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タカシの外資系物語

外資 “デューデリ” 狂想曲 (その3)2014.11.18

タカシ、クビの皮一枚残す?!

前回の続き) “Due Diligence for Takashi Nara” という、何とも物騒なアジェンダで、専務のSahさんと電話会議を実施することになったタカシ。Due Diligence(デューデリ)というのは、M&Aや投資の際に実施する資産査定のこと。人を対象にして、あえてこの言葉を使ったということは、“私という人物を徹底調査する” というメタファー(隠喩)になっていると察します。それに追い討ちをかけるように、会議の冒頭から、「コノ カイギハ ヒト ノ イッショウ ニ カカワル コト ・・・」 という、Sahさんの意味深な一言。ひょえーーー、とうとう “肩たたき” キターーーーーーーーーーーーーーーーーッ!(T-T)

 

Sahさん 「ソレデハ ハジメマショウ・・・ カコ5ネン ノ Revenue(売上) ヲ ミルト サクネン ガ オチコンデイマスネ?」

私 「(いきなり痛いとこ、突かれたーーーっ!(T-T)) 昨年、ちょっと体を壊しまして、半年間休職していたもんですから・・・」

Sahさん 「エッ?! ビョウメイ ハ??」

私 「は、はぁ・・・ メンタル系なんですけど・・・」

 

Sahさん、電話の向こうで何やらブツブツ言っています。私がメンタルで休職したの、知らなかったんでしょうか? それでもなお、デューデリという名の “肩たたき” は実行されるのかなぁ・・・(T-T) 外資だからなぁ・・・(T-T)(T-T)

 

Sahさん 「タカシサン、ソモソモ “カレ” トハ ドノヨウナ カンケイ ナノデスカ?」

 

“カレ” ? なんで三人称やねん! それとも、新手の心療内科治療法?? メンタル状態の私を “カレ” と呼ぶことによって、客観的な何かを探ろうとしているのでしょうか?! わしゃ、ビリー・ミリガンか!!!

 

余談なんですけど、先ごろ公開された、『フランキー&アリス』という映画で、オスカー女優のハル・ベリーが多重人格者を演じているのですが、その演技が秀逸! すばらしい! の一言です。 みなさんも、是非ご覧ください、って、映画の宣伝している場合か!!

 

タカシの大いなる勘違い、というか、わからんわーーっ!!

冷静に考えて、どう見ても会話が成り立っていない。私は会話で使う言語を英語に戻して、Sahさんに確認することにしました。

 

私 「Sorry, Sah-san・・・ Uhhh, Who is HE ?」

Sahさん 「Tanaka-san・・・」

私 「(田中さん・・・って、わかったーーっ!!) He is Ichiro Tanaka, and this con-call is the assessment for Tanaka-san, as Partner candidate ?」

Sahさん 「Yes, that’s right !」

 

・・・みなさん、おわかりでしょうか? この電話会議は、パートナー候補に挙がっている 田中一郎さんに対するデューデリを、私にヒアリングするためのものだったのです。なんじゃ、そりゃ!

まずは、私に対する “肩たたき” ではなかったことに安堵する一方、田中さんの人物調査なら、“Due Diligence for Ichiro Tanaka” と書けやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!(T-T) こんな妙なタイトルでミーティング依頼が来たら、ビビるわーーーーーーーーーーーーーーーーー!!(T-T)(T-T) ハァハァハァ・・・

 

確かに、半年ほど前に、田中さんに依頼されて、推薦状を書いた覚えがあります。以前にも述べた通り、わが社では、パートナーへの昇進チャレンジに際して、5人以上のパートナーからの推薦状を必要とします。この推薦状のことを、“Soundings” と言いまして、候補者が審査をクリアしていくなかで、Soundingsを書いたパートナー連中にも、ヒアリングが入ります。以前はこのプロセスを、“Soundings Assessment” と呼んでいたのですが、いつの間にか、“Due Diligence” に変わっていたようです。

 

うーーむ、やはり語感的に、“Due Diligence” というのはちょっと違うような気がします。キツイ表現というか、人間味を欠くというか・・・ ま、スタッフを “Resource(資源)” と呼ぶ外資ですから、ヒトもモノも、大した差はないのかもしれません。

 

あ、そうそう、Sahさんには 田中さんの評価をきちんと伝えておきましたので、ご安心を! しばらくして、田中さんから、「最終選考に残りました。ありがとうございます!」という連絡が来たので、うまくいったようです。ま、結果オーライということで、良かった、良かった・・・

 

社外からやって来た! デューデリの魔の手

“Due Diligence” は社内だけでなく、“社外” からもやってきます。

 

電話の主 「奈良タカシさんですか?」

私 「はいはい、そうですけど・・・」

電話の主 「私は○○コンサルティングの鈴木と申します。奈良さんがご存知の、川口明夫さんについてお聞きしたいんですが・・・」

私 「へ?」

 

○○コンサルティングというのは、毎回熾烈なコンペを繰り返している同業他社。川口明夫さんというのは、私の部下です。さてみなさん、一体何が起こっていると思います? 実は、以下の経緯で、私に電話がかかってきたのです。

 

(1)      私の部下である川口明夫さんは、エージェント経由か直接かわからんが、同業の○○コンサルティングに対して、中途採用の応募をした

(2)      ○○コンサルティングは、川口さんのスキルを第三者に確認するため、川口さんの “人となり” を知っている人かつ社会的に信用できる人(慣例的に、川口さんより上位の方を指す)の紹介を要求した

(3)      で、それが私だった

(4)      ということで、○○コンサルティングから電話がかかってきた  というわけ。

 

つまり、○○コンサルティングは私に対して、川口明夫さんの “Due Diligence” を行っているわけです。転職候補先の人事が、応募者の現状の上司に対して “Due Diligence” を実施する・・・ 日本的には、かなりブッ飛んだ話ですよね。

 

普通なら、

 

ふざけるな! ガチャン!! おーーい、川口っ! どういうことなんだ、説明しろーーーっ(怒)

 

ですよね。でも、外資ではこれに対して、真摯に応じるのです。もちろん私としては、川口さんに転職されたら、めっちゃ困るんですよ。でも、それはそれ、これはこれ。○○コンサルティングに川口さんを正当に評価してもらった上で、本人がわが社に残ることと天秤にかけて比較する。それは彼の自由だし、だれにも邪魔する権利はありません。外資が生き馬の目を抜く業界であることは確かです。しかし、こういうことについては、非常にフェアだと思います。

 

もちろん、外資かつコンサルの世界というのは、非常に狭いフィールドなので、将来的に、川口さんがクライアント企業に転職するかもしれない。その際に、妙な遺恨とならないためにも、フェアにやるというわけです。

 

さて、外資の “Due Diligence” いかがでしたか? 毎年やっている健康診断と同様に、自分の経験とスキルをたな卸しし、第三者に評価してもらうと、色々な発見があって面白いもんです。みなさんも、現時点で転職する意思がなくても、エージェントが実施している同様のサービスを受けて、自分を見つめ直してみてはいかがでしょうかね。では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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