Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
転職活動中なのに、応募した企業から返事がないと焦っている方、外資系企業はそろそろ採用活動スローダウンのタイミングを迎えているので、慌てるのはエネルギーの無駄使いになります。
応募されているポジションの高さにもよりますが、最終決定権を持つ駐在員がHome Leaveというクリスマス休暇を取るタイミングなので、採用は動かない時期に入っています。返事がないことイコール「お断り」ではないので、客観的に状況を眺めましょう。
キャリア・カウンセリングをさせていただく時に感じることが多いのが、「企業からのお断りで凹む方が多い」です。お気持ちはもちろんわかります。人間の心理としては、できれば自分から断りたい、相手から断られると自分を否定されたような気持ちになると思うのです。ただ、企業には入社してみないとわからないことは山のようにあるので、本当にそんなに凹むほど良い話なのか、良い話に「見えるだけなのか」は別問題です。
面接の時には素晴らしい上司に見えた面接官が、入社したらやりにくいボスに変身することはありますし、ボスはよくても同僚に意地悪な人がいたらそれだけで憂鬱な職場に様変わりします。入ってみたら経営状況が右肩下がりだったなんてこともありえます。「もし入社したら」は結構あてになりません。ご縁がなかった会社のことは、スパッと気持ちを切り替えて忘れ、「次行こう、次」にした方が賢明です。
かつての私の実体験をここでシェアさせていただきますね。ある時、私はY製薬の人事本部長職に応募しました。一次面接でお目にかかった経理部長は非常に感じの良い方でしたし、仕事の中身も面白そうで、通勤も短く今までと同じく車通勤が可能で素敵な和風のオフィスと、何から何まで良いように私には思えました。「良い候補者だと思いますが、転職回数が多い」というまっとうな理由で、2次面接に呼ばれなかった時は、かなり凹みました。
気持ちを何とか切り替えて転職したのですが、それから3ヶ月後、日経新聞の見出しに「Y製薬 買収」の文字を見た時は卒倒しそうになりました。買収したのか、されたのか、早く確認したくて活字をものすごい勢いで追ったのです。二つの会社が一つになる時、どのファンクションの本部長も二人は要りません。特殊なケースを除き、買われた方が職を失くすのが常識です。
答えは、買収「された」でした。私の安堵と言ったら、活字にするのは難しいほどでした。やっとの思いで転職したと思ったら、買収劇でまた転職しないといけないのでは、心のエネルギーも体のエネルギーも大変です。あの時、一次面接に受からなかったことを心から神様に感謝しました。
そう言えば、人事トップのポジションの一次面接をなぜ経理本部長がしているのかを、不思議には思ったのです。でも、会社をすでに気に入ってしまったので、深く掘り下げて追及することをしませんでした。あの時求められていた人事本部長の仕事は、買った会社に移れる社員と移れない社員の整理をすることで、長い目で必要な人材ではなかったんだなと振り返ると腑に落ちます。
皆さんも、会社のJD(職務記述書)に書かれていることや、出ていらした面接官が素晴らしいとか、オフィスが素敵などの理由で、会社の見た目に惚れてしまい、本質が見えなくならないように気をつけてください。また、ご縁がなかった企業とはなくて良い理由があったと早く割り切ることは、とても大切です。
唯一、自分を見直す必要があるのは、同じようなサイズの企業、職種に応募しているのに、一次面接で落ちてしまう場合です。このケースは、必ず理由があるので客観的な理由探しを自分でするか、どなたかヘルプしてくださる方に探してもらうのが良いでしょう。
Christmas is around the corner. になりました。転職をしたいと思っている方は、スローダウンを覚悟して来年に向けての次の一手を考えましょう。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。