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戦争について海外の視点に触れる(2)- 国で異なる戦争の「記憶」2019.08.27


  前回、「戦争について海外の視点に触れる」を書いた後に、日本では、コロンビア大学の教授が行った第二次世界大戦に関する特別講義が書籍として出版され、話題になっていることを知りました。

 これは、日本近現代史を専門とする教授が、日本の雑誌の依頼で、同大学に在籍する日本、韓国、中国、インドネシア、カナダ、アメリカなど出身の学生と世界大戦について行った対話を収録したものです。

 この教授は、分析方法として、歴史家が記録する「歴史」と、学校の教科書や記念館・博物館、政治家のスピーチ、映画などを通じて伝達されるストーリーを「(共通の)記憶」として区別しています。(「記憶」は、日本でいう「歴史観」に近いと思う。)

開戦日も呼称も国によって異なる


 講義は、教授が質問を投げかけ、学生らが答えるという形で行われたのですが、同じ戦争に対し、出身地や民族によって「記憶」が大きく異なることが浮き彫りになります。

 たとえば、開戦日。ヨーロッパでは、ナチスがポーランドを侵攻した1939年9月1日。ロシアにとっては、独ソ不可侵条約を破ってナチスがソ連に侵攻した1941年6月22日。アメリカでは、真珠湾攻撃が行われた1941年12月8日。同日に日本軍が侵攻したマレーシアでも。(私の方で加筆しています。)

 中国では、中国共産党が1937年の盧溝橋事件を開戦と見なしていたのを、二年前に満州事変に改めました(日本の「十五年戦争」解釈に一致。)なお、終戦日も、各国まちまちです。

 第二次世界大戦は広範囲の地域で戦われたため、呼び方も地域によって異なります。日本では「太平洋戦争(Pacific War)」「大東亜戦争(Great East Asia War)」などと呼ばれますが、対中国戦は「日中戦争」、中国では「中国人民抗日戦争(Chinese People's Resistance Against Japanese Aggression)」です。しかし、2015年の中国人民抗日戦争勝利記念から「世界反ファシズム戦争」という呼称も使われるようになりました。

 ロシアでは、愛国心を鼓舞するために名付けられた「大祖国戦争(Great Patriotic War)」。同戦争は、他国では東部戦線(Eastern Front)、独ソ戦争(German-Russian War)。ドイツ側で戦ったフィンランドでは、第一次ソ連・フィンランド戦争(Winter War)に続いて再開されたソ連との戦いであったため、「継続戦争」(Soviet-Finnish Continuation War)と呼ばれます。

 以前、ベトナム系アメリカ人と話していたときのことです。「祖父がSino-Japanese Warの時に中国からベトナムに逃げて...」と言うので、私は日清戦争を思い浮かべ、「おじいさんではなくて、曾おじいさんの間違い?」と思ったのですが、後日、彼が”Second Sino-Japanese War”、つまり上記の日中戦争のことを指していたことに気づきました。

国ごとに異なる「記憶」・ストーリー


 日本では、戦後「(わけのわからないうちに?)悲惨な戦争に巻き込まれて被害を受けた」というストーリー(記憶)が語られました。

 アメリカでは、第二次世界大戦は(その後の数々の戦争とは違い)「正義の戦争」であり、自分たちは「ナチスからヨーロッパを解放したヒーロー」というストーリーです。東部戦線で、ソ連が2000万人以上の(アメリカの何倍もの)犠牲者を出してナチスの侵攻を抑えたことを知る人は稀です。(話しても聞く耳を持たない。)

 国にかかわらず、国民の記憶にあるのは、たいてい自国の視点のみ。巻き込まれなかった国は数えるくらいという「世界大戦」だったのですから、一国のみの視点で語ることは不可能なのですが。

 世界を理解し、自分の中の「記憶」を見つめ直すという意味でも、こうした多様な視点に触れることは価値があるのではないでしょうか。

 

注) 戦争名の英語表記では、すべて”the”を省略。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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