Global Career Guide
皆さん、ゴールデンウィークはゆっくり過ごされたでしょうか。長期休暇明け、とくにGW明けは退職する人が増えると言われています。休みの間に「決断するエネルギー」が溜まるからだそうですが、長期休暇中は自分と向き合う時間が増えるので、生き方とかいろいろ考えますよね。
休暇中に転職する決断をしたので、急遽「英文履歴書を用意しなければならない」という人もいるのではないでしょうか。そうした方のために、この度、Daijobでは、ネット掲載の英文履歴書のテンプレートをアップデートしました。私の方で新たに監修した3職種のテンプレートが追加されています。*
「日本人の履歴書は、外国人の履歴書に比べて地味で目立たない」というグローバル企業採用担当者の方もいらっしゃるということで、異なるデザインがいくつか用意されています。
私は、1990年代から、在米日本人を含め、英文履歴書の作成のお手伝いをしてきましたが、英文履歴書では、元々、一定の書式などはなく、自由に作成できるものの、近年、そのフォーマットやデザインが実に自由に、多様になったと思います。
ただし、とくに大企業では、履歴書は、まず採用管理システム(ATS=Applicant Tracking System)に通されるので、デザインが奇抜すぎるとソフトが読み取れません。デザイナーなどデザイン力が問われる職種でない限り、あまり凝ったデザインは避けた方がいいでしょう。(先週、「米メタとXに採用された」というインドの大学出身者の履歴書がネット記事に掲載されていましたが、テキスト中心のシンプルなデザインです。私の方で提供した「職種別 英文履歴書サンプル集」も同様ですので、参考にしてみてください。)
では、「英文履歴書は作成したことがない」という人のために、基本的なポイントをまとめておきます。
まず、北米(アメリカ、カナダ)では、履歴書のことをresumeと呼びます。イギリス英語圏では CV(curriculum vitae)ですが、アメリカでCVというと、大学関係者や研究者、医師などが使う数ページにわたる長い履歴書のことを指します。 **
ここでは、日本の履歴書や、日本語の履歴書を英語に置き換えただけの「直訳式英文履歴書」とは区別する意味で、北米でも通用する英文履歴書という意味でresumeという言葉を使います。
Resumeは売り込みのツール
Resumeとは、自分を売り込むためのツールなので、よく見られる日本語の履歴書を英語に置き換えただけのものでは通用しません。皆さんも何か商品を売るときには、その長所を強調し、どんなに優れた商品かを力説するはずです。Resumeは、自分という商品をよりよい条件で買ってもらうためのPRだと考えるべきなのです。
Resumeは身上書ではないので、自分の人生をすみからすみまでさらけ出す必要はありません。応募職に関係のないこと、自分に不利になることは、書く必要はないのです。
Resumeの第一の目的は、いかに優れた第一印象を形づくり、面接にこぎつけるかということです。応募職に関係のある経験のみをまとめ、業績を強調することがポイントです。自分の技能や経験を思いっきり誇示しましょう。日本人の場合、「ここまで言っても大丈夫かなぁ」と思うくらいで大丈夫です。それでも、他の国の人々にはかなわないでしょうから。
職務ではなく業績
日本の履歴書はどこの学校で何を勉強し、どこの会社の何課に属していたかを記すだけで、具体的な仕事内容や活動について詳しく書きませんが、resumeには、日本の職務経歴書に書くような詳細を盛り込みます。Resumeは、日本の履歴書と職務経歴書を併せたものと考えればいいでしょう。
Resumeで一番強調しなければならないのが、業績(achievements)です。しかし、多くの人が職歴の部分に職務(duties/responsibiities)しか書いていません。実際、職歴の部分に職務記述書(job description)を貼り付けたようなresume多いのが、アメリカの採用担当者の間でも不満のひとつなのです。
職務というのはその職に備わっているものであり、誰が就いても変わりません。一方、業績はその人特有のものです。採用者が知りたいのは、あなたがその職で何を成し遂げたか、どういう成果を出したかということです。他の応募者との差別化をはかり、 抜きん出るには、職歴の部分に記載する職務は必要最低限に抑え、業績を中心に書くことです。
欧米人に比べ、日本人は自分の功績を誇示するのが苦手です。自分では大したことはないと思うようなことでも、すべてを書き出し、その後で希望職種にあったものを選択するといいでしょう。
業績はできるだけ具体的な数字を挙げて書きます。たとえば、売上額やコスト削減幅など、金額または割合で示します。その他、「○○賞を受賞した」「顧客から○○という称賛を受けた」などが考えられます。
応募職ごとにカスタムメード
Resume作成のお手伝いをしていたときに、「○○社の△△職と、□□社のXX職に応募するつもりです」という方もいましたが、両方に通用するresumeを一本で作成するのは、まず無理です。
どの企業の、どの職種にも通用するような万能のresumeはないということを肝に銘じてください。つまり、resumeを一本だけ作り、それを複数の応募先に利用することは、できないのです。
Resumeには、自分が今まで何をしてきたかより、雇用者側が何を求めているかに焦点を絞り、応募職にマッチさせた形で技能や経験を記載します。学歴・職歴・資格技能は、応募する職にとって重要なものから順に書きます。 つまり、職によって経歴の内容、また並べる順序を変え、複数のバー ジョンを作成するということです。
私は、resume作成をお手伝いする際に、まず「応募先を教えてください。募集要項を見せてください」とお願いしていました。それがなければ、resumeは書けないからです。レジュメは、自分の経歴をベースに書くものではなく、応募職に応じて、自分の経歴を整理して組み立てていくものなのです。
上記が、皆さんが英文履歴書を作成する最初の一歩のお役に立てれば幸いです。著書の『英文履歴書の書き方 Ver 3.0』では、新卒やキャリアにブランのある場合などニーズ別のresumeなど、さらに詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
* 「英文履歴書サンプル集」で、私の方で作成および監修したのは「職種別英文履歴書サンプル集」と「特別テンプレート」のみです。
** 日本で使われている「レジュメ」という外来語は、フランス語résuméで「要約」という意味。
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。