Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。本日のテーマは、英文メールを書くときのコツです。英語でメールを書く必要がある時、いきなり書き始めていませんか?その前に以下の内容についてまとめてからにすると、相手に最後まで読んでもらえるメールが書けます。
相手の役職と、メールの宛先が国内・海外のどちらなのかは重要です。
a) 相手の役職
マネージャーとディレクターでは、1日に受け取るメールの数と、どの程度詳細な情報に興味があるかが変わってきます。昔、グローバルの会議に参加するため、シリコンバレーに出張し、帰りにサンフランシスコ空港でこれからロンドンに発つGlobal HRのVP(Vice President)と一緒になったことがありましたが、「しばらくメールを読んでないから、読ませてくれ」と読み始めた彼の横にいられたのは学びでした。本人は「読む」と言いましたが、実際は「タイトルの斜め読み」で、10通に1通くらいしか開いていませんでした。
彼の場合は、秘書の方がメールに全部目を通す仕組みになっているので、大事なメールは漏れないという安心感があるのかもしれません。それと彼のルールは、自分宛(To)ではないCCは一切読まないということです。リスク・ヘッジでCCする方は多いですが、相手もそれはわかっていて読まないのでご注意を。送ったメールが全て読まれていると思ったら、目算が外れます。
立場によって人の視座の高さは変わるので、ディレクター宛に内容が細かすぎるメールを打つと「できない人」と思われるリスクがあります。
以前、メンタルヘルスの複雑な状況を前出の親分に説明するメールを書いた時、かなり考えたのは、「どのレベルの詳細を書くべきか」「相手は何を知るべきか」です。「自分が何を書きたいか」を中心に書くと、細かすぎるメールになる可能性が高いからです。特に忙しいエグゼは長いメールを嫌うので、なるべく簡潔にすることを心がけてください。
b) 相手は国内にいる?海外にいる?
これも大きな差で、相手がどの程度日本の事情を理解しているかに直結します。海外にいる人に、日本市場の現況・日本人の好み・日本の労働基準法などを理解していることを期待するのは、無理というものです。中途半端に説明すると、相手は疑問に思って深堀りして聞いてくるのでやり取りが長くなります。説明するなら、一回で相手にわかるように書きたいものです。
理想は、海外にいる上司・同僚の信頼を初期段階で勝ち得て、「日本のことは◯◯に任せておけば大丈夫」という信頼関係を早く構築できることです。そうすれば、いろいろ説明しないで済みます。
メールの最後をどう締めくくるかは、部署によります。文化に関係ないテクニカルなことを話すなら、”If you have any advice, please let me know.” で大丈夫です。私は人事にいた頃、日本での社員の扱いは本社とは全く違うので、うかつに意見を聞いて「辞めてもらえないの?」と言われないよう、”I will keep you updated on any progress in the future.” と書くことがほとんどでした。
タイトルは重要です。相手の役職が上の場合、あなたのメールが読まれるかどうか、それで決まる可能性が高いです。相手の立場に立って、内容を確認しようと思わせるタイトルにすることが重要です。先程のメンタルバランスを崩した社員の例を取ると、自分目線だと”Atsushi Kobayashi in Engineering Division, Japan”と書きたいかもしれません。受け取る人の立場に立つと、まず冒頭の外国語の名前が読めないことになります。次に、相手にとって社員の名前は重要でしょうか? 3つめに、その人がどうしたのかがこのタイトルからはわかりません。
読み手がわかりやすいのは、例えばこんなタイトルです。
“Mental health issue : a newly-hired engineer”
メールを書いているのは、複雑なメンタルヘルスの問題が起きていることを報告したいからです。社員の名前は相手にとってこの段階ではどうでも良く、「採用したばかり」の社員だということの方が遥かに重要です。英語の”Problem”は炎上した問題のようなニュアンスを持つので、”Issue”の方が相手が目にした時に心穏やかです。
たくさんのメール/メッセージが飛び交う現代、相手に読んでもらうためには
・相手の立場に立ち、相手が知るべきことだけを伝える
・ロジカルに短く書く
の2点がとても重要です。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。