Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。ここ数ヵ月の研修を通して感じている、グローバル人材にとっての必須スキルを本日のテーマとします。
グローバルに仕事をするには英語力が最も大切のように誤解しがちですが、必須なのはアサーティブネスです。 そもそもアサーティブネス(Assertiveness)とは何でしょう? 自分の意見や感情を尊重しながらも、率直に伝えるコミュニケーションスキルがアサーティブネスです。自己主張をしながらも他者の意見や感情を尊重し、対話を通じて建設的な関係を築くことができます。特に、グローバルなビジネス環境では、異なる文化や価値観が交わる中でこのスキルの重要性が増します。具体例を挙げましょう。
ある研修の参加者に、TOEICでいうと400点くらいの英語力の人がいました。一般論で言えば英語力は足りていないことになります。ただ彼はコミュニケーションを取ろうという意欲が非常に高く臆せずどんどん発言することができます。彼の左隣はTOEIC850、右は800点という席でも、ひるむことなく一番話しているのは彼であることは見事でした。
他の研修の参加者に、間違いなく留学していると思われる英語に全く問題ない人がいました。どちらかというと内向的なのかそれとも完璧を求め頭の中で組み立ててから話したいタイプなのか、ほとんど発言がありません。意見を述べたり質問したりしないとチームに貢献していると見なされませんし、肝心の本人の実力が残念ながらほとんど見えませんでした。
グローバル人材というと英語力が最初にありきのように誤解されます。冒頭の繰り返しになりますが、一番大事なのはアサーティブネスです。上記の2人の例でも明らかなようにアサーティブでないと相手に伝わらないからです。
特に異文化間でのコミュニケーションでは、曖昧な表現や遠回しな言い方が誤解を招くリスクがあります。アサーティブなコミュニケーションを取ることで、こうした文化的な違いを乗り越え、相互の理解を深めることができます。例えば、直接的な表現が好まれる国と、控えめな態度が重んじられる国がある中で、アサーティブネスは、その中間を見つける手段となります。
1. 異文化間での会議や交渉
グローバルな環境では、各国の文化や慣習によって、意見の伝え方や議論の進め方が異なります。例えば、ある国では意見を率直に表明することが重視される一方、別の国では控えめに振る舞うことが求められたりします。アサーティブネスを活用することで、どのような文化でも対立を避けつつ、意見をしっかりと伝えることができます。
2. リモートチームのマネジメント
現在、多くの企業が国際的にリモートチームで業務を進めています。このような状況では顔が見えない分、意見を明確にし誤解を避けるためのアサーティブなコミュニケーションが重要になります。アサーティブに意見を述べることでリモートでもスムーズな協力が実現します。
3. 多国籍チームでのフィードバック
異文化環境でのフィードバックは、文化的背景によって受け取り方が異なるため、注意が必要です。アサーティブにフィードバックを行うことで、相手を傷つけずに建設的な改善を促すことができます。 日本人は減点主義でダメな点だけを伝えがちなので、相手の文化的背景を考えて伝え方を変えられるのが理想です。
1. 文化的背景を理解する
各国の文化に対する基本的な理解を持つことで、相手の反応を予測し適切なアプローチを選ぶことができます。
2. 明確かつ丁寧に伝える
アサーティブなコミュニケーションは、明確さと配慮のバランスが鍵です。言葉を選びつつ、自分の意図を誤解なく伝えることが大切です。
3. 相手の意見を尊重する
自分の意見を述べた後は相手の話をよく聞き、互いに歩み寄れる解決策を探る姿勢が必要です。
グローバルな環境でアサーティブネスを発揮することは、異文化間の理解を深め、信頼を築くための重要なスキルです。これにより、ビジネスの成功に繋がる協力関係を構築できます。日本の教育の過程でアサーティブネスは、残念ながら育成されないので自ら習得する努力が必要です。周囲の日本人上司や同僚でアサーティブネスが上手な人がいたら真似をするのも良い方法です。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。