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有元美津世のGet Global!

就活ルール廃止は日本型雇用終焉の始まり?(1)2018.11.06

 

 日本では今、新卒の就活ルール廃止が論議を呼んでいます。人事の専門家から非専門家まで、喧々諤々の賛否両論あり。就活ルール廃止によって、新卒一括採用が通年採用に移行し、(終身雇用を前提とした年功序列の)日本型雇用が崩壊するという人も。

 私は、過去一年、各国のIT人材事情を調査してきたのですが、グローバルに繰り広げられている人材争奪戦はすさまじいです。先進国はどこも人材不足で、他国に人材を供給できる国は新興国で数えるくらい。「日本型雇用では、こうしたグローバルな人材獲得競争に勝てない」と日本企業はあせっているわけです。

就職できない韓国の若者


 就活ルール廃止に関して、例のごとく(欧米企業で働いたこともない人たちが)「欧米では~」とまくし立てていますが、ここでは、お隣の韓国の就職事情を見てみましょう。

 文化的に日本に近い韓国も、元々は年功序列、終身雇用を基礎としていました。しかし、1990年代のアジア通貨危機で、韓国経済はIMFの救済を請けなければならないほどの打撃を受けたのです。企業や金融機関が次々倒産し、失業率は上昇(若年層15%)。日本より一足早く、非正規雇用が増えました。

 当時、構造改革を余儀なくされた韓国では、企業の雇用も、日本的な制度からアメリカ型成果主義制度への移行が進みました。今では、両者を合わせたハイブリッド的な形といっていいでしょう。

 その韓国では、近年、若者の就職難が深刻です。全体の失業率は4%以下なのですが、若年層(15~29歳)の間では9%と高く、8月には10%に達し、1990年代のアジア通貨危機以来の悪化ぶりでした。就活学生を含む実質的な失業率は8月に23%に上がり、19年ぶりの最悪水準ということです。なお、新卒の就職率は70%を切っており、大卒の失業率が高卒の失業率を上回っています。(韓国では大学進学率が高いというのも一因。)

 若者の失業率が高止まりであることから、韓国では朴政権時代から、国をあげて若者の海外就職支援を行っています。支援を受けた若者の就職は、日本でがもっとも多く、4年で5倍近く増え、アメリカを抜いています。法務省によると、日本で働く韓国人(在日韓国人を除く)は、年々、増え続けており、昨年、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得した韓国人(主に大卒のホワイトカラー)は2万人を超えています。

即戦力重視では新卒は不利

 

 韓国では、一流大学を出て、現代やサムソンなどの財閥系大企業に就職するのが理想とされ、非常に狭き門を狙って、子供のころから激しい受験戦争が繰り広げられます。大学を卒業しても、縁故やスペック重視の就職戦線は、コネもカネもない大半の中流層が勝ち進むことは難しい。といって給与レベルが大企業の半分という中小企業には就職したくない…。「韓国の中小企業に就職するくらいなら、日本の大企業に就職したい」となるようです。

 「スペック重視」というのは、資格や語学力など「私は〇〇ができます」という具体的なスキルや専門性が重視されるということです。韓国の若者が「就職準備に時間がかかる」というのは、大学在学中から資格取得などスペック構築に奮闘しなければならないからでしょう。

 新卒一括採用をしていない国々では、若者の失業が高い傾向がありますが、企業が即戦力の人材を雇う場合、実務経験のない新卒は圧倒的に不利ですからね。 

 日本の企業はスペックよりも潜在力重視で、「文系でもエンジニア職で採用して社内で教育してくれる」といった点が韓国人学生には魅力のようです。日本企業で経験を積んでスペックを高められれば、韓国の大企業や外資系に転職することも可能になるわけですし。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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