Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日は、ホフステード異文化モデルのIVD(Individualism)個人主義 vs 集団主義についてお話します。
この軸は比較的理解しやすいかと思います。個人主義では「私」が重要で、コミュニケーションもはっきりと明確なことが多いです。人間関係よりも仕事が優先されます。集団主義では、「私たち」が重要で、コミュニケーションは暗黙のうちに行われそのグループに属していない人にとっては分かりにくいものとなります。仕事より「和」や人間関係が優先されます。
日本のスコアは、1から100までで幾つくらいだと思いますか? 日本のスコアは46です。比較すると、非常に集団主義でも個人主義でもないのです。なんとなく腑に落ちない方もいらっしゃるでしょう。もっと集団主義なのではないかと思われる方は、日本人がプライバシーの尊重にうるさいこと、他のアジア人から見ると親しくなっても意外に本音を語らないように見えることなどを思い出してください。いやいやもっと個人主義なのではと思われる方は、会社へのロイヤリティが高く、属している集団の利益を第一にすること、「和」を乱さないことへの執着心を思い出すと、なるほどと納得できるかもしれません。
世界を見渡すと、集団主義の国の方が多いです。ほとんどのアジア、南米、アフリカの国々は集団主義の傾向が高いです。大雑把に言うと、世界の経済をリードしてきた欧米の国々が個人主義の傾向にあるというのが全体像です。
具体的にどのような衝突が起り得るかを見てみましょう。一昨年、ある講座を受講していた時のことです。参加者は全員が日本人、神戸からと名古屋から参加されている方々がいらっしゃいました。途中で宿題のために最低二人がペアになる必要があった時、東京組のメッセージのやり取りを見て「在東京でない人たちが仲間外れにされている気がします。もう少し配慮があっても良いのではないでしょうか」と書き込みをされた方がありました。典型的な集団主義で、やるからにはみんな一緒にやるのが良いというお考えかと思います。私は外資に25年もいた人で、この軸に関しては完全に個人主義なので、「必要なものは自分から積極的に取りに行けば良い。自分が在東京組でなかったとしても、この状況で仲間外れにされたとは100%思わない」人です。とりあえず様子を見ていたところ、「それは申し訳なかった」とお返事をされている方が出てびっくりしました。正直驚きました。個人主義の私から見ると、「ペアを探せば良いのだから、この人と思う方にアプローチすればいいだけ」のように思えるからです。事を荒立ててもしょうがないと判断し、黙っていたところがまだ日本的だったかもしれません(笑)個人主義と集団主義の価値観が、ズレを生む典型的な例です。
もともと個人主義度が高い国出身、もしくはビジネスをする相手国と比較して個人主義度が高いサイドの国出身だと、集団主義の心理を甘く見てしまうことがあるので要注意です。
例えば、タイの現地法人で朝の出勤時間が守られないことに業を煮やした新しい日本人の社長が、状況を改善させようと、時間厳守のビラを配布したり、ゲートのところにマネジャーを立たせたりしました。あまり効果が出なかったので、ある日、最も出社が遅かった社員を人前でこっぴどく怒りました。集団主義のコミュニティで、誰か一人を良くないことで目立たせてしまうのは賢くないばかりか危険です。そもそもは大きく遅刻した社員(彼)が悪いのですが、彼に対するマネジメントの態度がひどいと、みんなが思い込む集団心理が働き始めてしまいます。いろいろもめた後、遅刻した社員が辞め、憤慨した仲間が一人二人と辞め連鎖が止まらない状況になってしまいました。マネジメントも今さら謝るのも変ですし、どうしたら良いのかわからないという事態を招いてしまったのです。「集団主義」の怖さを甘く見たと言えます。
どの国がどのくらいのスコアなのか関心がある方のために、具体的な数字を挙げておきます。個人主義の色濃い国は、アメリカ91、イギリス89、ドイツ67、フランス71、オーストラリア90です。集団主義の傾向が高いアジアの国は、中国20、マレーシア26、フィリピン32、シンガポール20、韓国18、台湾17などです。スコア46の日本とだいぶ離れている国もあります。ビジネスの場で判断をする時に、相手の国の立場に立てているかを見直す癖をつけることをお勧めします。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。