グローバル転職NAVI
元・外資系人事部超、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
友人に会社派遣で海外に住んでいる女性がいます。一時帰国したと聞き、1年ぶりに食事をしました。転勤で海外に住めるのは、ビザや住まい・引越しなど会社が手配してくれて羨ましい限りですが、彼女の話の中身は、現在住んでいる国・人への不満ばかりでした。
英語はできるので現地の方々とコミュニケーションは取れるはずで、自分次第で楽しい生活、新しい交流がどんどん開けていくと思うのですが、「日本はこうではない」「日本人はそういうことはしない」が多すぎて残念に感じました。
海外にいて、日本流を求めるとほとんどのことに不満が生じるので、生活は大変になりますし毎日を楽しく生きられないと想います。まさしく、英語力が高くても多様性を受容できない典型的な例かと想います。
職場における多様性とはどんなことを指すのでしょうか?
ひとつの指標として、ホーフステード6次元モデルから、「権力格差(PDI)」を取り上げてみましょう。
権力格差とは、社会の中で弱い立場にいる者が、権力が不平等に分布していることやヒエラルキーそのものを受け入れる程度を指します。
私はオーストラリアのメルボルンでの生活をこよなくエンジョイしました。ひとつの理由に、この権力格差が少ない国であるが挙げられると思います。社会がフラットで権威主義でないことに居心地の良さを感じたのでしょう。
指標100を最も権威主義の国としたとき、オーストラリアは36、アメリカの40よりも社会の中での上下感覚がないという結果です。
私は研修をするとき、「先生」と言われることを極度に嫌います。大学の教師でもなく、PhD 持ちでもない私が「どうして先生?」という気がしてしまうのですが、ホーフスードの研修に参加して、自分の権威志向が低いことを自覚しました。
権力格差が低いことを求めているなんて言うと、リベラルでちょっとかっこいいみたいですが、もちろん相手によるわけです。「権力格差がないことを好む」自分を、フィリピン出張の際に持ち込んだ時は失敗してしまいました。
出張当時知らなかったのですが、フィリピンの権力格差指標は94なのです!
社会には明らかな上下があり、貧富の差などが存在するのは当たり前と考えている国なのです。ここでやっていけないことは、すべての人とフラットに接しようとすることです。
私はわりと誰にでも話しかけ、例えばホテルで使用人の方にも笑顔を向けたり自然とする人間です。ただの友人ならこれでよかったのですが、利害がある人の場合、こちらの立場が上だよと見せる必要があるようでした。
チェックインして、フロントや自分のフロアーのスタッフさん達と談笑しながら、「ずいぶん、穏やかでのんびりした文化なんだな」とは気がつきましたが、自分の中に、ホーフステードの「権力格差」という軸を持っていなかったので、見逃してしまいました。
私が見逃してしまったのは、ホテルのオーナーが歩き回っているときのスタッフの対応が、ものすごく丁寧で明らかに「ボス」という扱いだったことです。少し違和感を覚えてのですが、そのまま流してしまいました。
結論として私は、スタッフに優しく接しすぎたらしく、まぁ言葉にするとなめられたんだなと思うような出来事を経験して、ショックでした。英語力が足りなくてコミュニケーションが取れなかったのではなく、その国がもつ多様性に気がつかずうまく仕事ができなかったわけですね。
ホテルのオーナーと仲良くなって、「従業員と接するにあたって、あなたは何に気をつけていますか?」と聞いてみたところ、「ボスは俺だ。俺には権力があると時々見せること。優しいとなめられたら、この国では終わりだよ」との返事が戻ってきました。
まさしく、権力格差94の国で必要なマネジメント力なわけです。
グローバリゼーションが盛んに叫ばれ、英語力さえ高ければ問題ないと誤解されがちですが、実はその国がもつ多様性に注意を払わなければ、スムーズにグローバル人材として仕事はできないことを覚えていてください。
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日本GEに入社して人事のキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレーなどを経て、日本DHL人事本部長を務める。帰国子女でも海外赴任経験者でもないが、TOEIC960点をマークし外資系企業でキャリアアップした経験を元に、個人のキャリアアップを支援している。2011年から18か月、オーストラリアに居住し、海外勤務・海外からの帰国希望者のキャリア相談にも乗ることができる。
個人向けのキャリア相談の他、企業向けに、リーダーシップ研修、チームビルディング、組織分析、異文化マネジメント、グローバルコミュニケーション研修を行っている。ルミナスパーク、ルミナリーダー公認講師、ホフステード異文化モデル公認講師、STAR面接法・認定講師
株式会社AT Globe http://atglobe.jp/
強みを最大限に活かし、個の力を発揮出来る人材を一人でも増やすことで、母国を元気にすることをミッションとする。ルミナというアセスメント・ツールを使い、個人・法人向けの人材育成事業を行う。