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有元美津世のGet Global!

キャリアデザインインタビュー(2)─ 米留学、日本で就職後、米赴任2016.08.30

今回、紹介するのは、昔、私のアメリカの会社で働いてくれていたTさんです。私は、当時、近くの州立大学の非正課プログラム(Extension Program)から毎四半期ごとに学生のインターンを受け入れていました。

私は、2~3年の間に日本人や台湾人を含め累計10人近くを受け入れたのですが、その中でも一番優秀だったのがTさんでした。

Tさんは、日本で大学を卒業後、マーケティングや国際ビジネスを勉強するためにアメリカに留学したのですが、大学の正規の学部ではなくCertificate(修了証)がもらえる1年のExtension Programで勉強していました。

実は、私も、それまで知らなかったのですが、日本で大学を出て入れば、アメリカで出ていなくても専門職向け就労(H-1B)ビザが取れるというのです。そこで、Tさんに社員として働いてもらうために、私の会社でTさんのビザをスポンサーすることにしました。ちょうど同じビルに前にも使ったことのある移民コンサルタントがいたので、Tさんには、そのコンサルタントを通じて申し込むように勧めました。

すると無事にビザが取れたのです!(実は、その前にアメリカで大学を卒業した日本人のビザもスポンサーしたのですが、却下されました。なお、これは10年以上前の話で、9.11以降は、就労ビザ取得は非常に難しくなっています。)

帰国して就職

 

こうしてTさんには、当時、日本企業向けに米IT市場のリサーチを中心に担当してもらっていました。Tさんは文系出身でしたが、コンピューターに強く、かつ課題を渡せば自分で考えて解決してくれるところが気に入りました。(「そんなのあたり前」と思う人もいるかもしれませんが、これができない人が多い!私も20代の頃、アメリカ人上司に”I’m not here to solve your problems. You’ve been hired to solve our problems”と言われたのが教訓に。)

 

Tさんには、うちのような零細企業ではなく、もっと大きな仕事ができるところで活躍できる力があったのですが、アメリカで転職するためには一から就労ビザを取り直さなければなりません。そろそろビザも切れる頃になり、Tさんは東京に帰って就職先を探すことにしました。東京では、初めの2~3カ月はエージェントを使って探したそうですが、希望の職が見つからず、今、勤めているIT企業の求人は自分で見つけたそうです。

 

その会社は若い人でも、どんどん大きなプロジェクトを任せるので、その頃、まだ20代だったTさんは新規ビジネス開発の面白いプロジェクトを担当し、アメリカにも出張していました。そして、それから10年、その会社で着実にキャリアを積み上げました。アメリカにいる間に結婚をしていたTさんですが、お子さんも生まれ、東京では一戸建てのマイホームも購入していました。

 

アメリカに赴任

 

2年前、勤務先がシリコンバレーで新たに事務所を立ち上げることになり、そのチームの配属に自ら名乗りをあげたそうです。チームに採用されたのは、社内での実績だけでなく、英語力や以前、アメリカで働いた経験もプラスに働いたでしょう。

今はアメリカ市場向け新規サービスのために、全米各地に飛んでベンダーとの交渉やプロジェクト管理をしているそうです。

 

以前、マレーシアの知人の娘さんが希望の職に就けないまま、何年もニューヨークに居続けている話を書きましたが、そういう人は日本人にも多く見られます。海外留学後、その国にいたいがために将来につながらない仕事でも何でもするというパターンです。(またはビザが切れた後、不法滞在してしまう人も)。それではキャリアが積めません。

それよりも、Tさんのように、いったん日本に帰り、将来性のある仕事で経験を積んでから、その会社から海外に赴任する、または転職するという方法もあるわけです。

 

知人の娘さんは、その後もフリーターのような感じで食いつなぎながら、30歳になってしまいました。大学卒業後、マレーシアに戻って数年働いて経験を積んでいれば、すでにアメリカに戻ってprofessionalとして活躍できていたかもしれません。

私は、Tさんが10年前に正しい決断を下し、今では国際ビジネスマンとして活躍していることを非常にうれしく思っています。

<キャリアデザインインタビュー バックナンバー>

キャリアデザインインタビュー(1)─ 英語と夢に向かって安定職を去る
キャリアデザインインタビュー(2)─ 米留学、日本で就職後、米赴任
キャリアデザインインタビュー(3)─ 米大学卒業、日本で就職、転職、フリーに
キャリアデザインインタビュー(4)― ポスドクから企業勤務を経てフリーの翻訳者に
キャリアデザインインタビュー(5)― 40手前でベトナムで就職

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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