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有元美津世のGet Global!

グローバル化が祝日にも影響?2014.10.21

先日、アメリカの祝日の話をしましたが、祝日に関して面白い試みをする米大学院が出てきました。ノースカロライナ大学のビジネススクール(Kenan-Flagler Business School) のオンラインMBAコース(MBA@UNC)では、10月第二月曜のコロンブスデーに授業を行いました。

 

「真にグローバルなプログラムは、ある国の祝日や宗教行事を他の国のものに優先すべきではない。祝日に中立(holiday-agnostic)であるべき」という学長の考えだからそうです。

 

MBA@UNCの授業はビデオを通じてバーチャル教室で行われ、40カ国近くから600人以上の学生が参加しており、「今日は、アメリカは祝日だから休講」というのはおかしいということです。

 

コロンブスデーは米連邦政府の祝日で、休日扱いの州は23州のみです。ノースカロライナも休日扱いではないので、同州の州立大学は開いていてもおかしくない日です。民間企業で休みなのは16%であり、ほとんどの就労者にとっては休日ではありません。

 

しかし、MBA@UNCでは、11月の感謝祭(Thanksgiving)にも授業を行うそうです。アメリカの感謝祭は、日本のお正月のようなもので、家族親戚が集まって一緒に食事をして過ごす日であり、授業に抵抗のあるアメリカ人学生もいそうです。

 

さらに、同大学では、今後、MBA@UNCだけでなく、「祝日中立」方針を大学全体に広げるそうです。(ということは、休みは土日だけ、ということに?!)

欧米人の視点で世界の歴史を習う日本人

 ところで、このコロンブスデー、スペイン王朝の支援を受け大西洋を航海したイタリア人探検家・植民地開拓者、コロンブスが「新大陸を発見した」ことを祝う日です。コロンブスデーは、スペインやイタリアはもちろんのこと、元スペイン領の中南米の国でも「(スペイン系)民族の日」などの名称で祝われています。コロンブスは、北米にはたどり着かなかったのですが、アメリカでも祝日とされています。(カナダでは、コロンブスデーは祝われず、この日は感謝祭の祝日です。)

 

しかし、コロンブスデーに対しては、100年も前から新大陸の先住民らによって抗議運動が行われています。新大陸は1492年以前から存在し、先住民が住んでいたわけで、「発見」というのはヨーロッパ人の視点です。さらにコロンブスは新大陸で略奪を働き、先住民を奴隷としてスペインに連行したり、スペイン軍を率いて先住民を虐殺したのですから、先住民らにとっては祝うなどとはトンでもない日なわけです。アメリカの先住民には「大量殺戮(genocide)の日」と呼ぶ人もいますし、南米の先住民には「漂流していたコロンブスを助けてやった日」という人もいます。

 

1990年には、南米エクアドルで、コロンブス航海500周年記念に対抗する先住民抵抗運動500周年記念集会が行われ、西半球の先住民の代表者が集まりました。その後、カリフォルニアでも先住民らによる抗議集会が行われ、その結果、1992年にカリフォルニアのバークレーで、コロンブスデーは「先住民の日(Indigenous Peoples’ Day)」に変更されました。

 

その後も、サウスダコタ州やオレゴン州では「先住民の日(Native American Day)」、今年はミネアポリスやシアトルでも「先住民の日」に改名されました。(これには、一部のイタリア系アメリカ人が反発しています。)

なお、ハワイでは、ポリネシア系住民がハワイ諸島を発見した日として「発見者の日(Discoverer’s Day)」と命名されていますが、祝日ではありません。

 

中高時代、歴史の試験で、私の世代は「1492(石の国)発見」の語呂合わせで「新大陸の発見」を暗記しました。「いよ、国」や「意欲のコロンブス」というのもあるとのことで、世代によって違うようですが、新大陸とは遠く離れたアジアの日本人が、欧米人の視点で世界史を学んできたわけです。

さまざまな国の人、多様な人種・民族に触れることによって、自分が学んできたこと、自分の視点があたり前ではないことを悟ることは、グローバルに活躍する上で必要なことだと思います。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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