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有元美津世のGet Global!

インドの就職事情 ― カオス的世界最大の人事採用(2)2018.05.15


 インド国有鉄道による4年ぶりの職員採用。冷やかし半分の応募者をふるいにかけた後は、筆記試験なのですが、インド各地の300弱の試験会場でコンピューター上でオンラインで行われます。試験内容は英語、論理思考、数学、科学、時事など多岐にわたり、英語で作成された問題は15の言語に訳されます。

カンニング対策


 筆記試験において、採用側としては、いかに不正行為を見つけ出すかに最大のエネルギーを費やすそうです。カンニングを防ぐため、同じ教室で受験する受験者の問題は、すべて違うのだと。また、応募者に試験会場を早く知らせすぎると不正行為を計画されるため、どこの都市になるかを通知するのは試験の2週間ほど前で、どの会場かは2日前まで知らせないそうです。

 インド国鉄による求人が発表されてまもなく、「どんな試験が出るか」というフェイスブックグループがいくつも登場しています。WhatsApp上では”試験内容”とうたわれたものが流布したそうですが、10人ほどがまったく同じ解答をした試験会場もあったとか。答えは、すべて間違っていたそうですが…

一年以上におよぶ選考過程


 筆記試験の合格者(募集人員の15倍)には、次に覚度(alertness)や奥行き知覚( depth perception) など各々の職に必要な適性を持ち合わせているかの心理テストが行われます。

 公務員の場合、指定カースト(不可触民)、指定部族、その他後進階級(低層カースト)、身障者など社会的マイノリティに対し就職枠が設けられているため、それにも配慮しなければなりません。

 こうしてやっと合格者が決まるのですが、選考過程は、これで終わりではないのです。その後、選考課程が公平に行われなかったと思う応募者は、異議を唱える機会が与えられます。国鉄のウエブサイトには筆記試験問題と、それに対する個人の解答と正解が掲載され、応募者は正しく採点されているかを確かめることができるのです。95%の場合、問題はないそうですが、筆記試験の設問は7200個にものぼるため、たまには間違っていたり、訳が正確でなかったりということがあるそうです。

 選考過程は一年以上にわたるそうですが、それだけ時間をかけても就く価値のある仕事のようです。

大学を出ても職がない 


 やはり今年、南部の州政府が9500人の職員を募集したところ、200万人の応募があり、その中には博士号取得者(1000人近く)やその他大学院卒者(27万人以上)、大卒者(80万人)が含まれていたそうです。募集職種の大半がアシスタント、タイピストや速記者などの事務・補助職だったというのに...

 世界銀行によると、インドでは、15歳以上の生産年齢人口が毎月130万人増えるため、現失業率を維持するだけでも、毎年800万人分以上の職が必要で、それには年間18%の経済成長が必要だとのことです。しかし、それは無理であり、若者の就業をどうするかはモディ政権にとってアキレス腱ともなっています。

 少子高齢化の日本では、若者人口の多いアジアの新興国をうらやむ人もいますが、インドでも13億人の人口の半数を占める25歳未満の若者が社会の資産になると期待された時期があったものの、今では反対に負債になるのではないかと懸念されています。

 子供のときから過酷な受験勉強にさらされ、やっと大学に入って卒業しても職がないとなれば(海外からも企業が採用に来る有名校は別)、海外に移住したくなるのも無理はないかもしれません。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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