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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(71)–  MOU

日本の在留外国人数は、過去3年、最多記録を更新しており、その割合は、政府の予想(2070年)よりも早く、2050年には人口比1割に達するというニュースが流れていました。「入れ過ぎ、なぜ欧州に学ばないのか」と騒ぐ人もいる中、「25年後でも、わずか1割?」と驚きましたが、すでに1割以上の地域もあるし、訪日外国人の数が月に300万人を超えているので、短期訪日者も含めると、街で見かける外国人は1割以上に感じるでしょう。

「日本は移民大国」なんて煽る人がいますが、人口比1割くらいでは25年後も移民大国ではないでしょう(今のアメリカの不法移民数より少ない)。社会への移民統合に失敗したことを認めているスウェーデンでは、2022年時点で外国生まれの住人は人口比2割に達しており(都市によっては半数のところも)、2026年からお金を払って自国に帰還してもらうことが決まっています。(2009年、日本も、失業した日系人にブラジルやペルーに帰ってもらうために帰国費用を支援。)

過去10年ほどで、アメリカに次ぐ移民大国となったドイツでは、両親とも移民という人を含めると24%です(2022年)。元々、移民の国として始まったオーストラリアでは、29%に達しています。

なお、昨年、書いたように、人口における移民の割合が世界一なのは、アラブ首長国連邦(UAE)で85%でした(2020年)。その他、クエート(70%)やカタールなど中東の国が上位を占めています。出生率(1.1)は日本(1.3)より低いものの外国人労働者の流入で人口が増えており、「移民の受け入れは国の存続に不可欠だ」と首相がいうシンガポールでは、4割ほどです。ただし、これらの国では、市民権(国籍)は元より、永住権を取得するのは難しく、労働者をはじめ大半の移民は期限付きのビザで居住しています。*

Memorandum of Understanding

日本では、とくに地方で働く外国人が増えているそうですが、地方自治体は、外国人労働力を確保するために、海外の政府や大学とMOU(Memorandum of Understanding)を交わすそうです。(ネットの)新聞記事では、MOUは「国際交流協定」と訳されていましたが、MOUは、直訳すれば「了解覚書」、通常、「基本合意書」と訳されます。

MOUとは、契約や条約、協定などを締結する前に、双方の意向や基本的な条件を確認する合意書で、口約束よりはマシですが、契約書のように法的拘束力はありません。国や自治体だけでなく、民間企業でも利用されますので、皆さんも見たり、聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。

A memorandum of understanding serves as a primary step before a formal contract is created.
(基本合意書は、正式な契約書が作成される前の重要なステップとなる。)

”MOU”には、下記のようにagreementやcontractと同じような動詞が使われます。なお、MOUと略した場合、母音(e)で始まるため、前にくる不定冠詞は”a”でなく、”an”になります。

ABC and XYZ signed an MOU for research and training.
(ABC社とXYZ社は、研究と研修のための基本合意書に署名した。)

US ethanol leaders signed an MOU with Vietnam’s largest petroleum distributor.
(アメリカの主要エタノールメーカーは、ベトナム最大の石油販売業者と基本合意に署名した。)

The Indian institute inked an MOU with the Japanese university to enhance global education and research.  ※ “ink”は”sign”と同じ意味。
(グローバルな教育と研究を促進するために、インドの大学は日本の大学との基本合意書に署名した。)

Best Company and Daijob entered into an MOU to collaborate on new development projects across the world.
(ベストカンパニーとダイジョブは、世界中で新たな開発プロジェクトで協力するために基本合意書を締結した。)

The pivotal MOU with the city will enhance Indo-Japanese partnership.
(その都市と交わした重要な基本合意書は、インド・日本間のパートナーシップを強化するものだ。)

The MOU outlines avenues for business development and human resource exchanges.
(その基本合意書は、事業開発と人材交流の手段をまとめたものだ。)

The MOU represents a major step in green transformation and digitalization in Malaysia.
(この基本合意書は、マレーシアでのGXとデジタル化において大きなステップとなるものだ。)

The MOU underscores our commitment to continuous innovation.
(この基本合意書は、絶え間ないイノベーションへの当社のコミットメントを明確に示すものだ。)

* UAEやカタールなどでは、街で働いている人たちは外国人労働者。(灼熱の)カタールの土産店で働いていたシリア人は「カタール人オーナーは、エアコンの効いた部屋でくつろいてるよ」と皮肉っていた。シンガポールでは、年に2万人ほどが国籍を取得し、3万人ほどが永住権を取得。日本の国籍取得者は年間1000人にも満たない。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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