グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

有元美津世のGet Global!

グローバル化するということ(1)2014.01.28

    日本国内で流れた航空会社のテレビコマーシャルが「差別的だ」と日本在住の白人らから抗議を受け、コマーシャルは一旦中止され、問題の部分が削除されました。

     


    こうしたコマーシャルが作られたのは、日本には「高い鼻はいい」「白人の高い鼻がうらやましい」と思う人が多いからでしょう。しかし、白人には鼻が大きいのを気にしている人が結構いるのです。(なお、関連記事やYouTubeなどのコメントで、”big nose”という表現が使われているように、英語で「鼻が高い」という言い方はありません)。


    ちなみに、中近東では、大きな鼻がコンプレックスで、とくに女性は子供のうちに整形する人が多いようです。最近の調査によると、イランは一人あたりの鼻整形手術(rhinoplasty、nose job)数で世界一だそうですが、学生時代、イラン人のルームメートに子供のときの整形前の写真を見せてもらったことがあります。(なお、彼女たちは毛深いことも気にしているので、永久脱毛技術がなかった当時、日々、涙ぐましい脱毛努力をしていました。)


    日本人を含む東洋人には、低い鼻、平たい鼻をコンプレックスに思っている人もいるのですが、そうした鼻をかわいいと思う西洋人もいるのです。(英語では「低い鼻」という表現もなく、”small nose”になります。)私の鼻も先がとがってない丸い鼻ですが、それが「かわいい」とアメリカ人に言われたのは一度や二度ではありません。

    共通認識のない人たちとの共生

    今回の件は海外の新聞雑誌でも取り上げられましたが、見出しには’racist’と引用符がついており、報道機関が「差別的だ」と決めつけたわけではないのです。 
    私も、このコマーシャルを白人のアメリカ人に見せたところ、「バカげた(goofy, silly)コマーシャルだが、差別的だとは思わない」と言いました。(しかし、日本の芸能人が黒人歌手のモノマネをするのに肌を黒く塗っているのには「信じられない」とビックリしていました。)

     


    関連記事やYouTubeには、各国の人から多くのコメントが寄せられていましたが、コメントを見る限り、コマーシャルを不愉快(offensive)に思ったのは、日本在住の人が多く、海外の白人は思わない人が多かったようです。(それより「最近、何 でも差別、差別という奴が多すぎる」という意見が多く見受けられました。白人黒人間の論争に発展しているものもあり。) 
      
    これは、日本在住の人たちが、日ごろから日本で「ガイジン」としてよそ者扱いされていることを不満に思っていることに起因しているでしょう。(つまり、その社会で、どういう立場に置かれているかが影響。)


    たとえば、昔の話ですが、金髪で青い目のアメリカ人女性と大阪で電車に乗っているとき、前に立っていた子連れの女性が彼女を見て「金髪きれいやね」と子供に話しかけたのを今でも覚えています。その女性は誉め言葉のつもりで言ったのでしょうが、そのアメリカ人女性はニコリともしませんでした。当時、日本に10年以上住んでいたので、そういう体験を日ごろからしていて、ウンザリしていたのだと思います。(日本在住の外国人の多くは、カタコトの英会話の練習台にされるのにもウンザリしています。皆が英語話者とは限りませんし。)


    高い鼻をもって白人を表すというのは、日本人の共通の認識に基いたものです。海外の人のコメントに「コマーシャルの意味がわからない」というのもあったのですが、それは、彼らが、そうした認識を共有していないからです。「へえ、日本では西洋人は、そんな風に見られてるんだ」という人もいました。つまり、日本人が「当然」と思うことが他国の人にとっては「当然」ではないということです。(もちろん、その反対もいくらでもあります。) 
    「グローバル化」というのは、そうした共通の認識がない人たちと肩を並べて働く、生きていくということなのです。


    だから、「グローバル企業」を目指すというのなら、たとえ日本人に向けたコマーシャルだとしても、その辺は考慮しなければならないでしょう。

    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

    この記事の筆者

    有元美津世

    大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
    著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

    合わせて読みたい

    ---