Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、ビジネス英語は流暢さではなく中身で勝負です。
日本人は、中学・高校・大学を合わせると合計で8年間英語を勉強していますが、英語を話せるようにならないことは大きな悩みです。英会話力アップを妨げるのは、日本人が教育の過程で身に付けてしまう完璧主義です。人前で恥をかきたくない、英文法でミスしたくない、そんな風に最初から完璧を目指すので、英会話がなかなか上達しません。「とりあえず通じれば良い、大事なのは中身」となかなか思えないのです。
日本人の国民性を、ホフステード異文化6次元モデルで説明します。世界の文化を6つの指標で分ける考え方なのですが、そのうちの2つの指標の掛け算が日本人を完璧主義にしがちです。
1. 男性性 VS 女性性
単語のイメージにあまりとらわれて欲しくないのですが、簡単に言うと、男性性とは秀でる事が大事で対立することを避けません。働くために生きているようなところがありますし、社会で成功することが重要です。社会の弱者は努力が足りないと考えがちです。女性性とは、QOL(Quality of Life)をより大事にする文化でコンセンサス志向です。生きるために必要なだけ働き、それ以外の時間は家族や友人と過ごすのが当然と考えます。弱者に対して思いやりがあります。
0から100の尺度で、日本人は男性性95で世界でも3本の指に入る男性性の高さです。道を極めるのが得意ですし、優れている自分でありたいという自己欲求が高いです。ちなみに女性性が高いのは北欧の国に多く、ワークシェアなどで労働時間が下がっても家族との時間が増えることを良しとして、福祉も充実しています。
英会話の話に戻ると、「適当に話せばいい」「通じればいい」となかなか思うことができないのはこの男性性の影響が大きいです。英会話力がそれなりのレベルにないと人前で話すことを避けたい気持ちが強くなるからです。誰にも最初の一歩があり、一歩を踏み出さないと前進しないので「最初からペラペラでなくて大丈夫」と自分に言い聞かせること、他人の目を気にしすぎないようにしましょう。
2. 不確実性回避
不確実性回避とは、将来が見えないこと推測できないことを避けたい度合いを指します。平たく言うと、石橋を叩いて渡らないのか、それとも多少不安でも「えいや」と石橋を叩かずに飛ぶことができるのかを表しています。日本人のスコアは92で、グローバルでもかなり高い水準で「石橋を叩く」国民性です。今までやったことがないことにチャレンジできる人は少ないことになります。もちろん個人差は常に存在しますが一般論です。
外国人との異文化コミュニケーションは、想定外の連続です。今までの日本人としての常識が通じないことも多く、その中で自分にとって外国語である英語を話さなければいけないわけなので、ストレスレベルはさらに上がります。つい聞き役にまわっていることありませんか? 無意識に不確定な状態を避けているのです。
男性性と不確実性回避度がかなり高い日本人が、人前で英語を話すことをためらいなかなか英会話が上達しないのは当たり前のようにも思えます。ただグローバルな舞台で活躍するには、その壁を乗り越える必要があります。英語はビジネスにおけるグローバル公用語だからです。
先日、ニュージーランド帰りのバリスタがいるカフェで、スペイン人の観光客数人と英語で会話をしました。正直、スペイン語訛りがかなりあり、文法も所々「あれ?」という感じでした。でも彼らは全く気にすることなく、堂々と会話をしていて見事でした。会話の流れでスペインの話になり、母国の文化についてなんとか英語で説明できる彼らを尊敬しました。コミュニケーションに支障はなかったので、大事なのは「コミュニケーションをとりたい」と言う気持ちなんだなぁ、とつくづく再認識しました。つくづく大事なのは中身ですね。何を話せるのかの方が、英語力がどのくらいあるかより大切だということです
英語力を上げていきたい方、これから外資で活躍したい方、臆していては道が拓けません。完璧主義を手放しましょう。日本語のアクセントがあろうと、英文法が多少間違っていようと通じればいいのです。自分に対するハードルを少し下げると、ビジネス英会話はよりスムーズに楽しくなります。頑張りましょう。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。