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有元美津世のGet Global!

アイスランドの英語事情(2)ー 母国語の危機2018.10.09

 

   小学2年から英語の授業が始まるアイスランド。日本でも小学校での英語教育が始まっており、2020年には小学3年から必修化されます。早期英語教育には「日本語が疎かになる」という反対意見がありましたが、週に1~2時間の英語の授業で、日本語は疎かにはならないでしょう。

小国の悲哀

 

 ところが、小国のアイスランドでは、そういうわけには行かないようです。アイスランド語はアイスランドでしか話されていませんから、話者は世界で35万人ほど。35万人というのは、東京都の区の人口規模です。東京には、アイスランドの人口より人口が多い区が10区あります。

 日本語は日本でしか話されていないと言え、話者は1億人以上おり、大きな国内市場があります。皆さん、海外からのアプリやサービスも日本語版があるのがあたり前、と思ってません? 小さな国の人にとって、それはあたり前ではないのです。

 たとえば、最近、流行りのAIアシスタント(スマートスピーカー)。Amazon Alexaがサポートしている言語は、わずか4言語—英語、ドイツ語、フランス語、そして日本語(スペイン版とイタリア語版開発中)。 Google Assistantは15言語、Siriは21言語です。

 今年に入り、マイクロソフト翻訳(Microsoft Translator)にアイスランド語が加えられ、Google Mapsも、たまたまグーグルにアイスランド人のエンジニアがいたため、アイスランド語版もできたそうです。

 今後、音声指示技術がどんどん応用されて行く中、母国語で操作できないとなれば「役に立たない母国語よりも英語」となってしまう可能性が危惧されています。そもそもAIの時代、話者が35万人しかいないということは、機械学習の元になるデータが、それだけ少ないということで、こうした技術をアイスランド語用に開発するのは簡単ではないようです。

   実は、ネット時代以前も「アイスランド語の本が少なかったから、子供の時から英語の本を読んでいた」「テレビ番組が少ないから海外の英語の番組を見ていた」というアイスランド人もいます。(英語ができるようになったのは学校で英語を習ったからではないと。)

アイスランド語の危機

 

  アイスランド語は、アイスランド人の90%が第一言語として話しますが、13~15歳の年齢層では、30%が友人とは英語で話すそうです。というのも、デジタル時代の今、(書籍やテレビ番組が限られたように)ネットでのアイスランド語でのサイトが限られるため、どうしても英語のサイトを利用し、英語に触れる機会が増えてしまうようです。

 今では、幼児がYouTubeを楽しむ時代。3~5歳児の40%が2歳になるまでにネットを閲覧していたとかで、アイスランド語を学校で学ぶ前に英語に親しんでしまう... 

 実は、2015年のPISA(学力到達度調査)で、アイスランドの15歳未満の児童の読解力が北欧の平均値を下回り、読解に問題がある児童が、2000年の15%から2015年には22%に上昇したのです。

 「このままではアイスランド語が衰退してしまう...」という危機感から、母国語保護のために、アイスランド政府は、AIアシスタントのアイスランド語版を作るための音声認識技術開発向け助成金の支給などを始めました。

 幸か不幸か、日本は人口が多いために多くの情報が母国語で得られ(かつ外国の植民地にもならず)、外国語を習得する必要性がなかったのですよね、今までは…

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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