Global Career Guide
前回のコラムでは、「外資に向いている人の特徴」についてお話ししました。今回はその続編として、「外資にはあまり向かないかもしれない人」の特徴を3つご紹介します。向き不向きに優劣があるわけではありませんが、自分の適性を知ることで、より自分が輝ける職場を見つけやすくなるはずです。
「できるだけ前例通りに進めたい」「偉い人の方針に従って動きたい」といったタイプの方には、外資は少々ストレスが多い環境でしょう。外資系は、「まずはやってみよう」「走りながら考えよう」というスタンスが基本。綿密な根回しよりもスピード感が優先されることが多く、ルール自体が存在しないケースや、途中でルールそのものが急に変更になることもよくあります。
また、外資では“結果”を出すことが何より重視されるため、プロセスをきちんと踏むことに安心感を覚える方は戸惑いを覚えるでしょう。ルールに忠実であることが目的になってしまうと、臨機応変な対応が難しくなり、柔軟性に欠けていると思われる恐れもあります。
以前、米系IT企業に日系メーカーから転職してきた人がいました。入社直後「引き継ぎのマニュアルはどこにありますか?」「前の人のやり方はどこを見ればわかりますか?」を連発して、周囲を悩ませました。 外資に引き継ぎのマニュアルがあることは、非常に稀です。前のやり方を気にしている人はたぶんいません。現状を鑑みて、一番良いやり方を自由に試して良いのが外資です。
他の部下達からクレームが上がってきて、私は彼とミーティングをしました。外資で求められる人物像の説明をして、出来るかどうかよく考えて欲しいと頼みました。3ヵ月後、彼は別人に変貌し試用期間をクリアできたのです。そもそもは柔軟な人だったのでしょう。
外資には、自分をしっかりアピールできる人が多く集まっています。アメリカ人は100の実力を120に見せ、インド人は150に見せる、そんなイメージです。その中で、「謙虚で控えめであること」を大切にする日本的な美徳を守っていると、実力があっても埋もれがちです。
以前、キャリア相談をしていた方に「英語はおできになりますか?」と尋ねたところ、無言で返答がなく私はてっきり苦手なのだと思いました。しかし念のため「TOEICのスコアなどをお持ちですか?」と聞くと、「960点です」と言われて驚きました。これ、非常にもったいないです。
このような場面では「ビジネス英語に問題はありません。TOEICは960点です」と、堂々と言えるくらいで丁度良いのです。遠慮して伝えない=スキルがない、と思われるのが外資の世界。実力があるなら、それをきちんと伝えることも仕事の一部です。能ある鷹は爪を見せる必要があります。
外資で働いていると、予想外のことが日常的に起こります。そして、そのたびに「日本人ならこうなのに」と比較してしまうと、かなりのストレスになります。相手は日本人ではないのですから、日本の基準で測っても仕方ありません。大切なのは、多少の違和感には目をつぶる“鈍感力”です。
例えば、自分は時間厳守で納期も絶対に守るタイプだったとします。でも、海外の職場では「時間」や「締め切り」に対する感覚がバラバラ。平気で30分以上遅れてくる同僚、締め切りに間に合わないのが普通というチームメンバー。そんな環境も珍しくありません。
このような状況で、いちいち目くじらを立てていたら、こちらの胃がもたなくなります。相手を変えようとするより、自分の受け止め方を変える方が楽です。例えば「この人は納期を守れないタイプだ」とわかったら、最初から締め切りを大きく前倒しで伝えるなど、工夫することも大切です。
外資でうまくやっていくには、「ルールに縛られず、柔軟に動ける」「自分を言葉でしっかり伝えられる」「文化の違いに毎回ストレスを感じず、流せる余裕がある」が求められます。すべてを完璧にこなす必要はありませんが、こういった姿勢が自然に取れる方は、外資でのびのびと活躍できる可能性が高いでしょう。
反対に、これらの要素にストレスを感じそうだとしたら、それは外資が向いていないというより、自分にとってもっと心地よい環境は他にある、というサインです。次回の転職活動をスタートする前には、職場環境と自分との相性をよく分析して自分にとってベストな転職先を探してください。この外資に向いているかどうかについては、次のキャリアフェアで詳しくお話ししますのでお楽しみに。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。