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タカシの外資系物語

スポットライトを浴びるヤツ2006.04.04

Award を受賞すると …

今日は四半期に一度の部門会議です。役員である金融部門長が、この四半期のビジネス実績を総括した後、 Staff Recognition Award ( 成績のよかったスタッフを表彰する制度 ) の発表がありました。  


「...staff of the quarter is...TAKASHI!」 

  

お、なんと。 staff of the quarter に選ばれてしまったではありませんか。こりゃ、光栄なこって … え ? 感動が少ないんじゃないかって ? もっと喜んでもいいんじゃないかって ? 
そりゃもちろん、それなりに嬉しいんですよ、これでも。賞金もいくらか出ますしね。でも、この Award って、結局持ちまわりみたいなところもあるし。それに、何よりも周りのみんなに「この人、賞金もらいましたよーっ ! 」 … みたいな感じになるのがイマイチなんですよね。私、どちらかというと目立ちたがり屋ではないので、できれば黙って賞金だけ欲しいんですが。ま、そうもいかないか … 


「Congratulations! Takashi. Please come here...」


( げ ! 前に出て行って、挨拶しろってか ? しょうがないなぁ … ) 「OK! Thank you, Ted ( 部門長 ) & Friends...I’m very glad to win the award...」

 

 

実はこの Award、私以外にも 10 人ぐらいの人が受賞しています。私が所属する金融部門には 200 人ぐらいのスタッフがいますから、 20 回に 1 回は受賞することになります。それが四半期に 1 回あるわけですから、5 年に 1 回は持ち回りで回ってくる計算です。 
Award の賞金 ×× 万円は、それはそれなりの金額だと思うのですが、 Award 自体が持ち回りで回ってくる以上、そんなに飛びぬけてうれしいものでもありません。はっきり言えば、 5 年間辞めなければ、確実にもらえるボーナスみたいなもんですから。 


しかし、外資では、このような Award に対して、異常なまでに手間をかけます。部門会議でのセレモニーだって、「今回の Award は、タカシさんほか 10 名のみなさんです。おめでとう ! 」と言っておけば事足りるってもんです。それなのに、受賞者一人ひとりを壇上に上げて、一言コメントを求めます。


「Congratulations! Hideki. Please come here... 」


まだ 6 人目。1 人目に私が呼ばれてから、かれこれ 20 分近くたっています。トホホ … 早く終わらないかにゃ … 

スポットライト効果とは ?

 さて、なぜ外資はこのような受賞セレモニーにこだわるのでしょうか ? それは、「スポットライト効果」を狙っているからなのです。 


人はだれしも、自分の名前が大勢の前で読み上げられ、評価されることについて、一種の願望を持っています。そして、そうなりたいと思うことがモチベーションの向上につながったりもします。スポットライト効果というのは、名前を挙げて評価を与えることによって、社員のモチベーションアップを狙うという、重要な人事施策だったというわけです。 
 ま確かに、私もかなり面倒くさいふりをしていましたが、 Award を受けてみんなの前で表彰されるのはまんざらでもありません。受賞者の大半は、「また Award に選ばれるように頑張ろう ! 」と思うことでしょう。 
また、惜しくも受賞を逃した人が「次回は絶対に Award をゲットしよう ! 」と思うことも重要です。持ち回り的な要素があるのは事実ですが、 1 年に数回受賞している人もいます。その気になれば、毎回 Award を受賞することだって可能なはずです。 


もう 1 つ重要なことは、営業や開発部門のような目立つ部門だけでなく、バックオフィスやサポート部門にもスポットライトを当てているということです。今回の受賞でも、セールス分野での受賞は、私のほか 2 名だけで、あとは人事や事務サポート分野の人が受賞していました。このようにするだけで、経営がすべての業務に目を向けていることが、スタッフにアピールできます。日系の銀行に勤めていたときにも同様の表彰がありましたが、受賞するのは営業部門ばかりで、システム部門にいた私は思いっきり冷めていた思い出があります。こういうのも、外資の経営のうまいところだと思います。 

タカシ、「○○効果」に踊る

Congratulations! Tomomi. Please come here... 」 
… ふぅ、やっと終わったようです。 


「では受賞者のみなさんにインタビューしてみましょう ! 」 


( あ、あのなぁ、まだやんのか … さっき、一言話したやんけーーー ! )



「どうですか、今の心境は ? 」 
私 「は、はぁ。うれしいっす」 
「隣のアキラさんとは同じ部門の同じ仕事ということで、ライバル心むき出しってとこですか ? 」 
私 「は ? いや、別に … 」 


今回はアキラも受賞していました。こうやってライバル心を煽るのも、外資の人事施策のひとつなんです。こういうのを「ライバル効果」っていうらしいんですけど … 


「賞金は何に使います ? 」 
私 「は ? ( なんでそんなこと言わにゃならんのだ ! )」 
「賞金 ×× 万円の使い道ですよー」 
私( あ、あのなぁ … 。みんな知ってることとは言え、わざわざこの場で金額まで言わんでもええやろ … ) 


壇上から、ふと会場に目をやると、私のチームの若手連中がカラオケのジェスチャーをしています。( 飲み代に使え、っちゅうことかい ! )


私 「は、はぁ … いつも世話になってるチームのみんなにご馳走したいと思います … ( トホホ) 」 


部門スタッフ全員の前で言った以上、今夜はパーッと繰り出すしかありません。口に出した以上、やらざるをえない … こういうのを「コミットメント効果」というそうです。 
 賞金の使い道まで決められてしまうとは、トホホ … 。回りまわって、こういうのが社員の「福利厚生」の役割まで担っていると思うと、まさに外資おそるべし、というところです。 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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