Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。今回のテーマは、外資系で求められる英語力です。
英語を使いたいので外資系に転職したいという方も多いでしょう。実際にどのくらいの英語力が求められるかは、ポジションのグローバル度(海外や外国人との仕事が多い)、ローカル度(日本国内、日本人との仕事が多い)によって異なります。
まず、グローバル100%に近い仕事ですが、わかりやすいのは、外資系の日本法人の社長クラスです。上司が海外にいて、頻繁にメールを送り、電話会議をして、出張もあります。同僚は各国の責任者なので、当然英語でコミュニケーションすることになります。日本法人でも直属の本部長には何人か外国人がいるので、英語の使用率はかなり高く、TOEIC900点以上が必要です。
他には、ITがグローバルで運営されている企業のエンジニアは、インド、中国、オーストラリアのエンジニアがプロジェクトを組んでいるなどということも多いので、役職に限らず同等レベルの英語力が必要です。
次に、グローバル度が少し下がって80%くらいの場合。
TOEIC800点以上が必要になるのは、社長の直属の部下の本部長クラスです。外資系はマトリックス組織といって、例えば、経理部長なら、日本法人の社長と経理のアジアパシフィックの責任者の両方にレポートしていることが多いです。この経理部長は、日本法人の社長が日本人だったとしても、もう一人の外国人にレポートしなければいけないので、ある程度英語ができる必要があります。
事業部長でなくても、マーケティング・マネージャーにも同じようなレベルの英語が求められる可能性はあります。上司が外国人の可能性はありますし、本社からロゴやフォントの使用に関するマニュアルが届いたら、それを読んで、不明点を問い合わせたり、直接、海外とやり取りしたりする可能性があるからです。
事業部長にレポートする部下の層は、TOEIC700点くらいあれば大丈夫です。仕事のメインは日本人相手に行っているからです。もちろん、役職に関わらず、仕事で海外との関わりが頻繁にあるのであれば、TOEIC800点くらいは必須になります。 英語で降りてくるメッセージが読めて、会社の方向性がわかることが肝心、自分自身が英語で発信したり、会議に参加したりする必要がない場合は、TOEIC600点くらいでOKです。職種でいうと、国内セールス、エンジニアになります。海外セールス・海外プロジェクトに参加しているエンジニアは、前出のとおり高い英語力が必要です。
物流・製造の現場スタッフは、英語力がなくてもなんとかなりますが、マニュアルが英語で書かれていることは多いので、リーダー的な存在の方は英語を読む力は求められます。
一概に職種で求められる英語力を語れない時代に突入しています。自分のポジションでどのくらい英語を必要とされるのかは、確認が必要な項目です。
英語に関する別の切り口ですが、「読む・書く・話す・聞く」力のうち、どれが重要かについてもお話しましょう。
役職に関係なく、職場でメールのやり取りは発生するので、英語の読み書きは、現場スタッフ以外は必要です。上司が外国人になったり、同僚にも外国人がいる環境になったりすると、話す力が求められるようになります。昇進して、電話会議に参加するようになると、早口のネイティブスピーカー、アクセントのある各国担当者の英語を、聞き取る力が必要です。
昔は、役職で求められる英語力がほぼ読めましたが、現代は、どのくらい海外とのやり取りが発生するのかが、重要なポイントになりました。すべてのポジションで高い英語力が必要なわけではないので、ひるまずチャレンジしてください。
最後に、面接では、どのくらいの英語力が必要なのかをぜひ確認してください。知り合いにTOEIC850点を持つ日本企業にしか勤務したことがない人がいます。経歴を見れば会話力は疑わしいと思われるべきところですが、なぜか英語での面接がなく合格しました。おめでたい出来事ではあるのですが、入社してからアジア・パシフィックの会議に参加して議事録を取る仕事を、胃がキリキリする思いをしながらやっています。そもそもよく聞き取れていない英語での会議の、議事録を取るのは至難の技です。今のところは入社したばかりなので、同僚が助けてくれているようですが、外資はドライな一面を持つので未来永劫、他の人がやるべき仕事を手伝ってくれるとも思えません。大慌てでオンライン英語を始めていますが、前途多難です。
転職後に、高い英語力を実際は使えないとわかったり、想定外に高い英語力を求められたりしてもストレスのもとになるだけなので、入社前によく確認しましょう。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。