Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。自分で悩んでもなかなか解決しない仕事がらみのお悩み事、皆さんどうされていますか? 今日は、先輩からアドバイスを上手にもらうコツについてお話しましょう。
一人で悶々と悩んでいても解決策が思い浮かばない時、周囲にいる上司、同僚、部署が違う先輩に相談を持ちかけるのは良いことです。自分で考え続けて堂々巡りしてしまうような場面を、客観的に判断してくれる他者がいてくれることはありがたいことです。相談される方も、頼りにされていることに悪い気はしないでしょう。
相談相手が上司でない場合、気をつけたいことが2点あります。相談相手の国籍に関係ないちょっとした気配りです。
ひとつめのコツは、“最終的にどうなったのかを報告する”です。まずは私の失敗談をシェアします。初めて人事本部長になり、部下の人数も責任範囲も急に大きくなった時、今までと勝手が違うことが多くなり、在籍年数が長く経験値の高いある本部長に色々お尋ねごとをしていました。私も手いっぱいだったのか、相談に乗っていただいた上で最終的にどう判断しどう解決したのかを、ご報告するのをなんとすっかり失念してしまいました。しばらくして、「ミッキーさんは質問だけして、どうなったかの報告が無い人なんだよねぇ」とおっしゃっているという噂が聞こえてきました。悪気は全くなかったため真っ青になった私は、お詫びに出向きそれ以降お尋ねごとをする際には、必ずその後どうなったのかをお伝えするようにしました。考えてみれば、ずいぶん失礼なことをしてしまいました。
逆の立場になったこともあります。本社から派遣されて来たエクスパット(駐在員)のカナダ人が、彼の部署の部下から判断を求められた時、日本文化・商習慣をどのくらい考慮すべきかをそのたびに聞かれました。日本をわからない状態で、決断を下さないといけない彼の立場も大変だろうなと思いましたし、私は人事の責任者なのでその都度、答えられることは答えていました。だんだん相談される回数が多くなり、違和感を覚えるようになり、最初は頻繁に聞かれるのが面倒になってきたのだろうかと考えました。自他ともに認める面倒見良いタイプなのに、どうしたんだろうとよく考えてみたところ、最終的にどうなったのかがわからず一方的にただ質問だけされていることが原因のように思いました。以前、私自身が先輩にしてしまったことの、全く逆をされる側になって初めて気持ちがわかったという訳です。
私は外資勤務が長くなり新人時代よりだいぶストレートなコミュニケーション・スタイルになっていましたし、相手はカナダ人でローコンテクストの明確なコミュニケーションをよしとする文化出身なので、率直に話してみることにしたのです。「日本の文化・習慣・マネジメントスタイルについて聞かれることは、海外にいることを認識して仕事をしたいというあなたのプロ意識を表していてリスペクトしています。ただ、最終的にどうなったのかわかるともっと良いアドバイスの仕方はなかっただろうかと自分も考えられるので、どういう結末になったのか教えてもらえると嬉しいかな。」同僚は、以前の私のように悪気があったわけではなかったので、「ごめんごめん、次からそうするね。」で話は終わりました。
先輩からアドバイスをもらう時のコツのもう一つは、“相手のアドバイスを一旦は素直に受け入れてみる”です。逆を言うと、ご自分の意見が強く、結局他人の意見を聞き入れるつもりがない方は、アドバイスを求めること自体をやめたほうがいいかもしれません。
知り合いのお嬢さんに転職の相談をされたことがあります。お世話になった方のお嬢さんだからと、私は自分にできる限りを尽くしてアドバイスさせていただきました。結局、アドバイスした意味がない方向に進まれたとわかった時も、「お若いから、試行錯誤されたいのだろう」と気にも留めませんでしたが、同じことがもう1サイクル起こった時は、さすがに双方の時間の無駄だと感じてしまいました。相談するということは相手にも時間を使わせることなので、納得できるまで話し合って少しはアドバイスを取り入れてみるのが礼儀かもしれません。もしくは、ご自分の道を行くと決めて最初から他人の意見を求めないか、どちらかした方がよいかもしれません。
職場で、あなたの育成に直接責任が無い方にアドバイスを求めた時は、最終的に話はどうなったのかを報告して、さらによい関係を築き「ここぞ!」という場面で助けてもらえるようにフォローしておきましょう。相談を受けるということは、相手に時間とエネルギーを使っていただくことを指します。相手のアドバイスをオープンに受け止める気持ちを持って、相談に行きましょう。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。