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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(69)–  Executive Order, Official Language

先週、「アメリカの国としての公用語を英語に定める」という大統領令にトランプ大統領が署名しました。1月に同大統領就任後、ニュースで「大統領令」という言葉を聞く機会が増えたかと思います。英語では”executive order”と言われ、議会の承認を得ずに、軍を含む連邦政府機関に対して出すことができる行政命令のことです。

President Trump signed an executive order to make English as the official language of the U.S.
(トランプ大統領は、英語を米国の公用語にする大統領令に署名した。)

The President issued an executive order ending the procurement and forced use of paper straws in the federal government.
(大統領は、連邦政府での紙ストローの調達および強制使用を廃止する大統領令を発行した。)

日本では、アメリカで全面的に紙ストローが禁止されると勘違いしている人がいますが、そもそも大統領令は連邦政府機関に対するものであり、この大統領令は、連邦政府が紙ストローを調達し、利用するのを禁止するものです。

アメリカでは、プラスチックのストロー(というか使い捨てプラスチック)を禁止している州や自治体もあり、大統領令は、そうした州や市、また民間企業には及びません。ですから今後も、紙製(または竹製や金属製)のストローの利用を続ける飲食店は少なくないでしょう。

行政裁量の逸脱?

トランプ大統領が、むやみに大統領令を発行しているように見えるのですが、歴代の大統領を見てみると、桁違いの大統領令を発行した大統領が過去に何人もいるのです。トランプ大統領は一期目に220の大統領令に署名したのですが、これは、B・クリントン大統領(民主党)が一期目に発行した数と同じです。年末に亡くなったカーター大統領(民主党)は320、ニクソン大統領(共和党)は一期目に247、ジョンソン大統領(民主党)は325発行しています。

ちなみに、最高は(第二次世界大戦中の)F・ルーズベルト大統領の3721で、1901年(T・ルーズベルト)から1961年(アイゼンハワー)まで、4年の任期中に1000以上署名した大統領が5人もいます。

司法での争い

ただし、大統領が署名したからといって法律として施行されるとは限らず、議会や裁判所で無効とされる可能性もあります。現在、上下院とも共和党が過半数を占めているので、共和党の大統領が署名した大統領令が議会で無効になる可能性は低いのですが(時間もかかるし)、連邦裁判所では、トランプ大統領が発行した大統領令に関し係争中のものがいくつかあり、すでに阻止されているものもあります。

たとえば、出生地主義(birthright citizenship)を制限しようという大統領令に関しては、左派の州の(民主党の)司法長官らに違憲として提訴されており、4つの地方裁判所で違憲の判決が出ています。おそらく政権側が控訴し、最高裁判所(US Supreme Court)で争うことになるでしょう。

Four federal judges have blocked an executive order from the President that would end birthright citizenship for the children of parents who aren’t US citizens or permanent residents.
(連邦判事4人が、米国市民および永住者でない親の子供の出生地主義を廃止する大統領の大統領令を阻止している。) 
※現在、不法移民や観光客が生んだ子でも市民権(米国籍)が与えられる。

先週も、海外援助(USAID)に関する大統領令で90日間停止を命じたものの、一部、司法で支払いが命じられました。すでに完了した援助事業にする支払い20億ドルを求めた請負業者らの提訴に関し地方裁判所が支払いを命じたのですが、トランプ政権がその命令の取り消しを求めて控訴していました。しかし、最高裁判所では地裁の判決を支持し、控訴を退けました。(対外支援の凍結が全面的に解除されるかのような日本のメディアの報道は誤報というよりdisinformationか?)

州知事による行政命令

なお、各州の知事も”executive order”(行政命令)を発行することができます。

The governor announced five new executive orders on day one.
(知事は、就任初日に5つの新たな行政命令を発表した。)

Official Language

ところで、公用語(official language)を社会で流通している、よく話されている言語だと勘違いしている人がいます。たとえば、ヒスパニック系の多いアメリカでは、スペイン語だけで生活していける地域も多いので、スペイン語が公用語だと信じている日本人も少なくありません。

公用語とは、公の場で用いることを法律で定めた言語のことで、公的機関は公的情報を発信する際に用いる義務があります。アメリカでは、国レベルで公用語が定められたのは今回が初めてですが、州レベルでは、すでに30以上の州で英語が公用語として定められています。(こうした背景には、英語以外の言語を話す住民が、1980年に比べ3倍以上に増えているという現実がある)

カナダでは、英語とフランス語が公用語なので、公的な文書や官公庁のウエブサイト、標識、商品パッケージなどは、両語での表示が義務付けられています。旧英植民地では、現地語とともに英語も公用語に定められている国が多いのですが、多民族国家のシンガポールでは、英語、マレー語、北京語、タミル語の4つが公用語です。

国連では、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語、アラビア語が公用語なので、報告書などの発信は六ヵ国語で行われます。なお、このうち、英語とフランス語が常用語(working language)です。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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