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タカシの外資系物語

外資における「ルール」の重要性 ( その 2 )2007.10.23

ルール違反のペナルティ

前回の続き ) 今週も外資におけるルールの重要性についてお話しましょう。前回お話した「必須 E - ラーニング研修」の場合、ルール上の対処の流れは、以下の通りとなります。


( 1 ) ある E - ラーニング研修について、受講必須であることが、会社から社員に連絡される 
( 2 ) 一定期限を過ぎても受講していない者に対して、再度連絡が入る 
( 3 ) 締め切り間近になっても受講しない場合、対象者の管理職に対して「未受講者リスト」が配布される。管理職は、未受講者に対して、至急受講するように連絡する


さて、締切日を過ぎても受講しなかった場合、どうなるのでしょうか ? 実は、これ以上の対処は何も行われません。受けるべき研修があるということを社員に連絡することは会社の責任なので、( 1 ) ( 2 ) を実施します。また、受けるべき研修があるにも関わらず受講していないことを本人に連絡するのは管理職の責任なので、( 3 ) を実施します。しかし、( 1 ) ~ ( 3 ) の連絡を受けても受講しない人がいた場合、それは本人の責任なので、本人が何らかのペナルティを受けることになります。


ペナルティというのは、最初の連絡時 ( 1 ) に明記されています。例えば、「この研修を受講しない人は、マネージャーへの昇進試験を 2 年間受けることができません」 とか、「人事の 5 段階評価において、上位 2 段階の評価がつきません」 などといったものです。


で、外資のすごいところは、本当にそのペナルティが実行されるところです。後になって本人が泣こうがわめこうが、また管理職が経営陣に「恩赦」のお願いをしようが、ルールはルールです。その 1 年、どんなに優れた業績を上げていても、たった 1 度の研修を受講しなかったばかりに、良い評価を得ることができなくなってしまうわけです。外資に勤める人は、このようなルールの厳しさを知っているので、たいていの人は ( 2 ) の段階ぐらいで対処します。しかし、一部の中途入社者、特に日系の大手企業からの転職組は、ルールを軽視し、締切日を過ぎても受講しないケースが散見されます。

例外は認めない !

昨年も、こんなことがありました。日系企業から転職してきた S さんは、大型案件の受注に成功しました。普通なら、人事の 5 段階評価の最上位がついてもおかしくないのですが、実際には真ん中の評価しかつきませんでした。なぜなら、必須の研修を受講していなかったからです。 S さんは上司や人事にクレームを言ったのですが、そんなものは一切受け付けられません。「この研修を受講しない人は、人事の 5 段階評価において、上位 2 段階の評価がつきません … 」という但し書きのついた研修を受講しなかった S さんが悪いのですから。


「俺は大型案件の受注で、研修を受講している暇なんてなかったんだ ! それぐらい大目に見てくれてもいいじゃないか ! 」 S さんには申し訳ないのですが、そういう言い訳は一切通りません。どんなに仕事が忙しかろうが、タイムマネジメントができなかったのは誰のせいでもなく、自分の能力が不足しているからなのです。 S さんだけ例外的な配慮がされることは、絶対にありません。


外資が例外的な対処をしないのは、「ルールは絶対的なものなので、例外を認めだすと収拾がつかなくなる」という理由が大きいのですが、実務的に見ても、例外への対応というのは手間がかかる面倒なものなのです。S さんの例を見ても、会社と管理職が S さんに対して研修受講の連絡をするだけでも手間がかかっているのに、その連絡を無視した S さんの言い分を聞き、評価を上位に付け替えてやるとなると、追加でかなりの手間がかかります。


外資というのは、このような例外に対処する追加の手間を、異様に嫌います。なぜなら、「どれだけ時間がかかるかわからない」からです。どれだけ時間がかかるかわからないということは、もしかすると、その例外処理だけで何日もかかる可能性もあるわけで、外資ではそういう不確実な仕事のやり方は排除されます。


一方、日系企業にも一応のルールはあるものの、例外も寛容に認める風潮があります。なので、日系企業の業務には、例外処理がたくさん存在してしまうわけです。例外なのでマニュアル化できない、マニュアル化できないので一部社員に特定の処理を依存する、一部社員に依存するので不正の温床となる … という悪循環を繰り返しているのです。

即刻解雇もありえる !

社員が受けるペナルティとして最も重いのは、「解雇 ( クビ ) 」でしょう。もちろん、解雇にも様々な理由があって、業績が振るわない・能力が低いというのも解雇の理由になりえますが、その場合には、一定期間の猶予が与えられて、それでも成果が上がらなかった場合に解雇が言い渡されます。

 


私の会社を例にとると、人事の 5 段階評価の最下位は「解雇」を意味します。しかし、いきなり 5 段階評価の最下位がつくわけではなく、 2 年連続で 5 段階評価の 4 番目がついた人は、自動的に 5 段階評価の最下位となり、解雇が勧告されることになっています ( この状態を、「カウンセリング・アウト」と言います )。


この場合、5 段階評価の 4 番目がついた人は、次の1 年で頑張れば復活する可能性があるわけですから、1 年間の猶予があるわけです。もちろん、役員のような上位クラスの場合は 1 年も猶予をもらえない場合が多いですが、それにしても、業績が悪化し出したことは本人にもわかっているはずですから、リカバリーのチャンスはあるわけです。


一方、ルール違反による解雇は、全く猶予を与えられず、即刻実施されます。わが社の場合、顧客との契約や下請企業への発注などにおける不適切処理は解雇の対象となります。


このような解雇は、周りにいる社員にとっても全く予想不可能なものですから、実施されると非常に驚きます。朝いきなり役員に呼び出されたと思ったら、何らかのルール違反で解雇。あとは、デスクに戻り、人事の担当に監視されながら、ダンボール箱に自分の荷物を詰め込んで、ハイ終わり … という感じです。営業的には大きな実績を上げている人が、たった 1 度の不適切な処理のために解雇された例もあるようです。それは会社にとっても大きな痛手に違いないのですが、そういう人を切ってでもルールを重視した方が、結局は会社のためになるということを、外資は理解しているのです。


さて、私のチームの研修未受講者は、残り 2 人。いよいよ、明日が締め切りです。


「しょうがないなぁ … えーーい、電話しちゃお ! 」


私は未受講の 2 人に電話して、今すぐ研修を受講するように伝えました。 2 人は、「どうしてわざわざ電話なんかしてくるんですか、大した話じゃないのに … 」という感じでしたが … 。 2 人には、今度ゆっくり外資の仕組みをお話しないといけません。でも、すぐに「例外処理」をしてしまう私も、まだまだ外資に染まりきってはいないのかもしれませんね。


P.S. 先日、わが家に赤ちゃんが産まれました。 3,165g の女の子。おかげさまで、母子ともに健康です。大変な難産を乗り越えた妻トモミに感謝するとともに、ますます頑張ろうという決意で一杯です。ありがとうございました !


( 編集部より : タカシさん、奥様、おめでとうございます ! パパになって今後ますます冴え渡るであろう「タカシ節」を楽しみにしております ! )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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