Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。本日は、異文化についての新書をご紹介します。
出版されたばかりの本で、ドイツ人が他人の目を気にせず自分のために生きていることを、ドイツに移住して20年以上になるキューリング恵美子さんが解説しています。
まず自己肯定感に関するデータですが、以下の結果となっています。
Q1. 私は自分自身に満足している
ドイツ人 81.8% 日本人 45.1%
Q2. 自分には長所があると感じている
ドイツ人 91.4% 日本人 62.2%
Q3. 自分は役に立つ人間だと感じる
ドイツ人 68.2% 日本人 48.2.%
世界でも最たるハイコンテクストの空気を読む文化の中で、周りからの評価を気にして高みを目指すと、自分に満足できない人が生まれます。自分に自信が持てなかったり、生活水準への期待値がとても高過ぎると、幸福度が低くなりがちになることを思い出させてくれる一冊です。
ドイツ人が他人の目を気にしないのは、女性が日常的にノーメークなことにも表れるとのこと。ドイツ人は自己肯定感が高く、「自分の好きなもの」「自分にとって大切なもの」を知っているので、メークしたくないと感じる時には「すっぴん」で全く気にしないそうです。他人の軸に振り回されない「自分軸」を持っている国民性なのですね。
ワーク・ライフ・バランスで言えば、休暇のために仕事をしているドイツ人の生産性はGDP69.8 ドル(約7,678円)、日本人の47.5ドル(約5,225円)と比べて1.5倍近く高いです。1日8時間労働だとして、日本人がドイツより年間44日も多く働いていることを知ると、本当に働き方改革を進めないと何のために長時間労働しているのかわからないという危機感を持ちます。
ドイツは、ホフステードの異文化モデルで言うと「油の効いた機械」のファミリーに属します。秩序を求める国民性で、「専門性」「スペック」「品質」などがキーワードになる文化なので、職場は専門家集団でジェネラリストは評価されません。専門家が合理性を追求して仕事をすると、自ずと生産性が高くなるのでしょう。
世界でも名だたるハイコンテクストの文化で、ものを明確に言わないと聴き手に伝わらないドイツでは、プレゼンテーションが小学校1年から教育に組み込まれています。自分で調べる習慣をつける、人前でわかりやすく説明できるようになる、質疑応答に対処できるようになること全てが、ドイツの教育の要と書かれています。人前でのプレゼンを子供の時から学ぶのはドイツだけでなく欧米では多いことで、自分の意見を主張するように育たない日本人は、後付けでプレゼンをかなり真剣に学ぶ必要があると腑に落ちました。
この本の良いところは、ドイツだけを絶賛してないところです。ドイツの良いところを取り入れて時間のゆとりを生み出し、日本人のQOLを上げられたらと心から願って執筆している筆者の想いが伝わります。
ドイツという切り口に関係なく、パンデミックでしばらく海外に出られず、自分を解放できない閉塞感を持ち始めている方にお勧めです。「何のために働くのか」「自分にとって幸せとは何か」を振り返ってみませんか。
私は読みながらオーストラリアを思い出し、自分が他者の目を気にする状態に戻っていること、少し気疲れしていることに気がつくことができました。
キューリング恵美子著
小学館新書
目からウロコのドイツ流「最強メンタル術」
現地在住20年を超える著者が、ドイツで学んだ“ストレスフリー”生活の極意を解き明かす――。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。