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有元美津世のGet Global!

大学を出ても職がない(9)ー 夢と現実のギャップ2014.05.20


    先月、ロサンジェルズタイムズ紙に「18年間、教育を受けた結果、職がなく、4歳児の子守をしている」というOp-Ed(新聞社外部の人による論評)が掲載されました。書いたのは2013年に大学を卒業した24歳の女性で(18年ということで、大学院を出たのかと思ったのですが、そうではないようで)、「私の世代が大学を出ても職がないという問題をお聞きだと思いますが、それは本当です」と。 


    この女性は人類学専攻で、メキシコ、スペイン、ニカラグアで無償のインターンシップをできることになっていて、かつナンビアで3ヶ月、子ヒヒの研究をするというプロジェクト案が通ったものの、資金を集められず行けなかったそうです。 

    高校のときにアルバイトをしていた食品小売チェーンにも応募したところ、断られたとか。「その職場は、賃金・待遇はよく、将来、昇進・昇給の余地もあった。学校は嫌いで、アルバイトから疲れて家に帰ってくると親に宿題をするように言われ、よくケンカに。『学校なんかに行きたくない。このまま、あの店で働き続ける』と言うと、『そのうち飽きる。大学に行けば、人生でやりたいことは何でもできるようになるから。あのチェーンで働くこともできるし、他の選択肢もできるから。大学に行かないと、先のない仕事を転々とすることになる』」と親に諭されたそうです。 

    「親や祖父母の世代は、その通りだった。教育を受けることで社会的地位が上がり、機会が増えた。でも、米史上初めて、そうではない状況が起きている。私たち世代は、米史上、もっとも教育を受けた世代でありながら、新たな現実に直面し、どうやったら雇ってもらえるのかもわからない」

    初めから自己実現を期待?


    人類学部の同級生にはケータリング会社で働いている人が何人かおり、心理学部卒業後、ホームセンターで働いたり、経営学部卒でホテルの受付で働いている人もいるということです。(ホテルはキャリアアップできるでしょうし、ホームセンターやケータリング会社だって、チャンスはあるかも知れません。) 


    「昔は、食いつなぐためにアルバイトをするのはアーティストやミュージシャンだったが、今では、私の友人の大半がもっと満足のいく仕事を無償でもできるよう、生活費を稼ぐためにアルバイトをしている。親友は、非営利団体で無償のインターンシップをやって気に入っていたが、食べていくために(安月給の)幼稚園の先生になった」(これは、幼稚園児や情熱を持って幼稚園の教諭になった人に失礼かと。) 
    う~ん、生活をしていくために、やりたくないことでもやっている人はいくらでもいますし、たとえ一生でなくても、人生のうち、そういう時期は、大半の人が経験していると思います。 

    この女性は「今の状況は、18年間、がんばって勉強しながら描いてきた絵とは違う」と憤慨しているのですが、大学を出てすぐに自分の夢をかなえられる人など、ほとんどいないと思います。それも、この女性、「成績はそこそこ」だったそうで。 

    そもそも、学部卒で(修士課程卒でも)、人類学者のような研究職に就けるとでも思っていたのでしょうか?教授に「社会・行動科学の勉強というのは、金目当てでなく好きでやるものなんです」と言われたそうですが、教授の言う通り!安月給がいやで、職の選り好みをしたいのであれば、人類学など専攻するべきではなかったのです。前回、紹介した調査では、人類学は、失業率でワースト3でした。 

    この女性の記事のコメント欄には、70年代に音楽部を卒業後、スーパーで働いていたが、教職免許をとって、32年間、音楽教師をした人(音楽演奏は趣味で続行)、90年に卒業したものの、職はなく子守をしていたという人、90年代に卒業後、仕事もインターンシップもなく、同居していた親もお金がなかったため、生活費を稼ぐために質屋やバーなどで働いたという人たちが「昔だって同じだよ」とコメントしていました。(ベトナム戦争時には徴兵された人たちもいるのですから。) 

    一方、最近、ハーバードを卒業して、スタバで働いているという青年は、「一緒に働いている仲間は素晴らしいし、100人の顧客の名前と個々の好みの飲物を覚えようと努めている。そうすることによって仕事も人生も楽しくなるからね。物は考えよう(姿勢は選べる)」とコメントしました。企業が雇いたいとい思うのは、こういう人だと思います。彼は、近い将来、就職できることでしょう。

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    この記事の筆者

    有元美津世

    大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
    著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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