスを何としても身につけなければいけないこと、を学んだ良い機会となりました。
先ほどの会議については、慣れないうちなんとか切り抜ける手として二つ考えられます。
1. “I agree.” とタイミングを見て挟む
反対意見を述べるのはかなりの英語力が必要なので、誰かが自分が同意できる意見を言ったときにすかさず “I agree.” と言うのです。とりあえず発言はしたことになりますし、同意する理由は必ずしも言わなくても良いので、そこでお役御免になります。高校生や大学生で英語圏に留学した友人たちが、最初のころ何とかこれで切り抜けていたそうなので実践的です。
2. オープニングを整理する
英語圏はアサーティブな人が多く、合っていてもいなくても、自分の意見を言いたい人が多いことを利用するアイディアもあります。冒頭で、今日のアジェンダをまとめる、前回もあった定例会議であれば、簡単に何を話したのかまとめる役を買って出るのです。この時、英語力に自信がなければ、ホワイトボードを用意してそこにサマリーや図を事前に書いてしまい、会議が始まったら書いてあることを見ながら話すという英語ネイティブでない人にとって少しは楽なやり方もあります。
外資系でやっていくのであれば、このアサーティブネスは身につける必要があります。
現在、日系企業勤務であれば、自分の意見を突然言い出すと浮いてしまいそうなので、ギアチェンジできるようにしたいです。日本人といる時は出る釘にならないようにしつつ、外国人と一緒にいる時や、外資で仕事をしているアサーティブな日本人と一緒にいるときは、自分の主張・意見を発信できるように練習するのです。自動的にはアサーティブにならないので、積極的に機会を求める努力をしたいです。
身に付くまでに少し時間がかかるかもしれませんが、外資系で仕事をするにあたっては必須のスキルなので、強く意識して学びたいです。習うより慣れというわけで、外資に飛び込んでしまうという荒療治も大いにありです。頑張りましょう。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。