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有元美津世のGet Global!

カタール ― サッカーより政治と貿易2019.02.12

 

 アジア杯での初優勝によって、日本だけでなく、世界的に注目を集めたカタール。世界的にマイナーな大会であるアジア杯は、サッカーの人気がないアメリカはもちろんのこと、ヨーロッパやラテンアメリカでも大して注目を集めませんでしたが、カタールに関しては、通常、サッカーについて報じないメディアまでもが、政治問題をからめて報道しました。

テロ支援国?


 対UAE戦では、カタールがゴールを決めたりすると、UAEの観客がPETボトルや靴を投げ入れたことが世界的にニュースとなりました。(中東では靴投げは侮辱行為。)[i]

    それどころか、先月の準々決勝のカタール対イラク戦で、カタールチームのユニフォームを着てイラクの応援に行った英国籍(スーダンとの二重国籍)の男性が逮捕され、暴力をふるわれた末、未だに拘束されているそうです。UAEでは、2017年にカタールとの国交断絶直後、ソーシャルメディア、その他で、カタールに肩入れすることは違法となり、禁固や高額の罰金を伴う犯罪と見なされます。

 こうしたカタールに対するUAEの敵対心は、「断交しているから」と日本では報道されましたが、なぜ断交しているかを説明するメディアは少なかったですね(断交当時はニュースになりましたが)。カタール代表チームのフェイスブックページなどにも、”Terrorists!”といった投稿が目立ちましたが、それは「カタールがテロ組織(ムスリム同胞団)に資金を提供している」というのが理由。[ii] なお、アラブのカルテット(サウジ、UAE、エジプト、バーレーン)が ムスリム同胞団をテロ組織に指定したのは、2010~2012年に中東で広まったアラブの春が自国に広まるのを恐れたから。  

 また、アジア杯でイラン代表チームにカタールが資金を提供していたことも明るみに出ましたが、サウジが敵対視し、2016年に断交したイランに、カタールが接近するのも気に食わないのです。

経済封鎖にも屈しない金満の小国

 前回、書いたように、帰化選手の多いサッカー代表チームですが、カタールに言わせると「人口の少ない国だから」。たしかに人口は260万人ほどで、そのうち外国人が9割近くを占め、カタール人は30万人ほどしかいません。その中から、自国民の中から世界で通用するサッカー選手を発掘して育てるというのは、実際、難しそうです。

    カタール代表は、優勝のご褒美に首長からボーナスが支給されたそうですが、その内容が、各選手にロンドンのマンション、現金3億円近く、一生涯の月給、最新のレクサス、と破格![iii]

 金満カタールの国民一人あたりのGDPは、世界で6番目に高く、アメリカよりも上位です。カタールの主要産業は、埋蔵量世界3位の天然ガス(LNG)と石油で、最大の対輸出国は日本です。(あなたの家のガスは、カタールから来ているのかも。)

 サウジは、断交解除条件として「イランとの関係縮小、TV局アルジャジーラの閉鎖」などを突きつけていますが、屈する気のないカタールは、今年に入りOPECを脱退しましたOPECを牛耳り、運河建設でカタールを孤島にしようとしているサウジへの反発もありますが、産出が大して多くない石油よりも、80年代から戦略的に開拓してきた天然ガスの方が将来有望のため、そちらに注力するということです。

 カタールでは、2022年のW杯に備え、地下鉄「ドーハメトロ」の建設も進んでいますが、車両はすべて日本製だそうです。「サッカーで注目を浴びた中東の小国」は、想像以上に日本人にとって身近な存在なのです。

 


[i]  10年前にバグダッドでの記者会見で、イラク人ジャーナリストが(イラクを攻撃した)ブッシュ大統領に靴を投げつけた事件が有名。

[ii]  9/11テロの実行犯の大半がサウジ国籍で、サウジとUAEはイエメンでアルカーイダに武器を提供していることは棚に上げ。

[iii]  カタールでは、近隣諸国と同様、首長や王室の批判をすると禁固刑。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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