Global Career Guide
元・外資系人事部長、10,000人を面接した鈴木美加子です。本日は、転職活動中の気になる年収交渉についてお話します。
先日、Daijob.comのグローバル・キャリアフェアにて”外資の実態、受かる面接 “をテーマにお話させていただきました。最後のQ&Aのパートで真っ先に出たご質問は、「今の年収を正直に言わなくても良いでしょうか? 高めに言うとするとどのくらいが適当でしょうか?」でした。
まず最初に、年収を正しく伝えないリスクをお伝えしておきます。日系企業の場合は大手ほど、前年度の源泉徴収票(前年度の正確な年収が載っている)の提出を求めるので、嘘が露呈する可能性が高く危険です。外資はだいたいの場合は提出する必要がないのですが、私自身も大手の企業文化としては日本的な大手の外資に転職した時、源泉徴収票が提出物のリストの中には行っており驚いた経験が1回あります。正直に答えていたので、セーフでしたが。
リスクを踏まえた上で、転職を年収アップの好機と捉え少し高めに提示しても大丈夫かどうかは、2つの要因によります。ひとつめは、景気。世の中の景気と企業の賃上げ率は当然連動しています。外資系だけが例外なわけではないので、現在、世の中が好景気かどうかは重要な判断材料です。現在は求人倍率1.62(2018年6月時点)の比較的売り手市場なので、ある程度は強気になることが許容されると思います。
ふたつめは、あなたの現在の年収が、経験・スキル・知識を鑑みたときに、フェアな市場価格になっているかどうかです。物に適正な価格があるように、人材にも労働市場の中で適正な価格があります。企業への貢献度がまだ高く望めない人材に、高額の給与を支払う企業はありません。あなたと同じ仕事をしている人がここに3人いたとして、あなたの給与は比べるとどのくらいの位置にあるでしょうか?
たまたま不運が続き、同じ仕事をしている人より絶対に給与が安いと言い切れるなら、この転職で挽回することを考えるのは悪くないと思います。逆に、まぁそのぐらいが妥当だろうと思える給与であれば、吹っかけるのは危険です。企業には予算というものがあり、現職の方々とのバランスもあり、法外な値段を請求している人材を採用するのは、企業にとってリスクのほうが高いからです。ご本人にとっても、入社後、会社の期待値は当然上がり、最初からご自分でパフォーマンスのハードルを高く設定していることになりますので、全力疾走が必要になるかもしれません。ご自分の首を最初から絞めることにならないように注意が必要です。
大事なことですが、お金は必ず後からついてきます。外資で転職歴がない方は、外資を渡り歩いてきた方より低い昇給率の積み重ねになりがちなので、年収が低めのこともありえます。それでも、経験・スキル・知識を磨き高いパフォーマンスをあげている社員は、企業がまともであれば必ずどこかで大きく調整が入ります。「今度ディレクターに昇進させるんだけど、外から採用した人と比べて年収が低すぎないか? この機に調整できないだろうか?」とは、人事に持ちかけられるよくある相談です。
最初にお金ありきではなく、最初は「経験・スキル」を得るために努力するべきです。必ず見ていてくださる方はいます。今、上司や職場環境に恵まれないと感じても、その先の自分のキャリアを大事にして短気を起こさず、ともかくご自分に力をつける、経験値を上げることに注力してください。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。