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有元美津世のGet Global!

社会に羽ばたき始めた人たちへ2015.04.07

 

前回、国の経済格差について書きましたが、世界各国を旅行し、またアメリカ国内でさまざまな国の出身者の人たちと出会う度に、国の経済力を考えずにはいられません。

 

たとえば、新興国からアメリカに観光、留学しようとする人たちは、日本人の何倍もの資金を貯めなければならならいのです。

 

ピンと来ない人は、為替レートが1ドル360円時代に渡米しなければならなかった日本人を想像してみてください。3万ドルを貯めるには、1000万円以上必要だったのです。(今、円安といわれていますが、2001~2007年と同じレベルです。)

 

知り合いのフィリピン人一家が、数年前に親戚を頼ってアメリカに移住しました。40歳の夫婦はマニラで商売をしていて、そこそこの生活を送っていたのですが、子供の教育のための決断でした。

 

3万米ドル貯めるには、フィリピンでは130万ペソ以上貯めなければなりませんが、マニラの平均年間所得は38万ペソ(2012年)、9000ドル以下です。また、2013年のフィリピンの一人あたりGDPは2765ドルでした(ちなみに日本は3万8000ドル。)フィリピンの庶民にとって3万ドルが、どれだけの大金かわかるでしょう。

 

そして彼らは、アメリカで一から人生をやり直さないといけないのです。アメリカの弁護士資格がないため時給8ドルで働いているコンゴ人弁護士や、カナダでエンジニアの職がないからタクシーの運転手をしているパキスタン人など、いくらでも会ったことがあります。

 

国の経済力のおかげ

 

日本からアメリカや他の先進国に移住しても、現地でそこそこの生活を送れる人が多いのですが、それは日本という国の経済力のおかげです。上の世代が戦後の焼け野原を復興させるために奮闘してくれたからと言えるでしょう。

 

今でこそアジア人に対する露骨な偏見は減りましたが、もっと人種差別が激しかった頃、日本製品といえば安くてすぐ壊れると思われていた時代に、世界各国に売り回った人たちの苦労は想像を絶します。

 

日本を訪問したことのある在米インド人に言われたことがあるのですが、「広島は原爆投下で跡形もなくなったのに、今では、そんな痕跡もなく、信じられない!」と。私が「60年以上前の話だよ」というと、「いや、インドだったら、今でも跡形が残っている」と。

 

大震災後のインフラの復興も、海外の人たちがその速度に驚いていましたが、日本では遅いと批判する人たちがいました(そういう人たちは自ら復興のためにどんな貢献をしたのか知りたいところですが。)。アメリカでも道路の補修だけで、どれだけ時間がかかるか…

 

気づいていない恩恵

 

こうした国家の経済力や国際的な信用力はパスポートにも反映されます。世界には、観光旅行に行くだけでも相手国のビザを取らければならない人たちがゴマンといます。それも何ヶ月と時間がかかるため、出張や学会に間に合わないといった体験をしている人がいくらでもいるのです。

 

(敵視する国が結構ある)米パスポートの方がビザやreciprocity fee(相互課金)を必要とされることが多く、日本のパスポートの方が使い勝手がいいくらいです。たとえば、短期の観光でも米パスポートであればベトナムやトルコの入国にビザが必要ですし、クルーズ船で出会った夫婦はアルゼンチンに入国するのに、イギリス人夫は不要だったのに、アメリカ人妻はreciprocity feeを払わされていました。チリも昨年まで米パスポート保有者にはreciprocity feeを課金していました。

 

(日本人旅行者は人畜無害の団体観光客と思われがちで、各国入国審査でもゴチャゴチャ質問されず通りやすいです。パスポートによっては、税関でも荷物をしつこく調べられています。)

 

自ら行動しないと何も変わらない

 

近年、流行(?)の日本で短期間働いて物価の安い国で暮らす外こもりも、日本の経済力があるからできることです。国の経済力がバックになければ、クルーズ船で働くインドネシア人夫婦のように、子供を残して、海外に出稼ぎに行かなければならなかったかもしれません。

 

こうやって、私たちは知らず知らずのうちに国や先人の恩恵を受けているのです。国や行政に「してもらう」ことばかり期待するのではなく、自分は一体、(税金を払う以外に)国や社会のために何をしたのか、何ができるのかを考えてみてはどうでしょうか。

 

現状に不満があるなら、文句を言うだけでは何も変わりません。自分が行動するしかないのです。自ら行動していくことを選びませんか?

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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