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有元美津世のGet Global!

外資・グローバル転職で役立つ英語表現(14)-Statesman2022.07.19

  安倍元首相に対する弔辞で、各国の首脳やメディアが”statesman”を使っていました。「政治家って英語でpoliticianじゃないの?」という人もいるかと思いますが、実際に”statesman”(尊敬に値する優れた政治家)がどのように使われているか、下記で見てください。

 インドのモディ首相は、安倍元首相が銃撃されたというニュースが流れてすぐに、安否を気遣うツイートをしていましたが、訃報が入った後には、元首相の功績を称え、友情に感謝するツイートを何本も投稿しました。その中の一本が下記でした。

I am shocked and saddened beyond words at the tragic demise of one of my dearest friends, Shinzo Abe. He was a towering global statesman, an outstanding leader and a remarkable administrator. He dedicated his life to make Japan and the world a better place.

(非常に大切な友人の一人、安倍晋三氏の痛ましい逝去に対するショックと悲しみは言葉にできません。安倍氏は、非凡の世界的政治家、優れた指導者、卓越した為政者でした。彼は、よりよい日本と世界をつくるために人生を捧げました。)

 クアッド(Quad)に参加しているオーストラリアのメディアでも、”statesman”を使った見出しが見られました。

Abe was a global statesman of a free and open Indo-Pacific.

(安倍氏は、自由で開かれたインド太平洋の世界的な政治家だった。)

For all his nationalism, Abe was a true globalist and statesman.

(安倍氏は、国粋主義ではあったものの、真のグローバリストで優れた政治家だった。)

 アメリカの保守系雑誌には、「今世紀一番~のstatesman」という描写までありました。

Perhaps the most visionary statesman of the 21st century, Shinzo Abe was shot and killed [後略]

(恐らく、21世紀で一番ビジョンのある政治家であった安倍晋三氏が、撃たれて亡くなった。)

The world has lost an impressive statesman.

(世界は、素晴らしい政治家を失った。)

Statesman vs Politician

 下記は、元米海兵隊大佐(および元駐日米国大使館海兵隊武官)が安倍元首相を偲んで書いたものですが、”statesman”と”politician”を使い分けています。

Nakasone was the last one you would call a statesman. Since then the only one who deserved that title was Shinzo Abe.

(Statesmanと呼べたのは、中曽根氏が最後だった。その後、その呼称に値するのは、安倍晋三氏だけだ。)

Let’s not forget it’s been a long time since the last murder of a politician in the civilized world, especially a statesman like Mr. Abe.

(忘れないようにしよう。長い間、文明社会で政治家が殺害されることは、なかった。とくに安倍氏のようなstatesmanが殺害されることは。)

 日本語にすると、どちらも「政治家」になってしまいますが、politicianは、どこの国にも大勢いるものの、statesmanと呼ばれる政治家は稀です。(帝国主義者、人種差別主義者として悪名も高いが)やはりstatesmanと呼ばれるW・チャーチルは「次の選挙のことを考えるのがpolitician。次の世代のことを考えるのがstatesman」と言いました。

 Politicianは選挙に当選するためであれば、政策もコロコロ変えたりしますが、statesmanは国や国民に対し明確なビジョン、確固たる信条を持ち、それを達成するために周りの合意を得られるだけのリーダーシップを備えているような政治家です。

左派も

  「右派が安倍氏を称えるのは当然だよね」と言う人もいるかもしれませんが、左派のニュージーランドのアーダン首相も、下記のように”statesman”を使って、安倍氏を称えています。

I remember after our first bilateral meeting as we were waiting for an official photo, he leaned over to tell me he was sorry my cat had passed away.  In the meetings we had in the years that followed, I saw a statesman, someone who helped usher through complex negotiations … but I also saw someone who was kind.

(最初の二国間協議の後のことを覚えています。公式な写真撮影を待っている間に、安倍氏は、私が飼っていた猫が亡くなって残念でしたね、と話しかけてきてくれたのです。その後、何年もの間、会議でご一緒して、複雑な交渉を率いた人、優れた政治家の姿を見ましたが、親切な方でもありました。)

 先述のように、安倍元首相は、海外のメディアで”(ultra)nationalist”と形容されることが多かったのですが、* アメリカの左派の雑誌が「彼は国粋主義者だったが、世界をより良くした」「安倍氏の平和と自由への寄与のおかげで、アメリカも、より安全で、より強くなった」と書いたのには、私も驚きました。

 やはり「クアッドを構想し、インド太平洋の安全保障に貢献した」という点が買われているようです。とくに、それまでの日本の指導者には見られなかった「外交で指導力を発揮した」という点で際立ちました。



* 米左派のNPR(公共ラジオネットワーク)が、安倍元首相の暗殺を報じるツイートした際に、元首相のことを“divisive, arch-conservative”(対立を生じさせる超保守的な) とツイートしたところ(AP通信のリードをそのまま引用)、右派に批判され、そのツイートは削除。代わりに”ultranationalist”(極端な国際主義者)とツイートして、やはり批判に。”Arch-conservativeも”ultranationalist”も同様にネガティブ。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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