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有元美津世のGet Global!

相変わらず日本語オンリーで内弁慶2020.02.25

 
 いつものことですが、コロナウイルス騒動で、また日本のメディアは「海外のメディアは日本のことを〇〇と報じている」合戦をするのだろうなと思ったら、案の定。

 「クルーズ船の対応に関して海外メディアが日本に批判的」という人たちは、いつものごとく、日本のメディアが「海外のメディアは...」というのを見聞きして、そう言ってるわけですよね?  

 私は、一番批判的だったのは日本のメディアだと思いますが。WHO(世界保健機関)が、クルーズ船内の感染者は「日本国内の感染者に含めない」として区別して発表を始めた後も、海外のメディアはそれに追随するところが増えたのに、日本のメディアは、ずっとクルーズ船上の感染者も含めた数字を発表してますよね?[1]

 ちなみに、ヨーロッパ諸国には、まだ武漢からの国民救出が終わってない国もあり(それで自国民から批判されている)、帰国者に感染者が含まれている可能性が高いわけですから、毎日、刻々と変わる数字に一喜一憂することに意味があるのか… (そもそも、検査しないと発覚しないし。)[2]

 「検疫で経験豊かなイタリアでは、足止めを食ったクルーズ船は、12時間で検疫を終え、乗客は下船を許された。イタリアには感染者は出ていない」なんてイタリアを称賛していた日本の医師もいましたが、ここ数日でイタリアでの感染者は200人以上に急増しています(検査してなかっただけ?)イタリア寄港のクルーズ船の場合、感染を疑われた乗客の検査結果は陰性だったので、そもそもダイヤモンド・プリンセス号とは状況が違ったのですが。

 「世界は~」「他の国では~」と、とにかく他者と比較しないではいられず、かつ叩くのは身内(と近隣諸国)だけの内弁慶という、いつもの日本。

Let's Put it in Perspective


 そして「日本の信用は地に落ちた」と、他者の目ばかり気にしている。米政府が「日本への渡航警戒レベル1を出した」「レベルを2に引き上げた」ということで大騒ぎしている人もいますが、今年1月に「日本では風疹が大流行(outbreak)」ということで、すでにレベル2になっていました。その時も騒いでた? ちなみに、私が今、滞在しているミャンマーに対しては、中国、インドネシア、マレーシア、フィリピンなどと並んで、昨年12月からポリオに関してレベル2が出ています。(ポリオは、接種で予防はできますが、治療法はありません。)ほとんどのアメリカ人が、そんなことは知りません。

   また、日本の外務省も、ベトナムを除いた東南アジア諸国やインド、ネパール、スリランカへの渡航にはレベル1(十分注意してください)を出しており、それらの国の一部の地域に対してはレベル2(不要不急の渡航はやめてください)やレベル3(渡航はやめてください)を出しています。

日本語オンリーの世界では知られてない?


 日本では「なぜ、アメリカには感染者がいないのか」とか言っている人もいますが、1月末に人から人への感染も確認されており、2月25日時点で53人います(武漢とダイヤモンド・プリンセス号からの帰国者39人を含む。)アメリカでは、当初、中国からの帰国・渡航者か、感染者の濃厚接触者以外はコロナの検査をしないように医師には通達されていたそうです。最近になって、実際にコロナ感染者はどれくらいいるのかを確かめるために、5つの大都市でインフルエンザのような症状の患者にコロナの検査を開始しています。(この件も、間違って伝えている日本の医師がいる。)

 クルーズ船からの帰国便に感染者14人を非感染者と一緒に搭乗させるのにはCDC(アメリカ疾病予防センター)が反対したらしいのですが、国務省に押し切られたようで。そして、今、その帰還者を「当市に連れてくるな」と住民が抗議し、裁判官が一時的に阻止した自治体もあります。そして、アメリカでもマスクが売り切れで、「ネットでも買えない」と困っている友人も。(遠くからクルーズ船を眺めて、ああでもないこうでもない、と無責任なことを言っていた国々が、今では自国の問題として直面することに。)

 それより、日本の人が知らなくて驚いたのは、シンガポールの状況。1月末に中国からの渡航、乗り換えも禁止したシンガポールですが、早くから国内で第二次、第三次感染が起こり、ついこの間までは、感染者数は中国に次いで多かったのでした。シンガポールは、日本と韓国に先駆け、タイなどと並んでイスラエルに入国を拒否され、先週、タイにも日本と並んで”検疫”対象となっています。[3]

 そうした一因は、1月にシンガポールで開かれた国際会議を発端とした感染拡大があるかもしれません。出席者100人を超える国際会議に出席した人たちが、各国に帰国後、感染が発覚し、ヨーロッパやアジア6カ国で20人の感染者が出たのです。中でも、そのうちのイギリス人が、帰国前にフランスのスキーリゾートに立ち寄った際に、他のイギリス人5人に感染させてしまったことで、地元の学校が閉鎖するなど大騒ぎとなっていました。

 ただ 、シンガポールは、ここ数日、新たな感染者が減っており(それなのに、今週末、インドがシンガポールへの渡航に対しレベル2同等の勧告)、先週、WHOの事務局長が「シンガポールは、インフルエンザのような症状発症者や肺炎患者すべての検査をし、感染抑制のためにあらゆる努力をしている」と誉めていました(星国民33人が亡くなったSARSのときの教訓で、手続きを徹底したらしい)。

 シンガポールの感染者の高さは、その感染発見能力にあるというのが専門家らの見解ですが、武漢の10分の1以下の大きさの都市国家(人口560万人)で、1965年から一党独裁。濃厚感染者の割り出しのために航空会社から乗客名簿を徴収でき、防犯カメラで感染者を監視し、140人の濃厚接触者追跡担当者(contact tracing officer)に濃厚接触者を戸別訪問させる。そこで虚偽の受け答えをすれば、最高70万円の罰金または6カ月の禁固など「(個人情報や個人の自由を重んじる)他国には真似できない」とも。

 さらに、シンガポールで、2月初めに香港で起こったような日用品買い占め騒動が起こりかけた際、リー首相が私服でカメラの前に登場し、「買い占めなんてする必要はないんだよ。この苦しい時期を皆で団結して乗り越えよう」と、まるで父親のように国民に語りかけるという(異様な)中継をCNA(Channel News Asia)で観たのですが、[4]「すっごいアジア的~」と思いました。横で観ていたアメリカ人は、「なんだ、この父権主義(paternalistic)は!信じられない」と。


 世界の関心は、(自国民が帰国したら関係ない)クルーズ船から韓国やイタリア、イランでの感染急増に移りつつあり、WHOも「世界的な大流行(pandemic)もあり得る」と宣言したコロナウイルス。皆さん、今後も、日本語だけの情報に頼るんですか?



[1] 
もそも、大半の患者が回復するのだから、煽るだけでなく、回復者数も報道すべきだと思うが。

[2] パキスタンのように「帰ってくるな」と800人の留学生が救出されず、武漢に見捨てられている国もあるけど、日本では報じられてない? それも、インドが自国民を救出した際に「一緒に救出しようか」という申し出を断ったという… 留学生の家族は怒りまくり。

[3] 私もミャンマー入国時に”検疫”されたが(国籍にとらわれず全員)、健康状態を自己申告する健康カードに記入しただけ。ヤンゴンではショッピングモール入店時に体温測定。

  日本では、海外からの旅行キャンセルばかり報じられているけど、先週、「日本からのツアー客の80%がキャンセルで、観光業に大打撃」とタイで報じられていた。

[4] シンガポールの政府系英語ニュース局。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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