Global Career Guide
外資系企業で働くことは、グローバルな視点で仕事に取り組めるなど、多くの魅力があります。しかし、長時間労働や昇進競争の激しさによるストレスなど、厳しい環境に置かれる方も少なくありません。また、いざ退職を決意した場合でも日本企業とは異なる退職の流れや手続きなどに戸惑う方も多いでしょう。この記事では、外資系・グローバル企業の退職理由、退職を決めたときの準備、退職後のキャリアパスなどについて解説します。
外資系・グローバル企業を退職するためにはきちんとしたステップを踏もう
外資系・グローバル企業の退職を考える理由は多岐にわたります。
● キャリアアップ・新たな挑戦
● 企業文化や価値観の不一致
● 組織再編や突然の解雇リスクへの不安
● ワークライフバランスの改善
● より専門性を活かせる職場への挑戦
外資系企業は流動性が高く、働いている人たちはよりよい条件や挑戦的な職務を求めて転職することが一般的です。また、外資系企業は成果に応じた評価や報酬が与えられる成果主義であることがほとんどです。そのため、日本企業とは異なる評価システムや業績主義に馴染めないと感じることもあるでしょう。さらには突然の解雇リスクへの不安や急な組織再編なども退職を考えるきっかけに。
一方で、外資系企業での経験を活かし、さらなるグローバルキャリアの構築や、起業へのステップとして退職を選択する人も少なくありません。このように、個人のキャリアゴールや価値観に基づき、外資系やグローバル企業の退職を考える場合があるのです。
外資系企業・グローバル企業の退職事情は日本企業と異なる場合があります。ここでは外資系企業の退職事情について詳しく見ていきましょう。
外資系企業では、日本企業に根付いている「終身雇用」の概念はほぼ存在せず、代わりに「随意雇用」の考え方が主流です。これは、社員が自由に退職でき、また会社も理由を問わず解雇できるということです。
外資系企業では、個人の能力や成果が重視され、それに応じたキャリア形成や報酬体系が提示されるのが一般的で、長期勤続よりもスキルや実績に基づく評価が行われます。そのため、社員も自身のキャリアを主体的に管理し、必要に応じて転職するのが当たり前という文化があります。
この流動性の高さが、1つの会社で長く働く人の多い日本企業との違いでしょう。
外資系企業というと「長く働けない」というイメージがあるかもしれませんが、それは必ずしも事実ではありません。
確かに、成果主義や組織再編などにより、日本企業と比較すると雇用の流動性は高いものの、個々の実力次第で長期的なキャリアを築くことは可能です。
ではなぜ「長く働けない」という印象が生まれているのでしょうか?
それは、外資系企業の社員が自発的にキャリアアップを求めて転職するケースが多いからです。また、外資系企業はグローバルな異動や昇進の機会が多いため、同じ企業内でも役割や勤務地が変わることがあります。なかには海外への異動を打診される場合もあるでしょう。
常にスキルアップを心がけ、高いパフォーマンスを維持することで、外資系企業でも長期的に活躍し、キャリアを築くことが十分に可能なのです。
日本企業では一般的な退職金制度ですが、外資系企業では採用していないところが大半です。しかし、これはすべての外資系企業に当てはまるわけではなく、企業によって対応が異なります。なぜ外資系企業には退職金制度がないのか、その理由と退職金制度に代わるシステムについて解説します。
外資系企業の多くが本拠地とする欧米諸国では、日本のような終身雇用や年功序列の概念が一般的ではありません。その理由として、これらの国々では個人の自立と自己責任を重視する文化が根付いており、退職後の生活保障も個人の責任とする考え方が強いからです。
また、キャリアの流動性が高く転職が一般的であることも、企業が退職金制度を設けない理由の1つです。社員は自らのキャリアを主体的に管理し、退職後の資金も自分たちで準備するという文化が、退職金制度の必要性への意識をさせていると考えられます。
外資系企業では、日本企業とは異なる報酬体系を採用していることが多い傾向にあります。具体的には、月々の給与を比較的高く設定し、退職金を含めた総報酬で考えているということです。
また、成果主義に基づく報酬体系を採用しており、業績に応じた賞与やストックオプション(自社の株式を一定の価格で取得できる権利)などのインセンティブ制度を重視しています。
これにより、社員は現在の業績に応じた報酬を即時に受け取り、それを自己の判断で運用や貯蓄に回すことができます。このような報酬体系では、退職時の一時金としての退職金の必要性が低くなるのです。
外資系企業では、社員の資産形成に対する考え方が日本企業とは異なり、外資系企業の多くは社員による主体的な資産運用を推奨しています。
例えば、確定拠出年金制度を導入し、社員自身が運用方法を選択できるようにしている企業もあります。また、ストックオプションやRSU(譲渡制限付き株式ユニット)など、自社株を活用した報酬制度も一般的です。
これらの制度は、社員に資産運用の機会を提供すると同時に、会社の業績向上へのモチベーションを高める効果もあります。このような自主的な資産形成の仕組みが、退職金制度の代替となっているのです。
そしてもう1つの違いが老後資金準備についての考え方です。外資系企業に勤める人には、老後資金は報酬から貯めたり、資産運用をして増やしたりと、現役時代から少しずつ蓄えていくものという考えがあります。老後資金準備を支援する制度を導入し、社員の老後資金準備をサポートしている外資系企業もあります。
外資系企業には退職金に代わる制度があります。ここでは主な4つの制度を解説します。
これらの制度は、社員の長期的な資産形成をサポートし、会社の業績向上へのモチベーションを高める効果が期待できます。また、社員はこれらの制度を効果的に活用することで、退職金に頼らない将来設計が可能です。
退職金に代わる制度の1つ、特別退職金(パッケージ)は、組織再編や人員削減時などによって会社が社員に任意で退職してもらうために支給する退職金です。
特別退職金には再就職支援サービスなども含まれることがあります。金額は勤続年数や会社への貢献度、会社側が社員を退職させる意向の強さなどによって変動します。
企業が掛け金を拠出し、個人口座で運用する年金制度です。運用方法は社員が選択し、運用結果が将来の年金額に反映されます。
転職をする際はこの積み上げた資産を持ち越すことが可能です。
業績に連動するもので、外資系企業ではよく取り入れられている報酬制度の1つです。
短期(年次ボーナス)と長期(ストックオプションなど)があります。年次ボーナスは毎年の業績に応じて支給され、ストックオプションは将来の株価上昇による利益獲得の機会を提供します。
社員が一定期間勤続するなどの条件を満たした後、自社株の交付を受けられる権利が確定する制度です。権利確定前に退職する場合、自社株の交付を受ける権利は消滅するため注意しましょう。
外資系企業やグローバル企業などは日本企業であまり見ることがない退職の種類があります。自主退職以外にも突然ポジションがなくなることによる退職などもあるため、注意が必要です。ここでは外資系企業の退職の種類について解説します。
退職推奨は、企業が社員に対して自主的な退職を促す施策です。パフォーマンスや適性の問題、または組織再編の一環として行われるのが一般的です。
退職推奨を受けた社員には、通常の退職金よりも有利な条件(特別退職金パッケージなど)が提示されることが多く、そのなかには再就職支援サービスが含まれることもあります。また、社員には退職推奨を受け入れるかどうかを考える時間が与えられ、条件交渉の余地もある場合があります。
ただし、退職推奨を拒否した場合、その後の職場環境や評価に影響が出る可能性があるため、慎重な判断が求められます。
レイオフ(Layed off)は、企業の経営状況や組織再編に伴い社員を一時的に解雇することを指します。個人の能力や業績とは無関係に行われ、企業の経済的理由や事業戦略の変更によるものが一般的です。
レイオフされた社員に対しては、退職金や手当などが支払われるケースが一般的です。また、再雇用の可能性が残されている場合もあります。外資系企業では、レイオフを通常の事業サイクルの一部と捉える傾向があり、個人の評価には直接影響しないとされています。
ポジションクローズとは、特定の職種や部門が廃止される際に発生する雇用終了の形です。組織構造や事業戦略の変更・転換、人員削減、または業務の効率化などにともなって行われることが多く、個人の能力や業績とは無関係です。
ポジションクローズの対象となった社員には、他部門への異動や配置転換などの可能性が探られますが、適切なポジションがない場合は退職を推奨される可能性があります。その際、レイオフと同様の補償(特別退職金や手当など)を提供されるケースが一般的です。
外資系・グローバル企業で退職を決めた場合は、スムーズに退職できるよう準備が大切です。組織の中で動いているため、チームへの負担を最小限にできるよう、報告・調整・引継ぎはしっかりと準備しておきましょう。
ここからは外資系企業での退職手順について解説します。
退職を決意したら、まず退職理由を明確にし、関係者へ自分の言葉で説明できるよう準備しましょう。退職の適切なタイミングを選ぶことも大切です。できればプロジェクトの節目や業績評価期間の終了後など、業務が落ち着いたタイミングがよいかもしれません。
実業務と離れたところでは、退職金の有無や金額、未消化有給休暇の扱いを確認し、次の仕事を見つけるまでにかかるお金を計算しておきます。
また、健康保険や年金の手続きなど、退職後に必要な事務手続きのリストを作成しておくと安心です。
最初に退職の意思を伝えるのは直属の上司が望ましいでしょう。まずは上司と面談の約束を取り、プライバシーが確保できる場所で退職意思を伝えます。
退職理由は簡潔にまとめ、感謝の気持ちも忘れずに伝えましょう。現在の職場や同僚に対する不満は控えめにし、前向きな表現を心がけることも大切です。
退職の意思を伝えた際、上司から引き止めや条件のよいオファーなどが提示されるかもしれません。その場合は、なぜ退職を決めたのかを論理的に伝えることで、引き留めや手続きの先延ばしなどが避けられます。
退職意思を伝えた後は、退職までのスケジュールや引き継ぎ計画についても話し合い、人事部門への連絡や、チームメンバーへの通知のタイミングなども確認します。
上司への報告後に行うのが人事部門との調整です。人事部門への提出や確認は以下のようなものが一般的です。
● 退職願や退職届など、必要書類の確認と提出
● 退職日の設定
● 未消化の有給休暇の取り扱いや、退職金の算定方法の確認
● 競業避止義務や機密情報の取り扱いに関する規定を再確認
● 社員証や会社貸与物品の返却
これらの事項を業務の引き継ぎに十分な時間を確保しながら行いましょう。
会社が雇用契約に期限を定めていない場合、退職を申し出た日から2週間での退職が可能です。しかし、企業によっては就業規則を優先している場合が多いため、就業規則を確認し、余裕を持った退職までのスケジュールを人事部門と調整しましょう。
退職にあたって適切に引き継ぎをすることは、業務を引き継ぐチームメンバーにとっても重要です。
まずは現在進行中のプロジェクトや日常業務のリストを作成し、各タスクの状況と今後の対応方針をまとめます。まとめたものは上司と共有し、誰に引き継ぐべきかを決めましょう。
外資系企業の引き継ぎ資料は英語で作成する場合が多いため、専門用語や略語の説明も含め、わかりやすく丁寧に記述することが大切です。重要な取引先や社内の主要な連絡先リストも作成し、関係性や注意点なども記載しておくとよいでしょう。
また、引き継ぎ期間中は後任者や関係部署との面談を設定し、直接説明する機会を設けます。最終日までに、自分のパソコンのデータ整理や個人的な所有物の整理も忘れずに行いましょう。
外資系・グローバル企業の退職届は日本の一般的な企業と異なる点がいくつかあります。スムーズな退職手続きのため、以下のポイントをおさえておきましょう。
● 会社規定の確認:初めに、所属する会社の就業規則や人事規定を確認しましょう。退職届のフォーマットが指定されている場合もあります。
● 英語での作成:外資系企業では英語での退職届作成を求められる場合があります。日本語での作成が認められている場合でも、英語での併記を必要とする場合もあります。
● 簡潔で丁寧な表現:退職の意思を明確に、かつ丁寧な表現で伝えましょう。
● 退職理由:退職理由は「一身上の都合」と簡潔に記載することが一般的です。ここでは具体的な理由は述べる必要はありません。
● 退職日:上司と合意した退職日を明確に記載しましょう。
感謝の言葉は任意ですが、 会社への感謝の気持ちを述べると、円満な退職につながります。
一般的な退職届の書式を見ていきましょう。先ほどご紹介したポイントとともに参考にしてください。
● 日時:文書作成日
● 宛名:通常、直属の上司または人事部門の責任者
● 退職意思:明確に退職の意思を伝える
● 御礼:感謝の言葉
● 退職日:最終勤務日を明記
● 署名:フルネームで署名
企業側が退職届のテンプレートを定めていない場合、上記の項目に沿って自分で退職届を作成します。
状況に応じて最後に感謝の言葉を加える、英語で併記するなどカスタマイズしながら作成しましょう。
英文の退職届についてはこちらの記事をご覧ください。
現在の職場を退職した後、新たなキャリアを求めて外資系企業への転職に挑戦する方もいるでしょう。退職後、新しい外資系企業への転職を成功させるためのポイントを解説します。
グローバル環境でのキャリアを成功させるには、幅広いネットワークを維持することが不可欠です。元同僚など、同じ業界で働く人たちとは定期的に連絡を取り合って、近況や業界動向、求人などについての情報を集めておきましょう。
関連セミナーなどに積極的に参加して新たな人脈を広げたり、SNSを積極的に活用して定期的に自分の近況をアップデートしたりすることも大切です。
元同僚や元上司に対しては、退職後も時折メッセージを送るなどして良好な関係性を保ちましょう。こうしたネットワークは、新たな職場の情報収集や推薦状の依頼など、転職活動において大きな力となります。
グローバル市場での競争力を維持するには、常に最新のスキルを身につけておくことが大切です。前の企業で培ってきた経験やスキルを振り返ったうえで、自分のなかでまだ十分でないスキルがある場合は、転職活動を進めながらアップデートしていきましょう。
特にテクノロジーの進歩が速い分野では、オンライン学習などを活用して勉強したり、業界の専門資格取得も検討したりするのもよいかもしれません。
語学力、特に英語力の向上も忘れずに行いましょう。TOEIC、IELTSなどの国際的な語学試験でスコアを伸ばすことで、自身の市場価値を高められます。
グローバル環境での成功には、コミュニケーション力と異文化適応力が求められます。以下の部分に着目して強化してみましょう。
● ビジネス英語力の更なるスキルアップ
● プレゼンテーションスキル・ライティングスキルの向上
● 異文化理解(文化・ビジネス慣習など)
● 実践的スキルを磨く(国際交流イベントや語学留学への参加など)
これらのスキルを磨いておくことは、グローバル企業での面接や実際の業務において強みとなります。
グローバル市場で有利に転職を進めるには、セルフブランディングを強化することが大切です。まず、自分の強み・専門性・経験などを明確にしましょう。
これらを基に、個人ブログやポートフォリオサイトを開設し、専門性をアピールしたり定期的に投稿したりするのも効果的です。オンライン上での活動は、グローバルな視点からも注目されやすいため、英語でのコンテンツ発信にチャレンジするのもよいかもしれません。
一貫した自己ブランディングは、理想の職場からのオファーにつながる可能性を高めます。
グローバルキャリアを目指すうえで、自分に合った転職サイトの選択は重要です。その理由には以下のようなものがあります。
● キャリアの棚卸ができる
● 企業分析が可能
● 自分にマッチする企業探しのサポートをしてもらえる
● 応募書類作成のサポートがある
外資系企業への転職を成功させるためには、外資系企業に特化した転職サイトを活用することも大切です。定期的に求人をチェックし、積極的に応募することで、理想のグローバルキャリアへの道への可能性が開きます。
外資系・グローバル企業の退職をスムーズに進めるためには、後任者や上司など、チームメンバーに負担がかからないような配慮をすることが大切です。きちんとしたステップを踏むことで、後悔のない退職ができます。退職後はご自身のキャリアをさらに高められるよう転職への準備を行いましょう。
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