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タカシの外資系物語

研修終了 … その成果は ? ( その 3 )2006.11.07

「自己欺瞞」と「箱」

( 前回の続き ) さて、 3 回目の研修も大半が終了し、残すは「リーダーシップ研修」だけとなりました。この研修は、『 LEADERSHIP AND SELF-DECEPTION – GETTING OUT OF THE BOX 』 ( 邦訳 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 アービンジャー・インスティチュート著 大和書房)をベースにしたケーススタディです。 


( ※ 前回のコラムで、「この本は非常に面白い ! 私がこれまでに読んだ本の中でも五指に入るのでは ? ・・・ 」などと話していたら、この本、知らぬ間にベストセラーになっているではありませんか ! やはり、良いものは良いということですね。ちなみに、『外資流!「タカシの外資系物語」』 ( 奈良タカシ著 あさ出版 ) も絶賛発売中です ! こちらも、良いですよー ) 


この本の内容を詳細にお伝えできるスペースはないのですが、いくつかの概念について、以下に説明しておきます ( 詳細が知りたい方は、是非読んでください。ホントにオススメですよ ! ) 


まず、「 Self-Deception 」という概念。これは、「自己欺瞞」と訳されています。例えば、上司や同僚が忙しくしていて、だれかに仕事を振ろうとしている場合を想像してください。自分はその仕事をうまくやる自信があって、現在それほど忙しくないので、その仕事を請けることが可能だとします。そんなとき、「その仕事、オレがやるよ ! 」と言えばいいものを、自分が忙しくなることを恐れて、ワザと忙しいフリをしたことはないですか ? これを「 Self-Deception 」といいます。 


次に、「 Box ( 箱 )」という概念。これは、人が「 Self-Deception 」に陥って、抜け出ることができないような状況を指します。この本では、「箱」に入っている人同士がいかに話をしようとも、事態は好転しない ( むしろ、余計悪くなる ) こと強調しています。例えば、こんな感じ。 


A さん 「 B さーん、申し訳ないんだけど、この仕事手伝ってくれないかな ? 」 


B さん 「( お、その仕事なら前にやったことあるぞ ・・・ でも、ここで引き受けたら、こっちが忙しくなるし・・・ ) 無理無理、こっちも手が離せないんだから ! 」 


A さん 「( にゃんだとーー ! 大したことしてないくせに、忙しいフリしやがって ! ) そんなの、すぐできるじゃん。こっちの方がずっと重要なんだから、こっちやってよ ! 」 


B さん 「 ( にゃにぃーー ! それが人にモノを頼む態度か、コノヤローー ) 仕事が遅くて悪かったな ! だったら、もっと仕事の速い人に頼めば ? 」  ・・・ これじゃ、どうしようもないですよね。このような状態を、 A さん、 B さんとも「箱の中にいる」状態と考えます。

「箱」 から出るために

では、「箱から出る」にはどのようにすればいいのでしょうか ? この本の中では、「すべての抵抗をやめたとき、人は箱から脱出することができる ・・・ 」と、説明されています。具体的な方法としては、「箱」の中にいない人を探して、その人と話す ( コーチングを受ける等 ) ことを薦めています。例えば、こんな感じ。 


A さん 「( や、やばっ ! オレって今、箱の中にいるんじゃない ? よし、 C さんに相談してみよう ! )  C さーん、かくかくしかじかで、 B さんともめちゃって ・・・ どうしよ ? ( T-T ) 」 


C さん 「なるほど ・・・ まず、 B さんにお願いするなら、高飛車な態度で話してはいけないよ。次に、 B さんがその仕事により適しているなら、 B さんが今やっている仕事の一部を、逆に A さんが肩代わりするとか、またはお願いする仕事の成果を B さんにも配分することを約束するとか、そういう配慮が必要なんじゃないかな ? 」 


A さん 「そうだね。僕は自分が箱の中にいたばかりに、自分勝手な振る舞いをしていたようだ。B さんに謝って、もう一度相談してみるよ ! ありがとう、 C さん ! 」  


・・・ 確かにね、まぁ、言ってることはわかるけど ・・・ これって、こんなにうまく行くかね、実際 ?! 


実はこの本、「 Self-Deception 」とか「 Box 」とか言っている段階では、「なかなか厳しいトコ突いてくるねー」、てな感じで読み応え十分なのですが、その解決法のところまで来ると、一気に現実味が乏しく感じます。ま、重要なのは、自分が「箱」の中にいるということを理解することであって、そこから脱出する方法は、各自工夫しなさいというのがメッセージのような気がします。 


私が受けた研修でも、参加者からは以下のような意見が出ていました。 


「ビジネスの上では、常に優先順位を考えて、組織のパフォーマンスを最大にしようとしているのだから、 Self-Deception なんて起こりようがない ! 」 


「たとえ同一の組織内であっても、各人の利害は完全には一致しない場合もあるのだから、箱の中に入るのは、ある程度仕方ない ! 」 


ま、そりゃそうなんでしょうよ。だけど、ビジネス上の事情を差っ引いても、やはり自己欺瞞や箱の中にいるような状況は起こり得るだろうし、実際に起こっているはずです。そういう観点で、自己を見つめなおすというのが、この研修の「 Value 」なのでしょう。

日本人と外国人の「箱」

実は、上記のような意見 ( というか、「文句」に近い ) を言っているのは「日本人以外」の参加者であって、日本人はこれらの議論には、ほとんど参加していません。私をはじめ、他の日本人も同じような意見 ( = この本の理論では説明がつかないことが多いこと ) を持っているわけですが、一切口には出しません。「ま、あんまりウダウダ言っても仕方ないし。所詮こんなもんでしょ ・・・ 」 みたいな感じで、事態を静観しているのです。 


一方、欧米人や日本人以外のアジア人は、少しでもおかしいと思うことがあると、徹底してこだわります。で、ずっと文句を言っているかというとそうではなく、自分の言いたいことが一段落するやいなや、「ま、いろいろと不備はあるにせよ、とりあえずはこの本の前提で、話を聞いてみますかね ・・・ 」、てな感じで、突然おとなしくなったりします。 


このことは、外国人と一緒に仕事をしていると、よく経験することの 1 つです。お互い、同じような意見を持っているにもかかわらず、外国人はそれを露骨に表現し、日本人は胸に秘めたまま何も言わない。ま、本質的には同じ意見なわけですから、それほど危機的な状況にはならないのですが。しかし、このことを「箱」の話に照らし合わせてみると、「外国人の箱」はよく見えるが、「日本人の箱」はよく見えない、という言い方ができます。 


他人から見て、「箱」の中にいることがよくわかれば、接し方も留意できるし、上司やコーチが適切なコメントを与えてやることも可能です。しかし、「箱」の中にいるかどうかがよくわからない場合は、他人がどうのこうの言えるわけもなく、つまりは自分で解決するしかないわけです。このように、「箱」から脱出するために他人の力を借りやすいのは、外国人のスタイルだといえるのではないでしょうか。 


さて、研修の方はといいますと、本の内容に沿って、「自己欺瞞」「箱」「箱同士の対立」「箱から抜け出す方法」 ・・・ などが説明され、参加者は自分の経験をシェアしながら、進められました。みんなの話を聞いていると、なるほどね ! と思うことばかり。人間だれしも、「自己欺瞞」や「箱」の経験はあるということです。フムフム ・・・ え ? お前は何か発言しなかったのか、って ? いやぁ、英語が速くて、ついていくのに精一杯で ・・・ ははは・・・ ( トホホ ・・・ 情けない ・・・ ( T-T ) )。あ、そうそう、研修の最後に「箱」をテーマにした「 Skit ( 寸劇、コントみたいなもの ) 」をグループ毎に発表しまして、それで「 Best Actor 賞」を獲得しました ! 「タカシって、 Skit をするためにシンガポールに来たみたいね ! 」なーんて、みんなに言われちゃいましたよ ・・・ ははは ・・・ ( さ、さらに、情けない ・・・ ( T-T ) ( T-T ) ) 


ま、そんなこんなで、 3 ヶ月にわたって実施された「 Deal Maker Program 」も無事終了しました。早速、上司の Thomas に研修の参加報告でも送っときますかね、と ・・・ え ? 研修の参加報告なんていらない ? 成果で示せ、って ? いやーぁ、そう言われると思ってましたよ、 Thomas さん、さすがだなぁ ・・・ ははは ・・・ 今回のコラムが、「第 323 回」ですよね。この研修の成果は、「400 回」 ・・・ いや、「350 回」ぐらいには現れるんじゃないかなーー、なんてねーー。みなさんにも、きっと報告しますからねーー。 


・・・ トホホ ・・・ 明日から、また地獄の日々が始まるぅ ・・・ ( T-T ) ( T-T ) ( T-T )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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