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有元美津世のGet Global!

インドの多様性(4)― 多宗教国家の結婚2018.04.10


前回、書いたように、印パ分離の際
、1000万人以上もの人が、突然、自分の住んでいる国が変わってしまうという運命に翻弄されました。それまで仲良く隣人として暮らしていたヒンディー教徒とイスラム教徒が敵視し合い、ルワンダ虐殺のような状況下、異教徒の隣人がかくまってくれて命拾いしたという人もいます。

 しかし、隣人としては共生できても、結婚して親族になるというと別問題で、インドでは異教徒間の結婚は、まだまだタブーです。ヒンズー教徒とイスラム教徒が恋に落ち、宗教の壁を乗り越えられるか(というより家族親戚を説得できるか)、というのはボリウッド映画でも、よく扱われるテーマです。

 今年に入ってからも、以前、近所に住んでいたイスラム教徒の女性とつき合っていたヒンディー教徒の男性が、女性の父親と兄、叔父によって殺されています。実際には、ヒンディー教徒と交際するイスラム教徒男子が襲撃されるケースの方を聞くことが多いのですが、「イスラム教徒に改宗させるために、イスラム教徒男子がヒンズー教女子をたぶらかす」という陰謀説を信じるヒンディー教徒は少なくなく、”Love Jihad”(愛によるジハード、愛を使った異教徒との戦い)という言葉まで生まれています。

 昨年も、イスラム教徒の夫と出会う前にイスラム教に改宗していたにもかかわらず、ヒンディー教徒の女性の父親が「娘は男に洗脳された。人身売買が目的だ」と訴え、地方裁判所は「結婚無効」を言い渡しました。しかし、夫婦は印最高裁で争い、今年に入って「結婚は有効」と認められました。

自由恋愛は増えてはいるものの…


都市部の若い世代では、宗教が違う相手、(同じヒンディー教徒でも)カーストが違う相手とも結婚する人たちは増えていますが、それでも、2016年のアンケート調査では、19州の15~34歳の半数近くが「異教徒間の結婚には反対」と答え、「賛成」と答えたのは3割に満たない、という結果でした。

 そもそも、インドの結婚は、結婚相手を親が決めるというのが伝統で、これも、ボリウッド映画でよくあるテーマです。彼氏・彼女がいるのに、親が決めた結婚相手と結婚するように言われ、好きな相手と結婚するまでの試練を描いたり、英米在住の若者が、親がうるさいので渋々インドに一時帰国して結婚相手と会ったところ、恋に落ちてしまうといったストーリー。

 実は、昔、大学院時代に知り合ったインド人留学生が、ある日、「結婚相手と会ってくる」とインドに里帰りしたのですが、アメリカに戻ってきたときには、親が決めた相手と結婚していた、というのには驚きました。その彼は、英語はアメリカン、行動もアメリカ的で、かつイケメンだったのでアメリカでいくらでも彼女は見つかるだろうし、親に反抗するだろうと思っていたのですが...

異宗婚の難しさ 


 日本では、宗教を意識せずに日々、暮らしていけるので、私もアメリカに渡るまで理解できていませんでしたが、異教徒との結婚は、日々の生活様式から子供の宗教や教育まで、いたるところで違いが出てきます。インドに限らず、肌の色は違っても価値観が似ていれば、そう問題はない異人種間結婚より、ずっと大変だと思います。インド(や近辺諸国)の場合、そこに家族親戚だけでなく、地域社会までついてくる...

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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