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有元美津世のGet Global!

インドの多様性(1)― 多言語国家2018.03.20


 インドでは、東南アジアに比べ、英語が通じるので楽なのですが、ちょっと大都市圏を出ると英語が通じなくなります。大都市圏でも、タクシーの運転手やホテルのレストランの給仕係などサービス職では英語を話せない人が多いです。(日本のインド料理店で働くインド人たちも、英語より日本語の方が通じる。)

 インドは、アメリカに次いで英語話者が多い国なのですが、割合的には、英語を話せる人口は全体の10%ほどで(といっても1億人以上)、圧倒的に英語を話さない人口の方が多いのです。

 多くの新興国と同様、インドでは、個人の英語能力は、その人の社会的地位を反映したものであるといえ、大卒者、中産階級以上は、まず英語を話します。一方、インドの識字率は74%ほどで、母語ですら読み書きができない人も少なくないのです。

  教育格差にしろ、貧富の差にしろ、格差の大きい点はインドの特徴ともいえるでしょう。

 

多言語国家


 インドでは、連邦政府の公用語はヒンディー語、準公用語は英語と定められていますが、州公用語など「指定言語」と呼ばれる言語は22にものぼります。

 マレーシアのインド系住民は、インド南部出身の人が大半で、彼らが話すタミール語やマラヤーラム語などは、この22言語に含まれます。

 たとえば、首都デリーでは、家では家族とパンジャム語やベンガル語を話す人が、職場では英語、町で買物をするときにはヒンディー語を話すといったことは珍しくないのです。母語の異なる相手と結婚した場合、唯一の共通語が英語で、家庭での会話は英語というカップルもいます。

 なお、インド政府は、ヒンディー語を国連の公用語にしようと働きかけており、モディ首相をはじめ政府高官が国連でヒンディー語で演説したりしていますが、タミール系は反発しています。このように、多言語国家ならではの苦労もあります。

英語対現地語


 私はボリウッド映画が大好きで、飛行機に乗ってボリウッド映画(英語字幕付き)があると必ず鑑賞するのですが、登場人物がヒンディー語でしゃべっている中、ときどき英語を交える場面が非常に多く見られます。インタビューなどでも、インタビューする側も受ける側も、ヒンディー語と英語を混ぜてしゃべる人をよく見ます。

 それで、ある日、インド人に「なんで?」と聞いたのですが、「小学校から英語を習っているので、ついつい出てしまう」とのことでした。

 中には、「母語で話しかけても、子供が英語しか話そうとしない」ため家庭内の会話が英語になってしまったという家庭や、「子供には英語でしか話すつもりはない」という若いエリート層もおり、今後、英語しか話さない人口が増えるかもしれません。

 そうした中、英語を押し付けるエリート層に対する反発や「母語を守ろう」という声もあります。インドでは780もの言語が話されていますが、そのうち600が消滅しかけているといわれます。過去60年で、すでに250言語が消滅してしまったそうです。

 州によっては、「小学校の授業は、英語でなく母語で行われるべきだ」「標準試験は英語以外の言語でも受験できるようにすべきだ」という動きもあります。

 言語というのは、個人の文化的アイデンティティに密に関連し、時には国を分裂させてしまうほど重要なものです。今後、インドの言語教育が、どう進んでいくのか興味深いです。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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