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米大統領選に関し、日本のメディアは早くからトランプ元大統領の「圧勝」という表現を使って報道していました。しかし、アメリカでは、「圧勝」を意味する”landslide”という表現を使ったのは、ほぼ右派メディアのみで、左派の主流メディアでは見られません。
主流メディアは、最終投票結果が出た今も、下記のように「あれは圧勝ではない」という論評を掲載しています。その理由のひとつに、一般投票(popular vote)の獲得数の差が1.8ポイントであったことがあります(選挙人投票 [electoral vote] では312票対226票で16ポイントの差。過去の大統領選に比べ差が大きい)。*
Trump won in a sweep, not a landslide.
(トランプは快勝はしたが、圧勝はしていない)
Trump’s win was real, but not a landslide.
(トランプが勝ったことは事実だが、圧勝ではなかった)
Stop calling it a landslide.
(圧勝とは呼ぶな)
There was no Trump landslide.
(トランプは圧勝などしていない)
“Sweep”は「掃く、掃除(する)」という意味ですが、「一掃(する)」という意味もあり、そこで
「圧倒的な強さで勝つ、全勝する」という意味で使われます。日本語に訳せば「圧勝」になるでしょう。
日本でも、今回の大統領選に対し「快勝」を使っている人がいますが、”landslide”と”sweep”の差
は、「圧勝」と「快勝」の違いのようなものです。「圧勝」と同様、”landslide”の方が力強いイメー
ジがあります。
下記のように「一掃するように全部かっさらっていった」という意味では”sweep”が使われます。 今
回、共和党は大統領だけでなく、上院(Senate)、下院(House)ともに過半数を獲得し、全勝しました。
The Republicans’ sweep of the elections will allow Trump to push forward with his agenda.
(共和党が今回の選挙で全勝したことで、トランプが自身の政策を推し進めることが可能になる)
(右派の)ウォールストリートジャーナル紙では、論説委員が上記のタイトルの論評を掲載し、「主流
メディアによるトランプ元大統領や共和党に対する絶え間ない攻撃が、どちらに投票するか決めかねていた有権者の一部を動かした」「メディアが公正に、もっと早くバイデン大統領の衰えを報じていれば、民主党は予備選(primary)を行って、もっとふさわしい候補を選ぶことができた」と力説していました。
日曜に行われた兵庫県知事選も、”landslide against the media”でしたね。ネットでは「最大の敗者はオールドメディア」「オールドメディアの終焉」といった言葉が飛び交っています。地元の高校生らもSNSで投票を呼びかけていたようですが、やはり皆が投票に行けば(投票率55%でも)、政治は変えられることということです。それを若い人たちが実感できたのは本当によかったと思います。**
一方、10月に新たな大統領が選ばれたスリランカでも、先週、解散総選挙が行われ、大統領の率いる左
派連合が議席の3分の2以上を獲得し(3議席から159議席に躍進)、圧勝しました。
The new president secured a landslide win in the national parliamentary election.
(新大統領は、国会の選挙で圧勝した)
The leftist coalition won the snap election by a landslide.
(左派連合は、解散選挙で圧勝した)
上述の”sweep”(動詞)を使って、下記のような表現もできます。
They swept the election by winning a two-thirds majority of the parliament.
(議席の3分の2を獲得し、選挙に快勝した)
■ 地滑り、土砂崩れ
“Landslide”は、元々、「地滑り、土砂崩れ」を意味し(正確には、地滑りが土砂崩れを起こすわけだ
が)、上述の「圧勝」というのは、そこから派生した意味です。
The landslide destroyed tens of homes.
(その土砂崩れで、何十戸もの民家が崩壊した)
Heavy rains have triggered rising landslide threats in the country.
(その国では、豪雨によって、土砂崩れの危険が高まっている)
This hazard map shows the areas with high risk for landslides.
(このハザードマップは、土砂崩れの危険が高い地域を示している)
* 一般投票でも勝った共和党大統領は、ブッシュ(息子)元大統領以来で、20年ぶり。一般投票では民主党候補が勝っても、間接選挙では共和党候補が勝つ状態が続いていた。未だに「米大統領は国民による直接選挙で決まる」と思っている人がいるが、選挙人による間接選挙で決まる。
** 選挙当日に、(偏向報道だらけの)地元紙と全国紙が対有権者ネット調査で「二候補が互角の展開」と報じていた。それも配信されたのは投票終了の20時で、「当確」が出る寸前。
前々知事が20年も続けていたのが異常だが、投票率40%で当選していた。(全国ワーストクラスの財政の県が海外事務所を5つも有していたのにはビックリ)
大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。